2019年12月27日金曜日

年の瀬Pay it forward実験フェア パート3

去年の年末も締切近づくのになんもしてないしなんも思いつかないで尻がチリチリしてたようだ。そして今年もだ。やれやれ。

Gray, K., Ward, A. F., & Norton, M. I. (2014). Paying it forward: Generalized reciprocity and the limits of generosity. Journal of Experimental Psychology: General, 143(1), 247–254.

Pay it forwardは古くから偉い人が色んなところで素敵だっていってる。そうベンジャミン・フランクリンだってラルフ ウォルド エマーソン(だれ?)だって。そして心理学者だって(Bartlett & DeSteno,2006)、進化生物学者だって(Bshary & Grutter,2006)、ゲーム理論家だって(Nowak & Sigmund,2005)。そして圧倒的にポジティブな枠組みで研究されている。ていうかそもそも簡単に裏切りに侵入されちゃう概念だから遺伝的に近いとか閉じたグループとかが想定されてる。ということでまずは匿名状況でもpay it forwardがあるのかを検証するぞ。そんでさらには、どんな行動がpay it forwardされるのか(つまりは、良い連鎖・悪い連鎖どっちもあるのか)を検証する。具体的には独裁者ゲームをベースにした実験を5個おこないますよ。分配される資源が「不公平」「公平」「寛大」の3タイプ用意する。

さあ実験祭りを堪能するがよい。

実験1:お金のPay it forward

街中でリクルートした100人(まじっすか、がんばりますな)が対象。コントロール群は、独裁者ゲームの分配者側になるだけ。トリートメントは3タイプ。それぞれ最初にDGのレシーバーになって6$の資源を匿名分配者から受け取る。額は、0,3,6。そんで次に分配者になって匿名の次の人に分配する。さあいくら分配するのよ?

結果、きれいですよ。不公平 < コントロール群 < 平等 = 寛大

不公平分配されたらそれが伝播しますね。

実験2:手持ち資金をコントロール

ほとんど実験1と一緒なんだけど、最初にくじを引いてラッキーなら6$プレゼント、アンラッキーならプレゼントなし。その後、実験1と同様にまずはレシーバーになって不公平(=0$)か寛大(=6$)な分配を受ける。そして最後に次の人へ分配額を決定。

ラッキー・アンラッキーコンディションの主効果なし、分配される額の主効果あり、交互作用なし。

実験3:労働のPay it forward

今度はAMTを使います。経済ゲームじゃなくてタスクを課す。タスクを2種類用意します。GoodなタスクとBadなタスクだ。前者は面白動画の評価、後者は外国語の文章を読んで母音をチェックする。参加者は、Good2つ+Bad2つの計4タスクのうち2つをこなして次の人に残りを渡すことになる。さらに前の参加者から渡されたタスクもやらなくてはいけない。コントロールするのは、前の参加者から渡されるタスクの割合。4つのうち4つともBadという不公平、2つのGood・2つのBadという公平、4つともGoodという寛大の3つ。

さあ人々よ働きたまえ。

不公平分配のときだけ有意にGoodタスクを残すことが少ない。それ以外は差がない。

実験4a:

今度は感情測定をやる。方法は実験3と同様のタスク分割だ。不公平、公平、寛大のタスク分配を受けた後に、ポジティブ・ネガティブ・怒りの感情測定を行う。感情はちゃんと操作ごとに順当なほうに動いている。続いてGoodタスクを残す数を感情で説明する回帰分析をやる。ネガティブ感情だけが予測する、ポジと怒りは効果なし。ただし寛大な分配のときにはポジティブだけが有意。

実験4b:感情を事後操作するのは有効か

ネガティブ感情がpay it forwardに効くのであれば、この感情をフィルターすることで負のpay it forwardを減らせるのではなかろうか。ということで、タスク(不公平・寛大の2タイプ)を受け取った後に感情操作の文章(ニュートラル・ポジティブの2タイプ)を読んでから次の人にタスク分配をする。受け取るタスクの種類の主効果は有意、フィルターの主効果はなし、交互作用あり。不公平タスクを受け取った群で、フィルターによってGoodタスクを残す量が「ポジティブ操作>ニュートラル」となる。

4a,4bから考えるにネガティブ感情によって罰送り的なものが生じており、しかし感情の改善操作によって罰送りを軽減できる。


ということでアップストリーム互恵の実験は独裁者ゲームでやられてることが多いようだ。自分たちの実験設定は少し凝りすぎてる気がしてきたなあ。

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