落ちた科研の評価はBだった。かすってもいない。ええ、ええ、どうせ新規性のない実行の能力もない社会にも貢献しない研究者です。
集団に対する貢献感と援助要請には正相関があり更には互恵性規範がその相関をブーストするという論文。
科学への貢献の低い私はお金の援助要請を抑制するのが道理だ、と。やさぐれながら読む。
集団に対する貢献感と援助要請には正相関があり更には互恵性規範がその相関をブーストするという論文。
科学への貢献の低い私はお金の援助要請を抑制するのが道理だ、と。やさぐれながら読む。
橋本剛. (2015). 貢献感と援助要請の関連に及ぼす互恵性規範の増幅効果. 社会心理学研究, 31(1), 35–45.
利他行動の中でも援助行動に着目する。ヒトは援助要請がなくても他人を助けたりする利他行動をとることがある。それはおそらく他者の心理推測であろう(心の理論とか)。そのように援助者として被援助者の心理を推測できるなら逆もありうるでしょう。そして援助されることを望んでいるにも拘らず援助要請を抑制する「遠慮」はその表現形のひとつだ。ということで「人間はなぜ援助要請を抑制するのか」を分析するよ。(互恵性の研究だと思ったら援助行動のフレームだったか)
互恵的協力の理論から考えると相互援助が生じると考えられるし世の中にも普通に援助したりされたりは存在する。けれども援助要請の抑制(遠慮)が発生する理由にはいくつかの理由が考えられる。1.自尊心・問題の深刻さ・スティグマなどなど。2.要請コスト>被援助利益という大小関係。これには否定的回答による不利益や秘密漏洩などの様々な要因がありうる。しかしながら被援助者は援助者の利得も考慮するんじゃないか。つまり援助者にとって高コストな援助要請は心理的な負債をもたらすので援助要請が抑制される。
更には、そうした高コスト要請を繰り返してさらに相手に返報できなければ、間接互恵的に考えてもフリーライダーとみなされるリスクも高まる。逆に言えば返報可能であれば援助要請は促進されるはず。
ということで被援助者(援助要請者)の貢献感と援助要請傾向に正相関があることを検証しましょう。
当然互恵規範も考えなくてはいけないけど互恵規範を考えるときには注意が必要だ。つまり、互恵規範が高ければ常に援助するという正方向だけではなくて、互恵規範が高ければ返報のない援助はしない、援助されなければ援助しないという向きも考える必要がある。よって互恵規範が低ければ先の貢献間と援助要請傾向の相関は弱まるし互恵規範が高ければ正相関は強くなるだろう。
ということで仮説。
- 貢献間と援助要請傾向には正の相関がある
- この相関は互恵規範によって強化される
調査行きます。場面は職場の対人関係、調査会社のモニターを使ったweb調査。有効回答500。「貢献感」職場における自身の貢献度を主観で聞く。「互恵性規範」職場に存在する互恵性規範を聞く。自身のではなくて職場の雰囲気で聞いて集団の規範を推定させる。「援助要請意図」悩みを一人で解決できそうにないときにどの程度相談するか。
さて結果。まずは互恵性規範の因子構造が2つである。「職場では助けてもらったら返報が必要だ」という「返報必要」因子と「職場では貸し借りは気にしなくてよい」という「返報不要」因子が抽出された。複数の人で構成される組織なら相反する規範が併存するのは妥当であろう。(やっぱりこれだけシンプルな規範でも混在するのだから2次情報を使う間接互恵規範の共存は当然と考えられるか。よしよし。それにしてもこれだけ正反対の規範で2因子になるのか)
ではメインの結果行きましょう。仮説1の貢献間と援助要請意図の相関ですがバッチリでますr=.30(p<.001)。仮説2の互恵性規範によるブースト効果は、互恵性規範が2次元なので4つにわけて分析したら「返報必要が高く、返報不要が低い(つまり互恵性が超強い)」組で貢献間によるブーストが顕著にでていた。仮説2もオッケー。
将来的な展望としては文化差とか関係流動性とかを取り組みます。
んーとでも「返報必要低、返報不要高」という無礼講的組織で一番援助要請が高くなる気がするんだけど「必要高・不要高」で援助要請意図が一番上に来ている。これはなんでなんだろう。規範の混在についてはあまり深く突っ込んで議論してないからしょうがないか。
なるほど、互恵性規範の強い社会では貢献度が低いヒトは生きにくいと。いやあ確かにしみじみと身に沁みます。援助意図も併せて聞いて、貢献度の低いメンバーへの援助が互恵性で抑制されちゃったりするとなかなかのディストピアだ。それにしてもアップストリーム互恵を調べてるとどうしても援助行動・被援助行動のフレームのほうが見つかるなあ。あとやっぱり規範の混在は面白そうだ。どっから取り掛かるといいんだ。
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