2020年1月11日土曜日

付合うなら金持ちがいいよね、それが互恵性の実験であっても

新年明けたくらいで出てくるほどおれのやる気は軽くない。

この前社会心理学会で見た実験が面白そうだったのでチョイ足しレシピで実験したらなんか面白いんじゃないかと思ってやってみた。簡単に調査できるネット環境はほんとありがたいもんだ。そしてとりあえず実験してから関連論文を探すといういつもの泥縄大作戦。不均一な資源を想定した社会的ジレンマが個人的に最近熱い(Nowak達がNatureに載せたから)という理由もある。恥ずかしげもなくミーハーな動機で周囲をボチボチと検索。学生が見っけたやつを読む。もしかして既に結論出ちゃってますか。

Hackel, L. M., & Zaki, J. (2018). Propagation of Economic Inequality Through Reciprocity and Reputation. Psychological Science, 29(4), 604–613.

アブスト:資源が不均一に分布しているときの互恵性の負の効果(経済的不平等の悪化)を見てみましょう。実験結果によるとですね、裕福な人と貧しい人を作って互恵的ゲームをやると同程度に互恵的なふるまいをしてても裕福な人はより多くの返報を受けるし、評判も高くなるので市場でより優位な立場に立てたよ。

本文:互恵的協力大事云々。で、多くの研究ではみんな同一の資源を持って実験に参加するけど実際の社会は超不平等じゃん。

互恵性と不平等の合成でどんなことが起こるだろう。一つにはシンプルに期待報酬量で決まるというものだ。同じ50%の返報でも、100のうちの半分と20の半分じゃ前者のほうがいいに決まってる。実際そういう結果も結構ある(あとで引用チェック)。他方、寛容性と報酬量の両方が影響するよっていう研究もある(著者たち)。

でこれをもっと明確な互恵ゲームに適用して詳細な分析をしようではないか。

実験1:Giver群はリッチ組とプア組に分かれる。そんで元手の20%か50%のいずれかを分配するかという意思決定を36セットおこなう。後にマッチングされるRecipientが結果を見ることは知らされているがRecipientが返報機会を持つことは知らされない。よって直接互恵は喚起されてない。続いてRecipient群はランダムにマッチされたリッチ組・プア組Giverのどちらかを選ぶという操作を60回やる。そして毎回好きなポイントをGiverに返報できる。

実験2:Giverは同じ仕組み。Recipientのやることもほぼ一緒。違いは互恵返報フェーズの代わりに、今度はGiverの評価を5段階でおこないさらに一つ先のRecipient(Investorとする)に対して情報提供する。そしてInvestorには複数Giver候補が提示されるので、相手を選んで信頼ゲームをおこなう。

まず、実験1の返報割合だが50%シェアするGiver(寛大Giver)と20%シェアするGiver(ケチGiver)の間に差がある(あたりまえだ)。ケチGiverのなかではリッチ組のほうが返報をより多く受け取っている。実験2の5段階評価ではその傾向はより強まって寛大Giver内でもケチGiver内でもリッチ組のほうが高い評価を受けている。さらにはInvestorから投資を受けるGiverもリッチ組のほうが高い(倍くらいある)。

ということで、もちろん寛大・ケチの差は互恵的ふるまいに影響を及ぼすんだけど、資源が多い人を選ぶという傾向も同時に観察できる。これは不公平の拡大をどんどん拡大するプロセスを説明しているんじゃないの。

なるほどおもしろい論文だった。けど細かいセッティングでなんか冗長だったりしないのかな。たとえばGiverは実際に存在させなくても実験者が用意できちゃうしそのほうが条件をコントロールしやすそう。デセプションを避けるのが目的なのかな。ふむ、なんか自分のネタもいけそうな気がしてきた。

2019年12月31日火曜日

独裁者ゲームの行動をちょっとした操作で劇的に変えて見せましょう

今年中に仕上がってるはずの原稿達が綺麗に真っ白でそのまんま2020年に持ち越しとなること確定。ひやー。

収奪型の社会的ジレンマ実験て案外ないじゃん、俺たちオリジナル!と思ってたら見事ありました。

List, J. A. (2007). On the Interpretation of Giving in Dictator Games. Journal of Political Economy, 115(3), 482–493.

ホモ・エコノミクスなんて幻想だって研究は山ほど山盛りたくさんあるでよ。人は合理的でない利他行動をとるもんだ。そうした行動の研究モデルのひとつとして独裁者ゲーム(DG)は、まあいっぱいあるよね。うむ。

けど、普通の独裁者ゲームではポジティブな分配だけが要求されてるので分配が個人の選好なのか状況による影響なのかを分別できないじゃんか。たとえば独裁者ゲームで負の分配(相手から奪う)を導入すると結果が決定的に変わるというのも知られているよ。

ということで奪うことも可能なDGのいけてる先行研究Bardsley (2005)をベースに実験をデザインする。主な変更点は、資源の獲得にタスク実施の効果を導入することと、奪える額も操作したことだ。

コントロール群:普通のDG。両者にまずは5$を与える。そんで追加の5$を分配者に与えて分配額を聞く。
Take1$群:両者にまずは5$を与える。そんで追加の5$を分配者に与えて分配額を聞く。なお分配者は-1$~5$を選べる。つまり被分配者から奪うことも可能。
Take5$群:両者にまずは5$を与える。そんで追加の5$を分配者に与えて分配額を聞く。なお分配者は-5$~5$を選べる。つまり被分配者から奪うことも可能。
Earning群:Take5$群と同じセッティングなのだけど、両者元手を得るために30分の作業が課されてその報酬として元手が渡される。

結果いくどー。

コントロール群では0と2.5(半額)にピークがある。最頻値は0、次いで2.5。しかーし、Take1$にするとポジティブな割合はガクッと減って0の割合が増加する。次いで多いのが1$奪うやつら。さらにTake5$にすると、ほとんど誰もポジティブな分配をせずに大半が奪うことにしてる。最頻値は5$奪う。次いでニュートラル。しかーし、元手をタスクによって得るEarning群では、なんと、ほとんどの人がニュートラル(奪いもしなければ与えもしない)になる。

たくさんある実験結果はDGで人々が他者に寄付する社会的選好を持ってるといっているけど、実験室の外ではそんなにみな利他的には振舞ってないでしょう。参加者がとれる行動のセットを操作することで、お見せした通り結果がすごく変化するでしょ。結局"moral cost function"は簡単な操作で大きく変化する。つまりこれまで独裁者ゲームで得てきた知見は修正しなきゃダメだよ。さらに元手資金を稼ぐ方法と交差させると、"moral cost"がグンと増えることもわかった。

者ども、実験の際にはこうした点の考慮を努々忘れる出ないぞ。

なるほどねー、なかなか面白かったしほぼヒストグラム一発で見せる技は今やってる別の論文に使えそうだ。まあイントロもディスカッションもまだ出来てないんだけど。

2019年12月27日金曜日

年の瀬Pay it forward実験フェア パート3

去年の年末も締切近づくのになんもしてないしなんも思いつかないで尻がチリチリしてたようだ。そして今年もだ。やれやれ。

Gray, K., Ward, A. F., & Norton, M. I. (2014). Paying it forward: Generalized reciprocity and the limits of generosity. Journal of Experimental Psychology: General, 143(1), 247–254.

Pay it forwardは古くから偉い人が色んなところで素敵だっていってる。そうベンジャミン・フランクリンだってラルフ ウォルド エマーソン(だれ?)だって。そして心理学者だって(Bartlett & DeSteno,2006)、進化生物学者だって(Bshary & Grutter,2006)、ゲーム理論家だって(Nowak & Sigmund,2005)。そして圧倒的にポジティブな枠組みで研究されている。ていうかそもそも簡単に裏切りに侵入されちゃう概念だから遺伝的に近いとか閉じたグループとかが想定されてる。ということでまずは匿名状況でもpay it forwardがあるのかを検証するぞ。そんでさらには、どんな行動がpay it forwardされるのか(つまりは、良い連鎖・悪い連鎖どっちもあるのか)を検証する。具体的には独裁者ゲームをベースにした実験を5個おこないますよ。分配される資源が「不公平」「公平」「寛大」の3タイプ用意する。

さあ実験祭りを堪能するがよい。

実験1:お金のPay it forward

街中でリクルートした100人(まじっすか、がんばりますな)が対象。コントロール群は、独裁者ゲームの分配者側になるだけ。トリートメントは3タイプ。それぞれ最初にDGのレシーバーになって6$の資源を匿名分配者から受け取る。額は、0,3,6。そんで次に分配者になって匿名の次の人に分配する。さあいくら分配するのよ?

