2017年5月22日月曜日

貢献感と援助要請の関連に及ぼす互恵性規範の増幅効果

落ちた科研の評価はBだった。かすってもいない。ええ、ええ、どうせ新規性のない実行の能力もない社会にも貢献しない研究者です。

集団に対する貢献感と援助要請には正相関があり更には互恵性規範がその相関をブーストするという論文。

科学への貢献の低い私はお金の援助要請を抑制するのが道理だ、と。やさぐれながら読む。

橋本剛. (2015). 貢献感と援助要請の関連に及ぼす互恵性規範の増幅効果. 社会心理学研究, 31(1), 35–45.

利他行動の中でも援助行動に着目する。ヒトは援助要請がなくても他人を助けたりする利他行動をとることがある。それはおそらく他者の心理推測であろう(心の理論とか)。そのように援助者として被援助者の心理を推測できるなら逆もありうるでしょう。そして援助されることを望んでいるにも拘らず援助要請を抑制する「遠慮」はその表現形のひとつだ。ということで「人間はなぜ援助要請を抑制するのか」を分析するよ。(互恵性の研究だと思ったら援助行動のフレームだったか)

互恵的協力の理論から考えると相互援助が生じると考えられるし世の中にも普通に援助したりされたりは存在する。けれども援助要請の抑制(遠慮)が発生する理由にはいくつかの理由が考えられる。1.自尊心・問題の深刻さ・スティグマなどなど。2.要請コスト>被援助利益という大小関係。これには否定的回答による不利益や秘密漏洩などの様々な要因がありうる。しかしながら被援助者は援助者の利得も考慮するんじゃないか。つまり援助者にとって高コストな援助要請は心理的な負債をもたらすので援助要請が抑制される。

更には、そうした高コスト要請を繰り返してさらに相手に返報できなければ、間接互恵的に考えてもフリーライダーとみなされるリスクも高まる。逆に言えば返報可能であれば援助要請は促進されるはず。

ということで被援助者(援助要請者)の貢献感と援助要請傾向に正相関があることを検証しましょう。

当然互恵規範も考えなくてはいけないけど互恵規範を考えるときには注意が必要だ。つまり、互恵規範が高ければ常に援助するという正方向だけではなくて、互恵規範が高ければ返報のない援助はしない、援助されなければ援助しないという向きも考える必要がある。よって互恵規範が低ければ先の貢献間と援助要請傾向の相関は弱まるし互恵規範が高ければ正相関は強くなるだろう。

ということで仮説。

  1. 貢献間と援助要請傾向には正の相関がある
  2. この相関は互恵規範によって強化される

調査行きます。場面は職場の対人関係、調査会社のモニターを使ったweb調査。有効回答500。「貢献感」職場における自身の貢献度を主観で聞く。「互恵性規範」職場に存在する互恵性規範を聞く。自身のではなくて職場の雰囲気で聞いて集団の規範を推定させる。「援助要請意図」悩みを一人で解決できそうにないときにどの程度相談するか。

さて結果。まずは互恵性規範の因子構造が2つである。「職場では助けてもらったら返報が必要だ」という「返報必要」因子と「職場では貸し借りは気にしなくてよい」という「返報不要」因子が抽出された。複数の人で構成される組織なら相反する規範が併存するのは妥当であろう。(やっぱりこれだけシンプルな規範でも混在するのだから2次情報を使う間接互恵規範の共存は当然と考えられるか。よしよし。それにしてもこれだけ正反対の規範で2因子になるのか)

ではメインの結果行きましょう。仮説1の貢献間と援助要請意図の相関ですがバッチリでますr=.30(p<.001)。仮説2の互恵性規範によるブースト効果は、互恵性規範が2次元なので4つにわけて分析したら「返報必要が高く、返報不要が低い(つまり互恵性が超強い)」組で貢献間によるブーストが顕著にでていた。仮説2もオッケー。

将来的な展望としては文化差とか関係流動性とかを取り組みます。

んーとでも「返報必要低、返報不要高」という無礼講的組織で一番援助要請が高くなる気がするんだけど「必要高・不要高」で援助要請意図が一番上に来ている。これはなんでなんだろう。規範の混在についてはあまり深く突っ込んで議論してないからしょうがないか。

