最近めっきり間接互恵のシミュレーション&数理にはまっているので実験アプローチにもちゃんと目を通さなければ。
岩谷舟真, 村本由紀子, & 笠原伊織. (2016). 評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して. 社会心理学研究, 32(2), 104-114.
規範を「集団や社会でメンバーに対して期待されている行動についての規則」と定義しよう。また、自身のある行動が評判としてGoodと評価されるかBadと評価されるかを予測することを評判予測とする。Good/Badの2側面に分けて、かつ集団の関係流動性によって規範へのコミットを分析するよ。
関係流動性が高ければ新しいパートナーと関係を結ぶ機会が多いからポジティブな評判へのインセンティブが高く、逆に関係流動性が低ければ関係から排斥されるダメージが大きいためにネガティブ評判を避けるインセンティブが高いだろう。ということで、関係流動性が高い環境ではポジティブ評判の効果(利得)を高く予測するものほど規範にコミットするだろう。他方低流動な環境ではネガティブ評判の効果(損失)を高く評価するものほど規範にコミットするだろう。
題材としては地域活動(美化、防災、お祭り)への参加要因で検討する。もちろん自発的(個人特性)によっても規定されるだろうけど規範の影響もあるよね、というのをコミュニティへの参加要因の論文などから引きつつ若干エクスキューズ気味に展開。ここまで丁寧にやらんとダメなのかぁ。まあ地域コミュニティは社会的ジレンマ、イエスオッケーというのはごく一部のジレンマオタクだけか。
さて、今回は評判「予測」に着目するのだが予測は実際の評判の獲得を正しく推測しているのだろうか。そんなことはなかろう。つまり例えば低流動性社会で実際に評判が低下すると大きな損失になるので、評判の低下を過剰に見積もるだろう。逆に高流動性社会で評判の獲得ができないと大きな機会損失となるので、評判の向上を過剰に見積もるだろう。(や、やばい自分のネタが古びるまえに出さなくては)
つーことで仮説まとめます。
- 高流動性社会ではポジティブ評判の効果を高く見積もるなら規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
- 低流動ではネガティブを高く見積もると規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
- 高流動では規範遵守者を高く評価、低流動では規範逸脱を低く評価(Observerとしての評価戦略)
- Observerとしての評価の上昇・下降より、Donorとしての評判予測のほうが過剰
実験行きます。対象は墨田区。なぜなら今でも地域活動が盛んだから。まじか!でも確かに地域活動は盛んみたいだ。町会の活動が超しんどいという噂を聞いた。下町人情の闇・・・。選挙人名簿を使った二段階確率比例抽出で郵送でやります。有効回答は163で27.3%。ちなみに関係流動については主観的な評価を用いる(「地域の人たちは、人々と知り合いにな る機会がたくさんある)。個人特性は賞賛獲得欲求・否定的評価回避欲求を使う。あとは自身の行動による評判予測と、他者の行動への評価、そのたいくつかの統制変数。
メインの結果。地域活動への参加頻度を従属とする重回帰をやった結果、仮説1,2の評判の上昇(低下)予測×関係流動性の交互作用では、低下のほうだけ交互作用あり。低下予測と流動性の交互作用では、高流動群で低下予測と参加頻度に関係はないが、低流動群では低下予測が大きいほど参加頻度が高い。つまりは仮説2はOK!ただし仮説1(上昇予測と流動性)の交互作用はダメ。続いて、自身の評価戦略が評判予測と関係しているかを見ます。まずポジティブに評価するかどうかは、流動性やその他の変数とは関係なかった。逆に、ネガティブに評価するかどうかは低流動であるほど、居住期間が長いほど逸脱者への評価を下げる。仮説3は一部OK。更に続いて過剰評価について。(ドキドキするなあ)自身の逸脱で評価が下がる程度(評判予測)は他者の逸脱で評価を下げる程度(自身の評価戦略)より大きい。つまり過剰予測。逆に、自身の遵守で上がる評判予測は、自身の評価戦略より小さい。つまり過小予測。(おお一致する)
まとめると低流動におけるネガティブ評判は大きく評価されるが、高流動におけるポジティブ評判はそうでもなかった。
いやあなるほど。これは1次情報をどう扱うかを自身の評価に対する予測と他者への評価で分析しているけど、2次情報まで使う規範の実験アプローチはまだまだいけそうだ。そもそも2次情報の扱い方をちゃんと分析した実験アプローチはどの程度あるんだろう。
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