結果、きれいですよ。不公平 < コントロール群 < 平等 = 寛大

不公平分配されたらそれが伝播しますね。

実験2:手持ち資金をコントロール

ほとんど実験1と一緒なんだけど、最初にくじを引いてラッキーなら6$プレゼント、アンラッキーならプレゼントなし。その後、実験1と同様にまずはレシーバーになって不公平(=0$)か寛大(=6$)な分配を受ける。そして最後に次の人へ分配額を決定。

ラッキー・アンラッキーコンディションの主効果なし、分配される額の主効果あり、交互作用なし。

実験3:労働のPay it forward

今度はAMTを使います。経済ゲームじゃなくてタスクを課す。タスクを2種類用意します。GoodなタスクとBadなタスクだ。前者は面白動画の評価、後者は外国語の文章を読んで母音をチェックする。参加者は、Good2つ+Bad2つの計4タスクのうち2つをこなして次の人に残りを渡すことになる。さらに前の参加者から渡されたタスクもやらなくてはいけない。コントロールするのは、前の参加者から渡されるタスクの割合。4つのうち4つともBadという不公平、2つのGood・2つのBadという公平、4つともGoodという寛大の3つ。

さあ人々よ働きたまえ。

不公平分配のときだけ有意にGoodタスクを残すことが少ない。それ以外は差がない。

実験4a:

今度は感情測定をやる。方法は実験3と同様のタスク分割だ。不公平、公平、寛大のタスク分配を受けた後に、ポジティブ・ネガティブ・怒りの感情測定を行う。感情はちゃんと操作ごとに順当なほうに動いている。続いてGoodタスクを残す数を感情で説明する回帰分析をやる。ネガティブ感情だけが予測する、ポジと怒りは効果なし。ただし寛大な分配のときにはポジティブだけが有意。

実験4b:感情を事後操作するのは有効か

ネガティブ感情がpay it forwardに効くのであれば、この感情をフィルターすることで負のpay it forwardを減らせるのではなかろうか。ということで、タスク(不公平・寛大の2タイプ)を受け取った後に感情操作の文章(ニュートラル・ポジティブの2タイプ)を読んでから次の人にタスク分配をする。受け取るタスクの種類の主効果は有意、フィルターの主効果はなし、交互作用あり。不公平タスクを受け取った群で、フィルターによってGoodタスクを残す量が「ポジティブ操作>ニュートラル」となる。

4a,4bから考えるにネガティブ感情によって罰送り的なものが生じており、しかし感情の改善操作によって罰送りを軽減できる。


ということでアップストリーム互恵の実験は独裁者ゲームでやられてることが多いようだ。自分たちの実験設定は少し凝りすぎてる気がしてきたなあ。

2019年12月22日日曜日

アップストリーム型3人独裁者ゲームやっちゃうよ

見事なまでにやる気がでない。あっぱれだ。日々着実に論文を進められる人が羨ましい。いるんだ身近にそういう出木杉君みたいなやつが(妬み)。爪の垢、は飲みたくないので代わりにやってくれまいか。

そして実験やってから関連論文を探すという泥縄大作戦。

Bahr, G., & Requate, T. (2014). Reciprocity and giving in a consecutive three-person dictator game with social interaction. German Economic Review, 15(3), 374–392.

協力の進化で直接互恵は良くある代表例だけどお返しできないことも良くあるはずだ。例えば誰かの献血のおかげで助かったとしてもその人は血を返すわけにはいかない。そういう場合、また別の誰かのために献血したりするよね。それを名付けて"pure indirect recirocity"という(がーん、ワーディングupstreamに統一されてないんだ)。

この研究ではpure indirect reciprocityに着目する。そのために独裁者ゲームを改良した3人独裁者ゲームをやるよ。具体的には順にA,B,Cと並ぶ。まず面白い結果として、3人独裁者ゲームと通常の2人独裁者ゲームを比較すると3人版のAさんはより多くの資金をBさんに渡している。それと、今回主に着目するのはsocial interactionで、AとBの間にゲーム前にインタラクションを用意するという効果だ。インタラクションとしては顔を合わせないようにしてスクラブルゲームをやらせる。それにAの額がランダムになるか自分の意思かというランダム条件も比較対象とする。するとinteractionトリートメントでより多く渡してる(まあそりゃそうだろうよ)。

実験設定:A→B→Cの独裁者ゲームをおこなう。A・B間で最初に(顔は合わせずに)別のゲーム(スクラブル)をやるinteraction、Aの意思決定がサイコロもしくは自分の意思で決めるrandom、普通にDGを連続でやるbaselineの3つ。比較のため通常の2名DGもやる。

Aの行動:interactionによって渡す額は増加する。それ以外のトリートメントの効果なし。性差と収入も影響してる(いやぁ、これどうだろうか)。
Bの行動:interactionによっては増加しなかった。むしろAからいくら渡されたかが強い決定要因。そして期待して多額より受取額が大きいとそれをキープする方向に働いて渡す額が減る。ランダム条件でもbaselineより減る。

細かいところを読み飛ばしてるけど、なんかあんまり一貫したロジックが見えないような。まあいいや。似たこと考える人は多い、と。

2019年12月21日土曜日

感情を表出することで第三者への負の互恵性を減らせるよ

恐怖。論文がひとつも完成しないまま年を越しそう。グリューワインが悪いんだ。

負の互恵性の連鎖の実験。あれ今似たことやってるんだけどすでに3年前に決着してたりする?

Strang, S., Grote, X., Kuss, K., Park, S. Q., & Weber, B. (2016). Generalized Negative Reciprocity in the Dictator Game ? How to Interrupt the Chain of Unfairness. Scientific Reports, 6(1), 22316.

やられたらやり返すは負の互恵性として知られているけど、他の第三者へ行為が波及する「一般的負の互恵性」もあるでよ。もしネガティブな感情が一般的負の互恵性の根底にあるなら、感情を効果的に調整すればこれを減らせるかかもよ。実際、感情を表明する機会を与えられた場合最後通牒ゲームでの拒否率が下がるっていう結果もある。けど先行研究では感情を明示的に測ってないし、感情が変化したかどうかもわかってない。

ということで疑問点は1)感情を表明するメッセージを出すことは感情の調整に有効なのか、2)効果的な感情表出は一般的負の互恵性を減らすのか、の2点だ。

実験1:感情表出の効果を測るでよ。まずはスタート時点の感情測定をします。そんで独裁者ゲームの受け手になる。測定対象は不公平分配をされた人たち。ちなみに参加者は女性のみ。なんとなれば、女性のほうが負の刺激に対して感情反応があるから(by先行研究)(ツイッタなら炎上必死のコントロールだな)。

実験操作は、不公平分配をされた後に4群にわけてる。それぞれ、何もしない、感情中立的な絵を描く、メッセージ書く(相手にわたらないと教示)、メッセージ書く(相手に伝えると教示)。さあ操作後の感情を測って変化を従属にした分散分析レッツゴー。主効果OK!コントロール群と相手に伝わるメッセージの間に有意差あり。それ以外の下位検定では差がない。メッセージ表出で感情の調整に成功したといえるでしょう。

実験2:ではこの操作で第三者への負の互恵性行動に影響を与えるのか。レッツトライ。操作は実験1で差が明確だったコントロール群(何もしない)と、相手に伝わるメッセージを書くの2通りでいきます。その後、実験1に加えて、その後別の第三者相手に独裁者ゲームの分配側をやらせます。

見事、メッセージ群で分配額が増えました。ということで感情を表出することで負の互恵性の連鎖を軽減できるよ。

なるほどねー。

2019年12月7日土曜日

Exploring the effects of working for endowments on behaviour in standard economic games

ブログなんてありましたっけ、知りませんなあという態度で2年が経とうとしている。

公共財ゲームでインセンティブの与え方とかを実験しようとしているので関係しそうな論文を読む。またの名を現実逃避。

Harrison, F., & El Mouden, C. (2011). Exploring the effects of working for endowments on behaviour in standard economic games. PLoS ONE, 6(11), 1-6.