なるほど、互恵性規範の強い社会では貢献度が低いヒトは生きにくいと。いやあ確かにしみじみと身に沁みます。援助意図も併せて聞いて、貢献度の低いメンバーへの援助が互恵性で抑制されちゃったりするとなかなかのディストピアだ。それにしてもアップストリーム互恵を調べてるとどうしても援助行動・被援助行動のフレームのほうが見つかるなあ。あとやっぱり規範の混在は面白そうだ。どっから取り掛かるといいんだ。

2017年5月18日木曜日

直観と熟考を協力の進化に取り込む論文2つ

直観と熟考の認知モデルを進化ゲームに取り入れるというアプローチ。連続でPNASとProc. R. Soc. Bに載せるというすんごい人たち。溜息しかでない。共著者グループ内で当然知ってるという前提で議論が進んでるけど、まったく読んでなかったのでこっそり読む。こそこそ。

Bear, A., & Rand, D. G. (2016). Intuition, deliberation, and the evolution of cooperation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(4), 936-941.

「直観」と「熟考」の効果をジレンマに理論的に取り入れる。システム1、システム2の働きは近年とても注目されているし、協力の進化に与える影響も議論を呼んでいるところだ。伝統的な進化ゲーム理論では行動には着目してきたが認知のことはまだまだうまく取り入れられていない。ということで認知のデュアルシステム(直観と熟考)を取り入れたモデルを作ります。

ゲームはPDで確率pで繰り返しゲーム、1-pでワンショットゲームとなる。エージェントは自身の戦略としてT(直観モードか熟考モードかの閾値)を持つ。ランダムに与えられるコストdがTより小さければコストdを払って熟考モードとしてプレイするが、逆の場合はコストを払わず直観モードでプレイする。また、直観モードの時はどちらのゲームでもs_iの確率で協力する。熟考モードではワンショットゲームだったらs_1、繰り返しだったらs_rで協力する。

さて均衡戦略は何かというとIntuitive Defector(T=0:常にに直観モード、s_i=0:確実にD)は均衡となる。しかし何ということでしょうDual-process Cooperator(T=c(1-p)、s_i=1,s_1=0,s_r=1:直観モードで協力、熟考では繰り返しのときだけ協力)も均衡なんです。

Bear, A., Kagan, A., & Rand, D. G. (2017). Co-evolution of cooperation and cognition: the impact of imperfect deliberation and context-sensitive intuition. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 284(1851), 20162326.

そして立て続けに第二弾。さらには状況に不完全さを導入。ゲームも2タイプ(ジレンマ、コーディネーション)に拡張、それぞれのゲームでの協力率を戦略として持つ。

エージェントは直観モード閾値Tと、各状況での協力率4つを戦略として持つ。直観・ジレンマの時の協力率S_iD、直観・コーデS_iC、熟考・ジレンマS_dD、熟考・コーデS_dC。

まずは認知プロセスで前の論文と同じようにTで直観モードか熟考モードに分岐。続いて確率pでゲームの種類がわかれる。今度は繰り返しかどうかではなくて、ジレンマゲームかコーディネーションゲームに分かれる(pでコーディネーションゲーム)。続いて、直観モードの時にはy_iでゲームを正確に理解し、ジレンマならS_iD,コーデならS_iCの確率で協力する。一方1-y_iで使う確率が逆転してしまう。熟考モードでも同様(y_d)。y_i,y_dは環境パラメータ。

そうすると均衡戦略は4つになる。ID(T=0,S_i*=0), IC(T=0,S_i*=1), Dual-Cooperator(T>>0, S_i*=1, SdD=0, SdC=1), Dual-Attender(T>>0, S_iD=0,S_iC=1, SdD=0, SdC=1)。

まずはpを動かして均衡戦略を見てみる。y_i,y_dの組み合わせで均衡戦略の相が変わる。例えばy_d=1, y_i=0.5ではp<0.3でID、それ以外ではDCが均衡。一方ID,IC,ICの場合とか、ID,DA,DCの場合とかがある。でパラメータをいろいろ動かして相図を見てみます。

最後にまとめとして、deliberationの効果をみるとジレンマに対してはDCもDAも協力を減らす効果、一方コーディネーションについてはDAが協力を増やす効果。

詳細は読み飛ばしたけど認知の二つの仕組みをモデルに取り込むやり方としてはシンプルで格好いい。さすがだなぁ。直接バッティングはしないけど認知プロセスをモデルに取り込まなくちゃだめだよねという良い先行事例になりそう。

2017年5月15日月曜日

評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して

科研費の報告書作成があまりに面倒なので現実逃避気味に読む。今年落ちたから来年は報告書を書かなくていいという幸せ。幸せ?

