2015年6月30日火曜日

Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence.

気付いたら今年が半分終わるという恐怖。

持ってるデータを早く論文化しなくてはいけないので積んである関連論文を読む。

Matthes, J. (2015). Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence. International Journal of Public Opinion Research, 27(2), 155–176. doi:10.1093/ijpor/edu032

Abst.
SoSTでもっとも大事なのは時間の概念だろう。多数派がますます多数派になるというダイナミクスが肝なんだから。しかしほとんどの研究はダイナミクスを扱ってない。自分たちが3波のパネル調査でこれを明らかにしましょう。

SoSTはむっちゃたくさん研究されている。しかし、ほとんどがcross-sectionalではないか。一部パネルを使った研究もあるが、ダイナミクスをモデル化しているとは言えない。これは理論の言うところから考えると驚きの大事な部分の無視っぷりと言えよう。意見風土と意見表明の関係については、二つの予測が存在している。一つは、意見風土と意見発信の関係で、これは多数派と認知したら話すし、少数派と認知したら話さないというもの。二つ目は、意見風土の「変化」が発言意図の「変化」を生むというものだ。

cross-sectionalな調査がメジャーなことが大問題だけど、パネル調査もないわけではない。本家ノエルノイマンもやっているけど、絶対的な意見のシェアの認知と発言意図を聞いていて、個人の変化を議論できない。Shamir(1997)もパネルでシェアと発言意図を比較しているけどやはり個人の変化については何も言えない。また、パネルに対して別個のレグレッションをするという研究もある(McDonald et al.2001)。しかしこれも理論の整合性は検証できるけど、個人の変化は議論できない(徹底的に個人の変化推しだ。。。)。いくつかは、各時点での従属変数(発言意図)の変化を取り扱っている(Shamir,1997)。しかし、独立変数の変化までは取り扱えていない。

ということで自分たちはLGMを使ってモデルを構築するよ。サンプルはイタリアのオンラインサーベイのパネル。争点は失業問題。失業対策は一般的に重要な話題だし、調査時点では失業問題が深刻だったので争点としてはふさわしい。従属変数としては「失業問題について以下の人たち(家族、友人・同僚)とどの程度話しますか?」という5ポイントスケール。多数派認知に関する独立変数は「失業対策に関する私の意見は私が周りで聞く意見と似ている」「私の住むところでは人々はほとんど私と同じ失業対策案を持っている」「イタリア国内のほとんどの人は失業対策の戦略を私と共有している」。これは他の研究でもつかう聞き方だ。(へー)。

主要な仮説

1.初期レベルで、集団内の個人に関心の差異がなければ螺旋はスタートしない(初期状態で関心にはばらつきがある)。
2.個人内に期間を通じた変化がなければ螺旋はおこらない
3.個人によって変化の程度は異なる
4.初期の意見分布認知と意見表明の強さは、変化の程度とネガティブな関係があるだろう(意見が強ければ変化しない)
5.初期の意見風土認知と意見表明は相関する

で、仮説はだいたい支持されている、と。要するに、意見風土認知が変化して(自分が多数派だと思って)どんどん発言するスパイラルがあるってことかな。ただ、このモデルだと周囲は自分と近いか、しか聞いてないように見えるので、世論がどっちに流れたのか(例えば公共政策v.s.自由競争みたいな)がわからないので、「沈黙」が螺旋したのか、「みんな大声でしゃべる」が螺旋したのかわからないような。

パネル調査でSoSTやってる論文集めないと。