協力の進化の経済実験は実験実施者から元手を渡されるけど、実際には資金を得るのにもコストかかるしそれは行動にも影響を与えるでしょう。ということで被験者が資金を得るのにコストがかかる状態(退屈なタスクと物理的なタスク)で、公共財(PGG)と独裁者(DG)ゲームをやるよ。独裁者ゲームでは労働の効果は出なかったけど、公共財ゲームでは退屈なタスクをやった組は協力率が減った。ただしゲーム理論を知らない人に限る(え、その縛りちょっと不自然じゃ・・・)。


協力の進化研究では経済実験は超メジャー、いろいろやられてるよ。実験室実験の結果は実際の行動の傾向と良く相関するという議論もたくさんあるけど、実際の行動を予測しないという研究もある(こっちは1つだけ引用されてる)。実験の結果も一貫してない。

というわけで2つのタイプの労働を課す実験で協力行動が異なるか調べます。

M:コントロール(普通に資金提供)
T1:ピペット作業
T2:スクワット

DG:ワンショットで分配したぶんはUKチャリティに行く。被験者が提供される額を5通りやる。
PGG:5ラウンドの繰返しありPGGをやる。第3ラウンドだけ条件をコントロール。それ以外のラウンドは普通に資金提供される。


結果いきます。DGでは条件間の差は見られない。微妙に提供される額と寄付額に負の相関。小さい額だと投げ銭的になったんじゃなかろうか。PGGでは全体的にラウンド経過とともに投資額は減る。これはみんな知ってる結果と一貫してる。1,2ラウンドで条件間の差なし。

さてメインディッシュ、3ラウンドの結果いきましょう。メインエフェクト効果なし!(切ない)。しかし、「ゲーム理論を知ってるか」とコンディションの交互作用は有意でした、どーん。

我々の結果は、標準的な協力ゲームの利用を損なうものではない。我々はこれらのゲームが人間の行動をより一般的に説明する力がある証拠を見つけてはいない。でも、でも、我々の結果はゲーム理論を知っている人とそうでない人の参加者プールで行動が異なることに注意する必要があることを示唆している。

しっかし、ゲーム理論知ってるかどうかなんてよく質問項目に入れてたな。というかこれくらいしか有意にならなくて泣きそうになる気持ちは良くわかる。"our results do suggest that we should be aware that"という苦しい書き方は涙なしには読めません。

でもこれもPLoS oneだ。心を強く持って頑張って論文を書こう。

2018年3月15日木曜日

日常生活における第三者を介した資源の衡平性回復行動

祭りじゃ祭りじゃ現実逃避祭りじゃ。沖縄にいるあいだに絶対完成させなくちゃいけないのに。。。

Upstream祭り2018その2。中島・吉田(2009)と同じ著者の1年前の論文。2009年は経済実験でやってるけどこちらは日常生活のシナリオ実験。

中島誠 & 吉田俊和. 日常生活における第三者を介した資源の衡平性回復行動. 社会心理学研究 24, 98-107 (2008).

イントロはざっくりと。衡平理論(人が関係の中で利得の帳尻を合わせて自分の資源を一定に保とうとする)は負の方向(搾取されたら第三者からの搾取をおこないやすい)を強く予測するが、正の方向には起こりにくいと予想する(自己利益最大化になるので効果が弱い)。

でも実際には正の提供行動の連鎖は起こっている。多くは間接互恵などの枠組みで説明されているが衡平理論で説明したのは少ない(そりゃそうだ)。本研究ではこれにチャレンジする。さらにこれまでは金銭的な交換における衡平理論の検証が多かったけどここでは日常における非金銭的な交換について着目する。

仮説行きます。

1.不衡平(過小/過大)な分配をうけると怒り/罪悪感を感じ、続いての第三者への分配で過小/過大な分配をして衡平を回復する
2.過大な分配を受けた後では、金銭的な分配よりも援助的な分配のほうがおおくおこわなれる
3.第三者への衡平性回復は、直接返報の時よりも弱い

シナリオは場面想定で「店を出ようとしたら傘を誰かが持って行ってしまった。おっとそこに傘がある。持っていくか?(過小)」「店を出ようとしたら雨が降ってきて傘がない。すると誰かが傘二本あるからどうぞと貸してくれた。その後、誰かが雨宿りしてた。自分は二本持ってる。差し出すか?(過大)」(こ、これちゃんと目的に合致した操作になってるのか?特に自分が傘を持ってくの衡平性の回復になるのだろうか)。

金銭のほうは「同じ労働をして相手に分配権がある。そして相手が2000/3000で分配した(過小)、もしくは3000/2000で分配した(過大)。次にあなたに分配権がある。どのように分配するか?」(これは次の論文の実験で綺麗に経済実験に拡張されている)。

金額場面では仮説は基本的に支持されているが、傘場面では微妙。やっぱり傘場面は無理があるのではなかろうか。仮説2の二つの場面の比較もちょっと厳しそう。これは金銭と援助の差とは言えないような。

あと傘場面で、搾取されたほう(過小)が援助を受けた時(過大)より第三者への提供意図が高くなっている。なんで?と思ったけど搾取場面では、第三者へ提供するかどうかではなくて第三者の傘を搾取するかどうかを逆転して提供意図得点にしてるのか。だから搾取場面での提供意図が高いと(つまり搾取されても盗まないよということ)。いやー、うー。やっぱり無理がないかな。

金銭場面は次の実験とも綺麗につながってるけど日常生活場面の設定は無理があるような気がする。

そして、この時点では正当世界信念は使ってないのか。むしろ使ったら傘場面面白いかもしれないのに。

2018年3月13日火曜日

第三者を通して行われる衡平性回復行動

Upstream祭り2018。季節に一度の祭りでどうするよ、おれ。いま考えてるUpstream実験とほぼおんなじ設定のようないやな予感。約10年前。ひー。

目の前の仕事から逃げるために読む。

中島誠, & 吉田俊和. (2009). 第三者を通して行われる衡平性回復行動:報酬分配場面における実験研究. 実験社会心理学研究, 48(2), 111–121.

衡平理論というのがあるそうな。人が関係の中で利得の帳尻を合わせて自分の資源を一定に保とうとするということ。たとえばMoschetti & Kues(1978)では他者Aから不当に低い報酬を得た参加者は、続いての状況で他者B(第三者)に対する分配者になったときに自分に過大な報酬を分配するという結果をだしてる。逆に援助や向社会行動も衡平理論の一側面だろう(ん?そうなのか?)。

報酬の分配のレビュー(古川,1988: 田中,1991)では分配行動に与える要因は(1)個人内(2)対人(3)状況(4)文化の4要因で整理している。一方で、Major&Deaux(1982)は分配の個人差を(1)規範(2)対人関係の指向性(3)情報処理過程で説明してる。ここでは規範と公正感に着目する。それぞれ援助規範意識と正当世界信念(Lener,1980)を用いる。正当世界信念(以下BJW)は「正の投入には正の結果が、負の投入には負の結果が得られる」と考える信念。BJWが高い人は不合理に対する怒りを感じにくいという指摘もあるのでこれに倣ってBJWの高い人は不公正な被分配をうけても、第三者には衡平に振舞うだろう。

ということで仮説は三つ。

  1. 人は不衡平には怒り、過大な分配には罪悪感を抱く。また衡平に分配された被分配者は衡平に第三者へ分配し、不衡平な被分配を受けたものはそれを回復するだろう
  2. 規範意識が高いと不衡平分配に対する怒りが強く、過大分配に罪悪感を抱く。また過去に不衡平分配をうけても第三者には衡平に振舞う
  3. BJWが高い人は過小への怒りが少なく過大への罪悪感が小さい(結果を正当と判断する)。また過去に不衡平分配をうけても第三者には衡平に振舞う

実験はペアで簡単な作業をさせた後に報酬を分配する。参加者は必ず被分配側になる。分配者は実験者が用意するサクラで、過小、衡平、過大な分配を受ける人たちにわけられる。この時点で情動を計測。続いて相手を変えて第二回を行うが今度はかならず分配者になる。配分額と情動を計測。ついでにさっきの相手と同一人物だったらいくらにするかを聞く。

情動については、過小で怒り、過大で罪悪感はまあうまくいってる。BJWについては高い人が過大な被分配で罪悪感が小さくなる(正当化している)。

分配額について。規範意識が高い群では過小利得を受けた後の分配額がより衡平であった。過大利得の時には差がない。BJWではこの傾向が見られず(BJWによって行動はかわってない)。

全体として過小利得・過大利得でそれぞれどう振舞うかを分析すると、過大利得に対しては高い第三者への分配を、過小利得に対しては第三者へ低い分配をしている。特にもし同一人物だったらというときにはそれが顕著になる(論文の図、たんぶん逆だな)。

要するに行動レベルでは規範意識は効いているけど、正当世界信念は効いてなかったと。一方で実験やって情動をとってるので、情動レベルではちゃんと反応しているようだ。あと過大利得を受けた後に過大に分配するというUpstreamはみられなかった、と。あれ、これはどうやって測ってるんだ。ちょっとわからなかった。

いやぁ。やっぱり似たことをすでに思いついている人はいるもんだ。勉強になった。

2017年12月20日水曜日

間接互恵性のモデルを複雑ネットワークでやる祭り

もう2017年が終わるとかなんかの間違いだ。3月に論文が出て以降の研究の進まなさっぷりもなんかの間違いだ。痩せないのも。

間接互恵のネットワークモデルがどんなものなのかをボチボチ探してたらReseachGateかなんかで推薦されたので。

Peleteiro, A., Burguillo, J. C. & Chong, S. Y. Exploring Indirect Reciprocity in Complex Networks using Coalitions and Rewiring. in Proceedings of the 2014 International Conference on Autonomous Agents and Multi-agent Systems 669-676 (2014).