最近めっきり間接互恵のシミュレーション&数理にはまっているので実験アプローチにもちゃんと目を通さなければ。

岩谷舟真, 村本由紀子, & 笠原伊織. (2016). 評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して. 社会心理学研究, 32(2), 104-114.

規範を「集団や社会でメンバーに対して期待されている行動についての規則」と定義しよう。また、自身のある行動が評判としてGoodと評価されるかBadと評価されるかを予測することを評判予測とする。Good/Badの2側面に分けて、かつ集団の関係流動性によって規範へのコミットを分析するよ。

関係流動性が高ければ新しいパートナーと関係を結ぶ機会が多いからポジティブな評判へのインセンティブが高く、逆に関係流動性が低ければ関係から排斥されるダメージが大きいためにネガティブ評判を避けるインセンティブが高いだろう。ということで、関係流動性が高い環境ではポジティブ評判の効果(利得)を高く予測するものほど規範にコミットするだろう。他方低流動な環境ではネガティブ評判の効果(損失)を高く評価するものほど規範にコミットするだろう。

題材としては地域活動(美化、防災、お祭り)への参加要因で検討する。もちろん自発的(個人特性)によっても規定されるだろうけど規範の影響もあるよね、というのをコミュニティへの参加要因の論文などから引きつつ若干エクスキューズ気味に展開。ここまで丁寧にやらんとダメなのかぁ。まあ地域コミュニティは社会的ジレンマ、イエスオッケーというのはごく一部のジレンマオタクだけか。

さて、今回は評判「予測」に着目するのだが予測は実際の評判の獲得を正しく推測しているのだろうか。そんなことはなかろう。つまり例えば低流動性社会で実際に評判が低下すると大きな損失になるので、評判の低下を過剰に見積もるだろう。逆に高流動性社会で評判の獲得ができないと大きな機会損失となるので、評判の向上を過剰に見積もるだろう。(や、やばい自分のネタが古びるまえに出さなくては)

つーことで仮説まとめます。

  1. 高流動性社会ではポジティブ評判の効果を高く見積もるなら規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  2. 低流動ではネガティブを高く見積もると規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  3. 高流動では規範遵守者を高く評価、低流動では規範逸脱を低く評価(Observerとしての評価戦略)
  4. Observerとしての評価の上昇・下降より、Donorとしての評判予測のほうが過剰

実験行きます。対象は墨田区。なぜなら今でも地域活動が盛んだから。まじか!でも確かに地域活動は盛んみたいだ。町会の活動が超しんどいという噂を聞いた。下町人情の闇・・・。選挙人名簿を使った二段階確率比例抽出で郵送でやります。有効回答は163で27.3%。ちなみに関係流動については主観的な評価を用いる(「地域の人たちは、人々と知り合いにな る機会がたくさんある)。個人特性は賞賛獲得欲求・否定的評価回避欲求を使う。あとは自身の行動による評判予測と、他者の行動への評価、そのたいくつかの統制変数。

メインの結果。地域活動への参加頻度を従属とする重回帰をやった結果、仮説1,2の評判の上昇(低下)予測×関係流動性の交互作用では、低下のほうだけ交互作用あり。低下予測と流動性の交互作用では、高流動群で低下予測と参加頻度に関係はないが、低流動群では低下予測が大きいほど参加頻度が高い。つまりは仮説2はOK!ただし仮説1(上昇予測と流動性)の交互作用はダメ。続いて、自身の評価戦略が評判予測と関係しているかを見ます。まずポジティブに評価するかどうかは、流動性やその他の変数とは関係なかった。逆に、ネガティブに評価するかどうかは低流動であるほど、居住期間が長いほど逸脱者への評価を下げる。仮説3は一部OK。更に続いて過剰評価について。(ドキドキするなあ)自身の逸脱で評価が下がる程度(評判予測)は他者の逸脱で評価を下げる程度(自身の評価戦略)より大きい。つまり過剰予測。逆に、自身の遵守で上がる評判予測は、自身の評価戦略より小さい。つまり過小予測。(おお一致する)