2014年のAAMAS論文とな。

複雑ネットワーク上で間接互恵をやるぞよ。世の中複雑ネットワークだ。Webの世界ならだれとでも取引可能だが(つまり全員とゲームする)やり方をまねできるのは知ってる相手だ(つまり隣接ノード)。またいくつかのコミュニティに属して情報を共有するよね(この論文でいうcoalition)。ということで学習対象がネットワークで縛られる構造を導入します。評判が観察できるのは隣接ノードかcoalitionメンバーに限る。当然ネットワークとcaolitionは可変でしょう。rewiringありです。

ゲームの基本アイデアはNowak&Sigmund(Nature, 1998)のイメージスコアリングのやつ。イメージスコア(評判)と協力の閾値を持ったエージェントがドネーションゲームをする。協力したら評判が+1、裏切ると-1となる。

ゲームはPopulationからランダムに選ばれる。エージェントはネットワーク上に配置され、またcoalitionにも属している。ドナーになったエージェントはレシピエントの評判を調べるんだけど、隣接ノードもしくはcoalitionのメンバーならスコアを見れる。それ以外だったら見れないのでスコアは0と判断する。

学習対象は隣接ノードから。rewiringは評判の悪いやつを確率的に切ってcoalitionの中から評判の高いやつにつなぐ。

いやー、なんでこんな七面倒臭いことするんだ。結果はまあrewiringとcoalitionで協力が進化するとか、SFとSmall-Worldでcoalitionの影響が違うとか。うーん、アブストラクトモデルにしては入れ込みすぎだし、ミドルレンジのモデルとしては何ができたのかよくわからん。はい次。

Liu, A., Wang, L., Zhang, Y. & Sun, C. in (eds. Liu, D., Xie, S., Li, Y., Zhao, D. & El-Alfy, E.-S. M.) 10638, 919-926 (Springer International Publishing, 2017).

続いてはこの論文を受けての論文。

ゲームの設定や学習ルールは同じ。coalitionは廃止してる。うんそれがいいと思う。でrewiringのときにつなぐのに成功するかどうかを自分の評判が高ければつなげて低ければ失敗するというアイデアを一発いれます。SFネットワークでrewiringありだと協力が進化するけど、rewiringなしだと進化しないと。

うーむ、うーむ。



2017年8月10日木曜日

We Can’t Return Evil for Good: The Comparison between Direct and Indirect Reciprocity

あれ、今年は7月は省略されたんだっけ。勝手に1年を11か月にしないでほしいものだ。

直接互恵と間接互恵を混在させてみると結局のところ直接互恵が強いよっていう論文。

Shiraki, Y. & Igarashi, T. We Can’t Return Evil for Good: The Comparison between Direct and Indirect Reciprocity. Lett. Evol. Behav. Sci. 8, 4–7 (2017).

直接互恵と間接互恵は良く知られてそして研究されている。集団内の観察が完全であれば、評判の矛盾は起きないけれど不完全観察ならば当然矛盾はおこる。評判の悪い人から協力された後に協力を求められたら、直接互恵的に協力を返すのか、評判を活用して拒否するのか。シナリオを用いてやります。

会社の同僚に最近部署が一緒になったBさんがいます。部署の人たちとランチを食べてたらBさんがやってきて夜勤を代わってくれと言ってきました。あなたは代わってあげますか。シナリオは2×2。互恵条件は「以前にBさんに助けてもらったことがある/ない」、評判条件は「Bさんは協力的で人気/非協力的で不人気」。

実験はほとんど同じ条件で3つ。学生を対象にするのと、日本のクラウドソーシング、世界45か国のクラウドソーシング(CrowdFlower)。最後だけ病院の夜勤に変更(一般的にするため)。

3実験とも美しく同じ結果を得ています。まず、それぞれの主効果は有意になる。評判Good>評判Badだし、互恵あり>互恵なしとなる。しかし面白いことに互恵条件では評判Goodと評判Badの間に差はなくなる。つまり評判の良否に関わらず高い協力意図を示す。しかも互恵なしの評判Goodよりも互恵あり評判Badのほうが協力意図は高い。当然、互恵なしなら評判Good>評判Bad。間接互恵的な評判によって協力するかどうかを判断するけれど、直接互恵的な関係は評判より優先される。

ちなみに今回は、Bの非協力が正当化されうるかどうかはコントロールしていない。つまりはBが非協力した相手がどうだったかは明示してない(2次情報は明確じゃない)。これは今後の課題とな。

言われてみれば当然だけど(自分自身への協力を観察した時点で評判をGoodに更新したといえるので)、結果がきれいに出ていて素晴らしい。

2017年6月27日火曜日

Do sincere apologies need to be costly? Test of a costly signaling model of apology.

先日の学会で雑談中に出てきた謝罪研究の話題。適当な記憶でしゃべってしまったので確認のために読む。案の定若干記憶と異なる実験設定だった。あぶねえ。

Ohtsubo, Y. & Watanabe, E. Do sincere apologies need to be costly? Test of a costly signaling model of apology. Evol. Hum. Behav. 30, 114-123 (2009).

謝罪のコストリーシグナルについて分析する。謝罪を受ける側は謝罪することのコストについて敏感に観察しているはず。実験1,2でコスト有り謝罪と無し謝罪をシナリオ実験で検討する。実験3は修正版独裁者ゲーム。架空のパートナーが不公平分配をしたのちに謝罪する。その時にメッセージを送ることにコストがかかることでコスト有り謝罪を再現する。

ザハビ先生のシグナリングセオリーはいけてるよ。人間の行動も結構説明がつく。特に謝罪というのはシグナルの信頼性が重要になるケースだ。騙そうとする表面的な謝罪を受け入れてしまうと搾取されるから。

Sender(S)とReciever(R)を考える。また協力的なScと搾取するSeも考えましょう。1ラウンドで協力的なやり取りをすればSもRもb_cを得る。しかし、Sの意図にかかわらずb_e(>b_c)をSは得ることができる。また確率wで繰り返しゲームをおこなう。またコストa(>=b_e)を払って謝罪をすることを考える。Scにとって、b_e <= a <= b_c・w/(1-w)ならScは謝罪コストを払っても関係を続けたいと思うはず。

ちょっと飛ばして実験へ。

実験1では謝罪における贈り物(補填)の効果をvignette experimentで検証。
実験2では謝罪において謝罪者の利得は減るけど、被謝罪者の利得は増えないというシナリオをvignette experimentで検証。
実験3では変形独裁者ゲーム。1000円のうち200円しかもらえなかったときに、Dictatorからメッセージを受け取る。その時のメッセージにかかるコスト(ただし参加者の利得は増えない)。

実験1:シナリオ実験です。友人に電子辞書を貸したんだけど返ってこないて宿題で不便だった。そのあと「謝罪」「謝罪+ランチおごり」を比較。
実験2:シナリオ実験。友達が金曜のバイトのシフトを勝手に参加者に代えていた。なぜなら友人は急遽実家に帰らなくてはいけないから。そのおかげで土曜の試験の準備ができなかった。友人は試験のことは忘れていた。コスト条件では友人はフライトの予定を変更して謝るために早く帰ってきた。コスト無条件では通常のスケジュールで戻った。
実験3:Dictatorゲームで参加者は200/1000という不公平分配をされる(ただしコンピュータによるランダムな選択)。その後Dictator側が自らの利得を500減らすというコストを払って謝罪メッセージを送るか(参加者の利得は増えず)、もしくはコスト無謝罪を受け取る。

1,2,3ともコスト有りが謝罪の誠実さを高く評価している。

この後にいくつかの検証実験もやっている(自分にだけコスト有り謝罪した場合とか)。結論としてはコストリーシグナルはとても有効だと。

(コスト,ベネフィット)について(0,0)<->(0,1)の比較と(0,0)<->(1,0)の比較をしているけど本当は(1,0)<->(0,1)を比較したいところだ。更には平面全体に拡張できたら面白そう。ただ比較可能な軸に乗せるのは大変そうか。

2017年6月10日土曜日

間接互恵で2次情報を扱った実験研究レビュー

来週出発の学会のポスター。著者欄しか埋めてない。5分間トークが当たってほしかったのによりによってポスター。最近学会発表が億劫でしょうがない。現実から逃げられるなら何でもいいので別件でやらなくちゃと思っていたレビューをざっと。

間接互恵では2次情報の扱いが重要だけど実験でどんなのがやられているのか。なんとなく「2次情報まで人は使うのか?」「2次情報がある前提ならどう使うのか?」「2次情報は協力を促進するのか?」というアプローチがありそう。

2次情報まで人は使うのか?

Milinski, M., Semmann, D., Bakker, T. C. M. & Krambeck, H.-J. Cooperation through indirect reciprocity: image scoring or standing strategy? Proc. R. Soc. B Biol. Sci. 268, 2495-2501 (2001).

匿名で繰り返しのギビングゲームをやって、提供・拒否をカウントしていく。拒否された率を測るのだが、周りがIS的と(つまり提供者へは提供、拒否には拒否)と振舞っていると想定したときの推定値とほぼ同等の拒否され率。ただしST(シンプルスタンディング)的と想定した拒否率とは大きく乖離している。よって2次情報はほとんど使われずIS的に振舞っている。

真島理恵. 間接互恵性状況での人間行動, in 「社会の決まり」はどのように決まるのか (ed. 亀田達也) 117-147 (勁草書房, 2015).

ランダムマッチでは、CtoG,CtoBに差はないが、相手選択が可能なときにはCtoG>CtoBとなる。つまりランダムマッチングではIS的に振舞い、2次情報を使って寄付する相手を選ぶ。相手選択可能な実験状況ではDtoBが外されているので、SH(GBBB)、SJ(GBBG)のいずれかは分別できない。(少なくともST(GGBG)ではないということになるのかな)

Swakman, V., Molleman, L., Ule, A. & Egas, M. Reputation-based cooperation: Empirical evidence for behavioral strategies. Evol. Hum. Behav. 37, 230?235 (2016).

実験で1次情報・2次情報も見れる状況を作る。2次情報にコストがある場合、無い場合を用意。主要な結果は、a) 1次の協力(C/D)が主要な効果を持つ(Cには提供するしDには提供しない) b) 人は2次情報をよく使う(人によってはコストがかかっても) c) とくにDの時の2次情報(DtoB/DtoG)をよく使い、DtoBは報われる(正当化される裏切りはOK)d) 個人差でかいよね。


2次情報がある前提ならどう使うのか?

真島理恵 & 高橋伸幸. 敵の味方は敵? 間接互恵性における二次情報の効果に対する理論的・実証的検討. 理論と方法 20, 177-195 (2005).

CtoG,CtoB,DtoC,DtoBまでの4状況を評価させる。評価指標としては「お人よし」「社会的適切さ」「関係重視」「他者からの評価予測」「提供行動の意図」。CtoBはお人よしと評価されるが、社会的適切さは低い。提供意図については CtoG>CtoB, DtoB>DtoCとなる。(つまり2次情報は使っているしどちらかというとSJ的ということか)

鈴木貴久 & 小林哲郎. 評判生成規範の類型がパーソナル・ネットワークのサイズに及ぼす効果. 社会心理学研究 30, 99-107 (2014).

CtoB、DtoBの2シナリオを評価させて平均より高いか低いかでG/Bとわけることで人をSH,SJ,IS,STに割り振ってサポートネットワークのサイズを従属変数にする。CtoBの主効果が有意。つまりCtoBをBadと判断する人はサポートネットワークのサイズが小さい。SH,SJ的な人は世間が狭いよ、と。

2次情報は協力を促進するのか?

Bolton, G. E., Katok, E. & Ockenfels, A. Cooperation among strangers with limited information about reputation. J. Public Econ. 89, 1457-1468 (2005).

0次、1次、2次と情報を増やすことで協力率は増加する。ただし協力コストが高いときにだけこの効果は確認できる

Ule, A., Schram, A., Riedl, A. & Cason, T. N. Indirect Punishment and Generosity Toward Strangers. Science. 326, 1701-1704 (2009).

2次情報じゃないけど、ギビングゲームに「提供」「拒否」に加えて「懲罰」を導入する。懲罰を選ぶとコストを払って相手の利益を減らせる。さて、懲罰はコストがかかるのだが実際に相手の利得を減らせる「実懲罰」と実際は合いの手利益が減らない「象徴罰」で比較すると象徴罰では裏切りが最も利得を上げるけど、実懲罰ではImage rewarderが一番利益をあげる。(ちょっと二次情報ダイレクトの研究ではないかも)

2017年6月6日火曜日

アップストリーム互恵シミュレーション編

ペイイットフォワード祭りその4。シミュレーションでPIFが進化するかを検討するもののうち匿名TFT的な戦略を扱っているもの2つ。ざっくりと。

Pfeiffer, T., Rutte, C., Killingback, T., Taborsky, M. & Bonhoeffer, S. Evolution of cooperation by generalized reciprocity. Proc. R. Soc. B Biol. Sci. 272, 1115-1120 (2005).

モデルとしては繰り返しPDを使う。少数のグループ内での繰り返しを想定するけど、今回の特徴は毎回グループ内で相手が変わり、相手についての情報は記憶しない。戦略は、前回の利得がR,S,T,Pのいずれだったかに対して次回の協力率p1,p2,p3,p4を持つ。つまり協力するかどうかは今回の相手とは関係ない。でシミュレーションすると(1,0,0,1)というA-PAVLOVが最終的に安定な戦略になる。

Barta, Z., McNamara, J. M., Huszar, D. B. & Taborsky, M. Cooperation among non-relatives evolves by state-dependent generalized reciprocity. Proc. R. Soc. B Biol. Sci. 278, 843-848 (2011).

今度はギビングゲーム。N人集団をM人集団に分割してランダムにギビングゲームをおこなう。モデルの特徴はほぼ同じで、戦略としては協力するかどうかを確率Pでもって、前回のゲームでもらえたらプラス、そうじゃなきゃマイナス。でそのインクリメント/デクリメント幅もそれぞれ戦略として持つ。結果、グループが小さければ協力が進化してほぼTFTのような戦略が支配的になる。

両方ともグループサイズを小さくすることで評判が無くても協力が進化するから、これは従来の間接互恵というよりgeneralized reciprocityだよね、と。そうなんだけど、そうなんだけど、グループが小さければ結局のところ直接互恵と同じ効果が出てくるのでは。なんか読み間違えてるのかな。

2017年6月2日金曜日

制御焦点と集団内における社会的交換 ‐寄付シナリオ実験による検討‐

二匹目のドジョウと言うか落穂拾いと言うかちょい足しレシピと言うか、そういう論文のイントロをうまく書ける能力がほしい。最後の段落しか変えるところないよ。

それはそれとして、ペイイットフォワード祭りその3。

佐藤有紀 & 五十嵐祐. 制御焦点と集団内における社会的交換 ‐寄付シナリオ実験による検討‐. 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 61, 37-45 (2014).

制御焦点理論(要するに人の思考の方向をプライムしてその方向によって行動が変わる)を使って寄付シナリオ実験の結果が違うよ。つまりは、制御焦点のコントロールによって自身の寄付額も異なるし、他者の寄付額に対する期待値も変わる。

さて制御焦点理論。2つあって、利得の存在に接近して利得の不在を回避しようとするのが「促進焦点」。もう一つは、損失の不在に接近して損失を回避しようとする「予防焦点」。

促進焦点は利益へのポジティブ認知、リスクテイキング、抽象的情報処理、変化への選好を駆動する。予防焦点はコストへのネガティブ認知、リスク回避、具体的局所的情報処理、安定選好を駆動する。

ということで制御焦点によって社会的交換状況におけるコスト認知や利益への認識等を変化させるから協力行動にも変化を与えるであろう。

社会的交換状況で考えるのは3つ。直接互恵(DR)、ダウンストリーム的間接互恵(ここではSocialized Indirect Reciprocity:SIR)、アップストリーム的間接互恵(ここではGeneralized IR:GIR)。

制御焦点と社会的交換の関連をいろいろ見つつ立てる仮説は3つ

  1. 促進焦点のほうが予防焦点より寄付額が大きい
  2. 促進焦点ではDR,SIR,GIRどの状況でも自身への返報期待額を大きく見積もる
  3. 促進焦点ではDR,SIR,GIRの返報期待額は同程度だが、予防焦点においてはDRの時だけ高くなる

実験いきます。(そうそうどんなシナリオでアップストリーム/ダウンストリームを実現するかが知りたかったのですよ)。

まずは制御焦点を操作。促進焦点では「こうありたいという理想形を自由記述、予防焦点では「こうあるべきという義務について自由記述」。更には迷路課題でゴールに報酬イラストがあるもの(促進)と、スタートに脅威イラストがあるもの(予防)を準備。(こんな簡単に制御できるのかいな)。

さて問題の寄付シナリオ。まずは「知り合いではないが同じ大学の学生が自然災害で被災して金銭的に困窮する」というシナリオで「自分が自由になるお金(10万円)のうちいくらを寄付するか」を回答。続いて、その行為が評判として公開(学内の広報誌にとりあげられる)としてDR:将来自分が被災したら今回の被災学生は自分にいくら寄付してくれるか、SIR:将来自分が被災したら大学内の第三者の学生はいくら寄付してくれるか、GIR:将来、大学内の第三者の学生が被災したら今回の被災学生はいくら彼に寄付するか、という3つの互恵性場面の期待額を回答。

結果どーん。

まずは個人要因(一般的信頼)とかは寄付額とかに影響与えてなかった(え、そうなの?)。

  • 仮説1:促進焦点と予防焦点で自分の寄付額は、異なります。圧倒的に促進焦点のほうが多額を寄付すると答えている。めでたく仮説1はOK!
  • 仮説2:返報期待額もDR,SIR,GIR全てにおいて促進焦点が高い。仮説2もOK!
  • 仮説3:予防焦点においてDRだけが高くなることはなかった。また促進焦点内ではGIRの値が高くなった。仮説3は残念!