まとめると低流動におけるネガティブ評判は大きく評価されるが、高流動におけるポジティブ評判はそうでもなかった。


いやあなるほど。これは1次情報をどう扱うかを自身の評価に対する予測と他者への評価で分析しているけど、2次情報まで使う規範の実験アプローチはまだまだいけそうだ。そもそも2次情報の扱い方をちゃんと分析した実験アプローチはどの程度あるんだろう。

2015年11月21日土曜日

違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響

なんと入試監督の集合時間を2時間も勘違いしていた。いやー焦った。実害が(ほぼ)なくてほんと助かった。以前には学長選挙ぶっちして相当おこられたので、いよいよやばい気もしてきた。

著者たちは去年ゼミ生が追試した油尾(2012)の指導教員なのかな。それの出発点になってそうな論文をよむ。

追試は儚い結果になったけど。再現しない追試ばかりやってる人生でした。

北折充隆, & 吉田俊和. (2000). 違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響 -大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験:大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験. 実験社会心理学研究, 40(1), 28–37.

社会規範からの逸脱を抑止するメッセージについてメッセージの内容、実際の逸脱状態の2つをコントロールして実験する。某国立N大学をフィールドにするよ。

Cialdini et.al.(1990)は渡されたチラシのメッセージによってその後のポイ捨ての率が変わったことを示している。心理的リアクタンス(Brehm,1966)によると(うわ、そんなのがあるんだ)、違反抑止の文脈だと「○○禁止」よりも「○○厳禁、○○するな」のように強く命令的に禁止するほうが違反が多くなると考えられる。

えーと、どれが電圧でどれが電流に該当するんだ。電圧がメッセージの強さで電流が、ちょっとわからんや。こういう心理的○○とか社会的○○、みたいに○○に科学用語をいれて比喩的にアイデアを売り出すのってどうなんだろうね。社会的ワクチン、とか。

とにかく、メッセージの強さ(強い命令)は逆効果だろうと。更には制裁の提示が協力率を上げることは箕浦(1987)たちの研究でも知られている。一方で、Cialdini(1990)はあらかじめポイ捨てされているチラシの量が非協力(ポイ捨て)を促進すると言っている。メッセージ×状況で研究します。

(1)駐輪禁止(2)ここに自転車 ・バイクを止めるな。(3)指定の駐輪場を利用 して下さい。放置自転車は処分します。(4)授業の妨げとなるのでバイクの侵入禁止。(5)一人が止めると後も続きます。ここに 自転車 ・バイクを止めないで下さい。という5つのメッセージを用意する。それぞれ、普通、命令、制裁、理由、同調抑止を提示している。

【実験1】上記5つメッセージを取り換えながら何日も物陰から観察実験する。条件としては対象の空間を常に実験者が整理して違反自転車がない状態とする。結果は、ほとんど違反はなかった(トータルで1台だけ)。これは違反ゼロをつくったということが強くきいているだろう。

【実験2】同じメッセージを使うが、状況としてあらかじめ1,2台が置かれている状況を維持して実験する。結果は、制裁メッセージが他の4種類に対して違反率が低い(協力率が高い)となった。

【実験3】同じメッセージ。状況は常に5台が違反自転車となる(実験者が5台用意して、誰かが違反をするたびに実験者の自転車を一台撤去して常に5台にする)。実験者の自転車がなくなった段階で1セッション終了。結果は、メッセージ間の効果の差はなくなった。非協力率を実験2,3間で比較してないのかな。