いやーきれいに出るもんだなぁ。うらまやしい。寄付シナリオでアップストリーム・ダウンストリームをコントロールするやり方としては面白い。

限界としては、焦点のコントロール群を用意しなかった。操作チェックも行ってない。被験者内部分(DR,SIR,GIR)でカウンターバランスとってない。普通の投資ゲームでも成立するかは、まあ今後の課題でしょう、と。

PIFでは総じて感謝(Bartlett and DeSteno,2006)とか、共感(Watanabe, et al.,2014)とかの感情生起が要因だと言っているのが多い感じなのかな。今回の促進焦点もまあプラスの感情のプライミングではあるし。さて。どうしたものでしょうか。

2017年5月30日火曜日

被援助者による第三者への向社会的行動の生起過程に関する検討


ちょっと早めに近所のバーに行くかなと思って来たら、先客1名の年配男性が微妙にすすり泣きながら飲んでる。店内にはバーテンダー含め3人。し、仕事のふりをしよう。アップストリーム祭りその2。実験結果だけ見ていた論文をもう一度読む。

Upstream互恵を、ジレンマのフレームではなくて援助行動研究の知見を使って分析するよという論文。

相川充, & 吉野優香. (2016). 被援助者による第三者への向社会的行動の生起過程に関する検討. 筑波大学心理学研究, 51, 9-22.

恩送りって間接互恵の一種だけど不思議だよね。間接互恵のDownstream型は今までわんさか研究がある。行動が評判として共有されることが協力を促進するというメカニズムも明確だ。実験もたんまりあるし理論もたっぷりだ。他方Upstream互恵は評判みたいなメカニズムも提示されてないので一体それは何なのかよくわかってない。Upstream互恵が存在することは(Barlett & DeSteno,2006)で示されてたりする。また直接互恵が働く環境で観察されるだけだという主張もある(Nowak & Roch, 2007)。(ついでに最近のHorita et.al., Sci.Rep., 2016ではALLCが隣合わさっただけじゃんという主張をしている)。

つーことでUpstream互恵がどうして生じるのかは良くわかっていない。Upstream互恵は要するに「過去に受けた協力を認知してそれを誰かに対する行動として発現する」ということなんだから、ここを詳しく見ます。フレームとしてはこれまで多くやられていた援助行動研究の知見を応用するよ。ということで、被援助経験がどのように認知されて、向社会行動に結びつくのかを構造方程式モデリングでやります。

んー、援助行動てそのまま互恵性にぴったり当てはめられるのかいな。まあ利得構造自体はそのとおりなんだろうけど、以前読んだ行為者の視点(どういうゲームと認識しているか)も検討しないとずれそうな予感もある。まあいいや、続き。

被援助者は助けられることで2種類の感情を生起するだろう。感謝や誇りというポジティブ感情、負債感や自尊心の傷つきなどのネガティブ感情。いずれも結果として向社会的行動に向かうと考えられるが、前者から考えられるのは互恵的意識による行動、後者は返礼意識による行動である。つまり被援助経験のときに生起した感情によって向社会的行動をドライブする動機が異なるでしょう。ということで構造方程式を次のように立てます。

被援助経験→感情体験→動機(互恵的動機/返礼的動機)→向社会的行動

なお、動機に直接影響を与える要因として「援助規範意識」「共感性」という個人特性も加えます。

さて調査。質問紙&場面想定法で行きます。まじかー、いや自分もゼミでやるとなると場面想定くらいしか使えないんだけどこのテーマでそれは大丈夫なのかいな。いや今の無し無し。超特大ブーメランだ。

被援助体験:過去二週間で一番印象に残る被援助経験
感情生起:その時に生じた感情について8項目で
6種類の援助場面での向社会的行動の意図:分与、緊急事態の援助、努力を必要とする援助、迷子等への援助、社会的弱者への援助、小さな親切

結果行きます。率直に読むとパスモデルは成立していない。まずは被援助体験がネガティブ感情を生起していない、また感情生起がいずれの動機へも影響を与えていない、個人特性である規範意識が動機をドライブしてそれが向社会的行動につながる。あとは感情生起がそのまま行動につながる。考察では綺麗には出なかったねと言いつつも、「感謝」は向社会的行動につながるので、被援助体験→感謝→向社会的行動というパスは頑健に成立する。つまりは感謝がUpstream互恵の媒介要因だ、と。なるほど、いや、うん?要するにBartlett&DeSteno,2006が再現dということなんだよな。

Upstream互恵を心理的メカニズムで追い詰めようというのは面白かった。結果がいまいちだったのは場面想定の弱さもあるけど、Upstream互恵が単独では生じ得ないことの傍証にもなっているのではなかろうか。

2017年5月27日土曜日

Gratitude and Prosocial Behavior

Pay-it-forward祭りその1。2くらいで終わりそうだけど。実験ではPay-it-forwardが存在することが示されているという文脈で多くの論文に引用されているキー論文ぽい。Google Scholarで705件の引用。いいなぁ、そういう論文を書いてみたいものだ。

Bartlett, M. Y. & DeSteno, D. Gratitude and Prosocial Behavior. Psychol. Sci. 17, 319–325 (2006).

感謝が向社会行動を形作ると。これまでの研究でも感謝が向社会行動を増加させることは報告されているけど、媒介要因としての効果はちゃんとわかっていないからビシっと実験で示しましょう。

【実験1】
被験者は2人一組にされるけど実は一方はサクラです。いろんな作業をやった後(この作業もどうでもいい)に3つのコンディションを作る。

  • 感謝:被験者のモニタが突如映らなくなって困るけど、実際にはサクラがコードを引き抜いている。実験者が呼ばれて、最初からやり直しだねというんだけどサクラはエラーの原因を探す。するとサクラはコードが緩んでいることに気づいて問題を解決する。被験者はやり直さなくてもよくなる。
  • 娯楽:作業が終わった後に娯楽作品(Saturday Night Live)を見る。サクラは楽しかったねーと盛り上がる。実験者はビデオを見せたことを正当化するために作品内で出た単語とかを質問する。
  • 中立:作業が終わった後にサクラと被験者で、これなんの実験なんだろうねぇとか話す。

これらがおわったら感情評定を行う。もろもろが終わった後に、サクラがおもむろに被験者に近づいて手伝ってほしい(30-60分くらいのサーベイ)と申し出る。メインの従属変数はどの程度の時間手伝ったか。拒否ったら0分。

結果いきます。感謝を媒介変数にする媒介分析します。予想どおりに感謝を媒介して援助行動(手伝う時間の長さ)が増加している。

【実験2】
もし感謝が援助行動を決めるのであれば、感謝条件の人は、恩人も他人も区別なく助けるだろうし、互恵性規範が原因なら他人(何の助けもしてないひと)には中立条件と変わらない程度しか助けないでしょう。ということで実験1の2条件(感謝・中立)に加えて最後に助けを求める人をBenefactorとStrangerにして実験します。えーと中立のBenefactorて誰だ?サクラのことか?まあそう理解しよう。

結果。援助要請者の主効果ばっちり有意(条件によらずBenefactorに高い援助を与える)、条件の主効果もバッチリ有意(相手に寄らず感謝条件で高い援助)。交互作用はなし。つまりは互恵性じゃなくて感謝がやっぱり有効だ。

【実験3】
実験2の効果をさらに検証するために、Strangerであることを明確にする(実験者がこの人は実験のパートナーだったっけ?と聞く)条件を追加。結果。やっぱり感謝条件なら助けている。

これらの実験を通じて感謝が向社会行動の強い証拠になっていることをみつけたぞ。うんぬうかんぬん。

これ、Pay-It-Forwardの証拠にしていいのか・・・?感謝によって互恵的な相手以外にもコストをかけて助けているからPIF的とはいえるのかあ。確かに受けた恩に対する感謝が生起すれば、他者に対して助けているんだからPIFといえるけど。

例えば、恩を受けるけど恩人は別に報酬を受け取っていて感謝する必要がない状況でもPIFは生じるか、とか。あ、もしかして面白い?けどこの実験状況つくるの超大変だ。

2017年5月22日月曜日

貢献感と援助要請の関連に及ぼす互恵性規範の増幅効果

落ちた科研の評価はBだった。かすってもいない。ええ、ええ、どうせ新規性のない実行の能力もない社会にも貢献しない研究者です。

集団に対する貢献感と援助要請には正相関があり更には互恵性規範がその相関をブーストするという論文。

科学への貢献の低い私はお金の援助要請を抑制するのが道理だ、と。やさぐれながら読む。

橋本剛. (2015). 貢献感と援助要請の関連に及ぼす互恵性規範の増幅効果. 社会心理学研究, 31(1), 35–45.