結論として、制裁の提示が逸脱者が少数の時にのみ特別な効果を持った。制裁の提示は状況依存的であり多数の逸脱者がいる状況では効果が薄れる。

なるほどなぁ。この実験では1台のみの違反駐輪というのは制裁が実施されうることを示してるからうまくいってるのだろうか。ジレンマ実験でサンクションがあればパニッシュはちょっとで大丈夫というのがあるが、実はその結果から読み取るべきメッセージは、大事なのはサンクションが実施されるということを参加者が認識していることなんじゃないかと、この論文を読んでて思った。ということは、ジレンマにおける協調では「裏切りがあること」がばれても構わないけど「裏切りが罰せられないこと」がばれるのが一番まずいと。つまりは2次サンクション+社会的ワクチンが素晴らしいアイデアだと。。。「サンクションが実施されているかどうか」というシグナルが大事っていうアイデアどっかで使えないかな。

2015年11月20日金曜日

行為者の視点を含んだ社会的ジレンマの検討

日々に追われて早くも師走がすぐそこだ。書かなくちゃいけない論文も準備しなくちゃいけない資料も山盛りだけど現実逃避ぽく読む。

環境問題等を社会的ジレンマでフレームする研究は多いけど、行為者自身がジレンマとして認識してるのかどうかによって全然話が変わってくるだろうという主張。面白そう。

篠木幹子. (2014). 行為者の視点を含んだ社会的ジレンマの検討. 総合政策研究, 22, 45–56.

環境問題は社会的ジレンマだとフレームして研究する論文はたくさんあるけどそれって研究者がそう理解しているだけで、行為者はそもそも問題をジレンマ状況と認識しているのかどうか怪しい。つまりは、実社会の(ジレンマ問題として定義できる)問題を行為者(当事者)は社会的ジレンマと認識しているのか、またそのうえで協力/非協力を取る人の特徴はなんだ。

山岸他(2002)では実験室環境で実験すると参加者はDCよりもCCを好むゲームとして認識していたと言っているし、Pellikaan(2002)でも面接調査で社会的ジレンマの状況を説明したうえで、TRPSのどの状態を好むか聞くと、R>S>T>PとかR>T>S>Pとかを参加者は好んでいた。これらの研究は山岸他(2002)ではジレンマ構造を備えた実験状況に対して参加者がどのように認知したかを問うており、Pellikaan(2002)はジレンマを了解したうえで協力/非協力のどれを好むかを問うている。海野(2006)は「コスト感」「危機感」「無効感」を対象者が持っているかどうかでごみ問題を社会的ジレンマととらえているかどうかを推定している。これは先駆的であるが、うちらは行為者が「環境問題が社会的ジレンマである」と了解しているのかどうかを問うたうえで、その了解によって行動が異なるのか、また了解の上で協力/非協力となる人たちをあぶりだす。

ごみ問題を対象としてごみの減量行動を問うよ。ごみ分別の制度の違い、都市規模の違いを考えて、仙台、釜石、名古屋、水俣で実施します。1都市1000人で4都市に質問紙調査を実施する(すげー)。郵送して回収は調査者が回収に行く(ひえー)。回答者は家事担当者にしたので85%以上が女性である。

さて、最大の山場である「行為者がごみ問題を社会的ジレンマとして「仮説的に」了解しているのかどうか」の検討である。「ごみ問題が生じるのは,地域社会全体への影響を考 えず自分の都合を優先してごみを捨てる人が多 い」と思うかどうかを聞いてその回答がイエスの人を社会的ジレンマと了解している人たちとする。4都市すべてで90%以上の人たちがイエスであり、多くの人たちにジレンマと了解されていると解釈できる。

いやー、難しいクエスチョンだとは思うんだけど、これは厳しくないかなぁ。今後の課題でもこの点には触れられているけど、この研究のコアだよなぁ。そして9:1のサンプルでこの後分析してくのか。うむ。

さて、協力行動の量については9項目の行動ではかる。すなわち「アルミ缶の分別」「トレー包装野菜の不買」などなど。これが6項目以上イエスだと行動多い群、5項目以下で少ない群にわける。

これも結構微妙かな。節約に関する項目や制度で決められてる分別なんかが一緒に入っている。まあごみ減量行動をどの程度実施しているのかという指標にはなっているのでいいのか。

ということで、社会的ジレンマの認知(Y/N)、行動の多少で4カテゴリになる。これらの人たちが「社会に対する価値観」「規範意識」をどのように持っているかを検討する。