利他行動の中でも援助行動に着目する。ヒトは援助要請がなくても他人を助けたりする利他行動をとることがある。それはおそらく他者の心理推測であろう(心の理論とか)。そのように援助者として被援助者の心理を推測できるなら逆もありうるでしょう。そして援助されることを望んでいるにも拘らず援助要請を抑制する「遠慮」はその表現形のひとつだ。ということで「人間はなぜ援助要請を抑制するのか」を分析するよ。(互恵性の研究だと思ったら援助行動のフレームだったか)

互恵的協力の理論から考えると相互援助が生じると考えられるし世の中にも普通に援助したりされたりは存在する。けれども援助要請の抑制(遠慮)が発生する理由にはいくつかの理由が考えられる。1.自尊心・問題の深刻さ・スティグマなどなど。2.要請コスト>被援助利益という大小関係。これには否定的回答による不利益や秘密漏洩などの様々な要因がありうる。しかしながら被援助者は援助者の利得も考慮するんじゃないか。つまり援助者にとって高コストな援助要請は心理的な負債をもたらすので援助要請が抑制される。

更には、そうした高コスト要請を繰り返してさらに相手に返報できなければ、間接互恵的に考えてもフリーライダーとみなされるリスクも高まる。逆に言えば返報可能であれば援助要請は促進されるはず。

ということで被援助者(援助要請者)の貢献感と援助要請傾向に正相関があることを検証しましょう。

当然互恵規範も考えなくてはいけないけど互恵規範を考えるときには注意が必要だ。つまり、互恵規範が高ければ常に援助するという正方向だけではなくて、互恵規範が高ければ返報のない援助はしない、援助されなければ援助しないという向きも考える必要がある。よって互恵規範が低ければ先の貢献間と援助要請傾向の相関は弱まるし互恵規範が高ければ正相関は強くなるだろう。

ということで仮説。

  1. 貢献間と援助要請傾向には正の相関がある
  2. この相関は互恵規範によって強化される

調査行きます。場面は職場の対人関係、調査会社のモニターを使ったweb調査。有効回答500。「貢献感」職場における自身の貢献度を主観で聞く。「互恵性規範」職場に存在する互恵性規範を聞く。自身のではなくて職場の雰囲気で聞いて集団の規範を推定させる。「援助要請意図」悩みを一人で解決できそうにないときにどの程度相談するか。

さて結果。まずは互恵性規範の因子構造が2つである。「職場では助けてもらったら返報が必要だ」という「返報必要」因子と「職場では貸し借りは気にしなくてよい」という「返報不要」因子が抽出された。複数の人で構成される組織なら相反する規範が併存するのは妥当であろう。(やっぱりこれだけシンプルな規範でも混在するのだから2次情報を使う間接互恵規範の共存は当然と考えられるか。よしよし。それにしてもこれだけ正反対の規範で2因子になるのか)

ではメインの結果行きましょう。仮説1の貢献間と援助要請意図の相関ですがバッチリでますr=.30(p<.001)。仮説2の互恵性規範によるブースト効果は、互恵性規範が2次元なので4つにわけて分析したら「返報必要が高く、返報不要が低い(つまり互恵性が超強い)」組で貢献間によるブーストが顕著にでていた。仮説2もオッケー。

将来的な展望としては文化差とか関係流動性とかを取り組みます。

んーとでも「返報必要低、返報不要高」という無礼講的組織で一番援助要請が高くなる気がするんだけど「必要高・不要高」で援助要請意図が一番上に来ている。これはなんでなんだろう。規範の混在についてはあまり深く突っ込んで議論してないからしょうがないか。

なるほど、互恵性規範の強い社会では貢献度が低いヒトは生きにくいと。いやあ確かにしみじみと身に沁みます。援助意図も併せて聞いて、貢献度の低いメンバーへの援助が互恵性で抑制されちゃったりするとなかなかのディストピアだ。それにしてもアップストリーム互恵を調べてるとどうしても援助行動・被援助行動のフレームのほうが見つかるなあ。あとやっぱり規範の混在は面白そうだ。どっから取り掛かるといいんだ。

2017年5月18日木曜日

直観と熟考を協力の進化に取り込む論文2つ

直観と熟考の認知モデルを進化ゲームに取り入れるというアプローチ。連続でPNASとProc. R. Soc. Bに載せるというすんごい人たち。溜息しかでない。共著者グループ内で当然知ってるという前提で議論が進んでるけど、まったく読んでなかったのでこっそり読む。こそこそ。

Bear, A., & Rand, D. G. (2016). Intuition, deliberation, and the evolution of cooperation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(4), 936-941.

「直観」と「熟考」の効果をジレンマに理論的に取り入れる。システム1、システム2の働きは近年とても注目されているし、協力の進化に与える影響も議論を呼んでいるところだ。伝統的な進化ゲーム理論では行動には着目してきたが認知のことはまだまだうまく取り入れられていない。ということで認知のデュアルシステム(直観と熟考)を取り入れたモデルを作ります。

ゲームはPDで確率pで繰り返しゲーム、1-pでワンショットゲームとなる。エージェントは自身の戦略としてT(直観モードか熟考モードかの閾値)を持つ。ランダムに与えられるコストdがTより小さければコストdを払って熟考モードとしてプレイするが、逆の場合はコストを払わず直観モードでプレイする。また、直観モードの時はどちらのゲームでもs_iの確率で協力する。熟考モードではワンショットゲームだったらs_1、繰り返しだったらs_rで協力する。

さて均衡戦略は何かというとIntuitive Defector(T=0:常にに直観モード、s_i=0:確実にD)は均衡となる。しかし何ということでしょうDual-process Cooperator(T=c(1-p)、s_i=1,s_1=0,s_r=1:直観モードで協力、熟考では繰り返しのときだけ協力)も均衡なんです。

Bear, A., Kagan, A., & Rand, D. G. (2017). Co-evolution of cooperation and cognition: the impact of imperfect deliberation and context-sensitive intuition. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 284(1851), 20162326.

そして立て続けに第二弾。さらには状況に不完全さを導入。ゲームも2タイプ(ジレンマ、コーディネーション)に拡張、それぞれのゲームでの協力率を戦略として持つ。

エージェントは直観モード閾値Tと、各状況での協力率4つを戦略として持つ。直観・ジレンマの時の協力率S_iD、直観・コーデS_iC、熟考・ジレンマS_dD、熟考・コーデS_dC。

まずは認知プロセスで前の論文と同じようにTで直観モードか熟考モードに分岐。続いて確率pでゲームの種類がわかれる。今度は繰り返しかどうかではなくて、ジレンマゲームかコーディネーションゲームに分かれる(pでコーディネーションゲーム)。続いて、直観モードの時にはy_iでゲームを正確に理解し、ジレンマならS_iD,コーデならS_iCの確率で協力する。一方1-y_iで使う確率が逆転してしまう。熟考モードでも同様(y_d)。y_i,y_dは環境パラメータ。

そうすると均衡戦略は4つになる。ID(T=0,S_i*=0), IC(T=0,S_i*=1), Dual-Cooperator(T>>0, S_i*=1, SdD=0, SdC=1), Dual-Attender(T>>0, S_iD=0,S_iC=1, SdD=0, SdC=1)。

まずはpを動かして均衡戦略を見てみる。y_i,y_dの組み合わせで均衡戦略の相が変わる。例えばy_d=1, y_i=0.5ではp<0.3でID、それ以外ではDCが均衡。一方ID,IC,ICの場合とか、ID,DA,DCの場合とかがある。でパラメータをいろいろ動かして相図を見てみます。

最後にまとめとして、deliberationの効果をみるとジレンマに対してはDCもDAも協力を減らす効果、一方コーディネーションについてはDAが協力を増やす効果。

詳細は読み飛ばしたけど認知の二つの仕組みをモデルに取り込むやり方としてはシンプルで格好いい。さすがだなぁ。直接バッティングはしないけど認知プロセスをモデルに取り込まなくちゃだめだよねという良い先行事例になりそう。

2017年5月15日月曜日

評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して

科研費の報告書作成があまりに面倒なので現実逃避気味に読む。今年落ちたから来年は報告書を書かなくていいという幸せ。幸せ?

最近めっきり間接互恵のシミュレーション&数理にはまっているので実験アプローチにもちゃんと目を通さなければ。

岩谷舟真, 村本由紀子, & 笠原伊織. (2016). 評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して. 社会心理学研究, 32(2), 104-114.

規範を「集団や社会でメンバーに対して期待されている行動についての規則」と定義しよう。また、自身のある行動が評判としてGoodと評価されるかBadと評価されるかを予測することを評判予測とする。Good/Badの2側面に分けて、かつ集団の関係流動性によって規範へのコミットを分析するよ。

関係流動性が高ければ新しいパートナーと関係を結ぶ機会が多いからポジティブな評判へのインセンティブが高く、逆に関係流動性が低ければ関係から排斥されるダメージが大きいためにネガティブ評判を避けるインセンティブが高いだろう。ということで、関係流動性が高い環境ではポジティブ評判の効果(利得)を高く予測するものほど規範にコミットするだろう。他方低流動な環境ではネガティブ評判の効果(損失)を高く評価するものほど規範にコミットするだろう。

題材としては地域活動(美化、防災、お祭り)への参加要因で検討する。もちろん自発的(個人特性)によっても規定されるだろうけど規範の影響もあるよね、というのをコミュニティへの参加要因の論文などから引きつつ若干エクスキューズ気味に展開。ここまで丁寧にやらんとダメなのかぁ。まあ地域コミュニティは社会的ジレンマ、イエスオッケーというのはごく一部のジレンマオタクだけか。

さて、今回は評判「予測」に着目するのだが予測は実際の評判の獲得を正しく推測しているのだろうか。そんなことはなかろう。つまり例えば低流動性社会で実際に評判が低下すると大きな損失になるので、評判の低下を過剰に見積もるだろう。逆に高流動性社会で評判の獲得ができないと大きな機会損失となるので、評判の向上を過剰に見積もるだろう。(や、やばい自分のネタが古びるまえに出さなくては)

つーことで仮説まとめます。

  1. 高流動性社会ではポジティブ評判の効果を高く見積もるなら規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  2. 低流動ではネガティブを高く見積もると規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  3. 高流動では規範遵守者を高く評価、低流動では規範逸脱を低く評価(Observerとしての評価戦略)
  4. Observerとしての評価の上昇・下降より、Donorとしての評判予測のほうが過剰

実験行きます。対象は墨田区。なぜなら今でも地域活動が盛んだから。まじか!でも確かに地域活動は盛んみたいだ。町会の活動が超しんどいという噂を聞いた。下町人情の闇・・・。選挙人名簿を使った二段階確率比例抽出で郵送でやります。有効回答は163で27.3%。ちなみに関係流動については主観的な評価を用いる(「地域の人たちは、人々と知り合いにな る機会がたくさんある)。個人特性は賞賛獲得欲求・否定的評価回避欲求を使う。あとは自身の行動による評判予測と、他者の行動への評価、そのたいくつかの統制変数。

メインの結果。地域活動への参加頻度を従属とする重回帰をやった結果、仮説1,2の評判の上昇(低下)予測×関係流動性の交互作用では、低下のほうだけ交互作用あり。低下予測と流動性の交互作用では、高流動群で低下予測と参加頻度に関係はないが、低流動群では低下予測が大きいほど参加頻度が高い。つまりは仮説2はOK!ただし仮説1(上昇予測と流動性)の交互作用はダメ。続いて、自身の評価戦略が評判予測と関係しているかを見ます。まずポジティブに評価するかどうかは、流動性やその他の変数とは関係なかった。逆に、ネガティブに評価するかどうかは低流動であるほど、居住期間が長いほど逸脱者への評価を下げる。仮説3は一部OK。更に続いて過剰評価について。(ドキドキするなあ)自身の逸脱で評価が下がる程度(評判予測)は他者の逸脱で評価を下げる程度(自身の評価戦略)より大きい。つまり過剰予測。逆に、自身の遵守で上がる評判予測は、自身の評価戦略より小さい。つまり過小予測。(おお一致する)

まとめると低流動におけるネガティブ評判は大きく評価されるが、高流動におけるポジティブ評判はそうでもなかった。


いやあなるほど。これは1次情報をどう扱うかを自身の評価に対する予測と他者への評価で分析しているけど、2次情報まで使う規範の実験アプローチはまだまだいけそうだ。そもそも2次情報の扱い方をちゃんと分析した実験アプローチはどの程度あるんだろう。

2015年11月21日土曜日

違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響

なんと入試監督の集合時間を2時間も勘違いしていた。いやー焦った。実害が(ほぼ)なくてほんと助かった。以前には学長選挙ぶっちして相当おこられたので、いよいよやばい気もしてきた。

著者たちは去年ゼミ生が追試した油尾(2012)の指導教員なのかな。それの出発点になってそうな論文をよむ。

追試は儚い結果になったけど。再現しない追試ばかりやってる人生でした。

北折充隆, & 吉田俊和. (2000). 違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響 -大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験:大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験. 実験社会心理学研究, 40(1), 28–37.

社会規範からの逸脱を抑止するメッセージについてメッセージの内容、実際の逸脱状態の2つをコントロールして実験する。某国立N大学をフィールドにするよ。

Cialdini et.al.(1990)は渡されたチラシのメッセージによってその後のポイ捨ての率が変わったことを示している。心理的リアクタンス(Brehm,1966)によると(うわ、そんなのがあるんだ)、違反抑止の文脈だと「○○禁止」よりも「○○厳禁、○○するな」のように強く命令的に禁止するほうが違反が多くなると考えられる。

えーと、どれが電圧でどれが電流に該当するんだ。電圧がメッセージの強さで電流が、ちょっとわからんや。こういう心理的○○とか社会的○○、みたいに○○に科学用語をいれて比喩的にアイデアを売り出すのってどうなんだろうね。社会的ワクチン、とか。

とにかく、メッセージの強さ(強い命令)は逆効果だろうと。更には制裁の提示が協力率を上げることは箕浦(1987)たちの研究でも知られている。一方で、Cialdini(1990)はあらかじめポイ捨てされているチラシの量が非協力(ポイ捨て)を促進すると言っている。メッセージ×状況で研究します。

(1)駐輪禁止(2)ここに自転車 ・バイクを止めるな。(3)指定の駐輪場を利用 して下さい。放置自転車は処分します。(4)授業の妨げとなるのでバイクの侵入禁止。(5)一人が止めると後も続きます。ここに 自転車 ・バイクを止めないで下さい。という5つのメッセージを用意する。それぞれ、普通、命令、制裁、理由、同調抑止を提示している。

【実験1】上記5つメッセージを取り換えながら何日も物陰から観察実験する。条件としては対象の空間を常に実験者が整理して違反自転車がない状態とする。結果は、ほとんど違反はなかった(トータルで1台だけ)。これは違反ゼロをつくったということが強くきいているだろう。

【実験2】同じメッセージを使うが、状況としてあらかじめ1,2台が置かれている状況を維持して実験する。結果は、制裁メッセージが他の4種類に対して違反率が低い(協力率が高い)となった。

【実験3】同じメッセージ。状況は常に5台が違反自転車となる(実験者が5台用意して、誰かが違反をするたびに実験者の自転車を一台撤去して常に5台にする)。実験者の自転車がなくなった段階で1セッション終了。結果は、メッセージ間の効果の差はなくなった。非協力率を実験2,3間で比較してないのかな。

結論として、制裁の提示が逸脱者が少数の時にのみ特別な効果を持った。制裁の提示は状況依存的であり多数の逸脱者がいる状況では効果が薄れる。

なるほどなぁ。この実験では1台のみの違反駐輪というのは制裁が実施されうることを示してるからうまくいってるのだろうか。ジレンマ実験でサンクションがあればパニッシュはちょっとで大丈夫というのがあるが、実はその結果から読み取るべきメッセージは、大事なのはサンクションが実施されるということを参加者が認識していることなんじゃないかと、この論文を読んでて思った。ということは、ジレンマにおける協調では「裏切りがあること」がばれても構わないけど「裏切りが罰せられないこと」がばれるのが一番まずいと。つまりは2次サンクション+社会的ワクチンが素晴らしいアイデアだと。。。「サンクションが実施されているかどうか」というシグナルが大事っていうアイデアどっかで使えないかな。