「多くの人は自分のことしか考えていない」については、SD認知+非協力の人たちが高い。
「一人ひとりが社会全体に対する影響を 考慮して行動すべきだ」については、SD認知+協力が高い。
「手間がかかるとしても環境に配慮すべき」 「他者の行動にかかわらず環境に配慮すべき」についてはSD認知+協力が高い。

細かいことだけど、これ一元配置でやっちゃってるけど二要因でやらなくちゃいけないはずだよね。

結論として、社会的ジレンマを認知し協力する人たちは、社会的ジレンマ解決に向けた規範に強くコミットしているので、こうしたところにジレンマ解決の糸口があるのではないか。

リサーチクエスチョン面白いなあ。状況を社会的ジレンマとしてフレームしてるかどうかを含めて分析しなくちゃだめというのは強いメッセージだ。ソーシャルメディア(CGM)のモデル化でもこの視点あったほうがいいだろう。そもそも実験環境ですら山岸他(2002)みたいにジレンマじゃないと認識しているのだし、当事者が状況をどう認識しているかでサンクション制度だって変えていかないと意味ないよな。面白い課題設定で大規模調査やっててすげぇなぁ。勉強になった。

2015年7月7日火曜日

Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback

ちょっと古いけど評判システムの話が積読フォルダに入っていたのを掘り出す。そういえば協力の進化を始めたのはそもそも評判システムをモデル化してる流れだったんだよな。なつかしい。ノスタルジックな気分半分と最近抽象的なモデルばっかりな反省を込めて読む。

Brown, J., & Morgan, J. (2006). Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback. California Management Review, 49(1), 61-81.

Abst.
オンラインマーケットの発展ぶりといったらない。地理的な制約・様々な物理的コストの大幅な削減でバイヤー・セラーの両者に「デモクラシー」をもたらした。しかしその流動性ゆえに、匿名性、取引相手の信頼性という新しいチャレンジが生じている。信頼の問題はキーポイントであり、eBayなどは評判システムによってLock-inが生じてAmazonやYahooの挑戦を退けている。さて問題は、eBayにおいて“market for feedback”が発生することだ。それは評判を加工するためのフィードバックの売買である。問題の所在をケーススタディで明らかにして、eBayが将来のためになすべきことを提案しましょう。

イントロの前半ではインターネットの発展で参入退出容易なオンラインマーケットが発展して、とくにeBayは大成功。その要因として評判システムが超重要、というお話。散々講義で話したので個人的には飽きた。

そこで問題となるのは、悪いセラーは相対的に小さなコストで評判を蓄積できるので最後に一発でかいとりひきで詐欺を働けば十分儲かってしまう。これは評判システムのアキレス腱だ。これをeBayを対象としたケーススタディで明らかにしようではないか。

評判は本当に価値があるのか?古銭の取引ではポジティブな評判は効果を持っていなかったが、ネガティブな評判は価格を引き下げていた。エレキギターでも同様のパターンがあった。関係なし、という結果もある(この辺ぜんぶワーキングペーパーを引用してる)。その他いろいろ引用するに、まあ評判には経済価値があるのでしょう、と。

しかし問題はここですよ奥さん。50セントでゴールデンゲートブリッジのデジカメ写真が売られたら買うか?と。買うんです。なぜならポジティブフィードバックを得るために。評判を高めるために。ここでA氏というケースに着目。A氏はeBayでポジティブフィードバックを得る(安い意味のない商品を買ってもらい、最高評価を返す)ことを派手にやったユーザ。このあとA氏の悪行が連なるけど、面倒なのでスキップ。

さあ、データ収集して統計的に分析する(やっとだ)。feedback marketで良く使われるキーワードを精査して6526のリスト(526のユニークユーザ)を抽出した。そのうち5127は結果的に販売されていた。そして80%以上の商品は「Buy-it-nowオプション」使っている。つまりオークションせずに固定価格で売っている。しかも売買価格は驚くほど安くて誰も得していない。ポイントは、取引自体ではなくて評判ポイントをお互いに得られていることだ。利得のヒストグラムをプロットしてみても、多くの取引で手数料の方が高いくらいの安い価格が設定されるので売り手は損をしている。まとめると、eBayの評判システムにはこのような評判の結託の脆弱性があるぞ、と。これを克服するには、例えば取引価格で重みづけした評判ポイントを導入することなどが考えられるけど、既存顧客のロイヤリティをそこなうリスクもある。

んー、まあ、はい。そういえば評判インフレのモデルを作って発表したまま放置ってのがあったなぁ。この論文もそうだけど、そのときのつっこみは「そうはいってもほとんどの取引はうまく言ってるからシステムとしては頑健なんじゃないのか」というもの。評判システムの脆弱性は面白いけど若干重箱の隅をつついてる感がぬぐえない。

ただ評判システムのコストを無視した間接互恵モデルにも限界はあるだろうから、やれることは残ってるでしょう。いやそれにしても懐かしいネタだった。この論文も10年近く前のものだし、現時点では評判システム研究はどんな感じなんだろう。

2015年6月30日火曜日

Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence.

気付いたら今年が半分終わるという恐怖。

持ってるデータを早く論文化しなくてはいけないので積んである関連論文を読む。

Matthes, J. (2015). Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence. International Journal of Public Opinion Research, 27(2), 155–176. doi:10.1093/ijpor/edu032

Abst.
SoSTでもっとも大事なのは時間の概念だろう。多数派がますます多数派になるというダイナミクスが肝なんだから。しかしほとんどの研究はダイナミクスを扱ってない。自分たちが3波のパネル調査でこれを明らかにしましょう。

SoSTはむっちゃたくさん研究されている。しかし、ほとんどがcross-sectionalではないか。一部パネルを使った研究もあるが、ダイナミクスをモデル化しているとは言えない。これは理論の言うところから考えると驚きの大事な部分の無視っぷりと言えよう。意見風土と意見表明の関係については、二つの予測が存在している。一つは、意見風土と意見発信の関係で、これは多数派と認知したら話すし、少数派と認知したら話さないというもの。二つ目は、意見風土の「変化」が発言意図の「変化」を生むというものだ。

cross-sectionalな調査がメジャーなことが大問題だけど、パネル調査もないわけではない。本家ノエルノイマンもやっているけど、絶対的な意見のシェアの認知と発言意図を聞いていて、個人の変化を議論できない。Shamir(1997)もパネルでシェアと発言意図を比較しているけどやはり個人の変化については何も言えない。また、パネルに対して別個のレグレッションをするという研究もある(McDonald et al.2001)。しかしこれも理論の整合性は検証できるけど、個人の変化は議論できない(徹底的に個人の変化推しだ。。。)。いくつかは、各時点での従属変数(発言意図)の変化を取り扱っている(Shamir,1997)。しかし、独立変数の変化までは取り扱えていない。

ということで自分たちはLGMを使ってモデルを構築するよ。サンプルはイタリアのオンラインサーベイのパネル。争点は失業問題。失業対策は一般的に重要な話題だし、調査時点では失業問題が深刻だったので争点としてはふさわしい。従属変数としては「失業問題について以下の人たち(家族、友人・同僚)とどの程度話しますか?」という5ポイントスケール。多数派認知に関する独立変数は「失業対策に関する私の意見は私が周りで聞く意見と似ている」「私の住むところでは人々はほとんど私と同じ失業対策案を持っている」「イタリア国内のほとんどの人は失業対策の戦略を私と共有している」。これは他の研究でもつかう聞き方だ。(へー)。

主要な仮説

1.初期レベルで、集団内の個人に関心の差異がなければ螺旋はスタートしない(初期状態で関心にはばらつきがある)。
2.個人内に期間を通じた変化がなければ螺旋はおこらない
3.個人によって変化の程度は異なる
4.初期の意見分布認知と意見表明の強さは、変化の程度とネガティブな関係があるだろう(意見が強ければ変化しない)
5.初期の意見風土認知と意見表明は相関する

で、仮説はだいたい支持されている、と。要するに、意見風土認知が変化して(自分が多数派だと思って)どんどん発言するスパイラルがあるってことかな。ただ、このモデルだと周囲は自分と近いか、しか聞いてないように見えるので、世論がどっちに流れたのか(例えば公共政策v.s.自由競争みたいな)がわからないので、「沈黙」が螺旋したのか、「みんな大声でしゃべる」が螺旋したのかわからないような。

パネル調査でSoSTやってる論文集めないと。