2017年5月15日月曜日

評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して

科研費の報告書作成があまりに面倒なので現実逃避気味に読む。今年落ちたから来年は報告書を書かなくていいという幸せ。幸せ?

最近めっきり間接互恵のシミュレーション&数理にはまっているので実験アプローチにもちゃんと目を通さなければ。

岩谷舟真, 村本由紀子, & 笠原伊織. (2016). 評判予測と規範遵守行動の関係:関係流動性に着目して. 社会心理学研究, 32(2), 104-114.

規範を「集団や社会でメンバーに対して期待されている行動についての規則」と定義しよう。また、自身のある行動が評判としてGoodと評価されるかBadと評価されるかを予測することを評判予測とする。Good/Badの2側面に分けて、かつ集団の関係流動性によって規範へのコミットを分析するよ。

関係流動性が高ければ新しいパートナーと関係を結ぶ機会が多いからポジティブな評判へのインセンティブが高く、逆に関係流動性が低ければ関係から排斥されるダメージが大きいためにネガティブ評判を避けるインセンティブが高いだろう。ということで、関係流動性が高い環境ではポジティブ評判の効果(利得)を高く予測するものほど規範にコミットするだろう。他方低流動な環境ではネガティブ評判の効果(損失)を高く評価するものほど規範にコミットするだろう。

題材としては地域活動(美化、防災、お祭り)への参加要因で検討する。もちろん自発的(個人特性)によっても規定されるだろうけど規範の影響もあるよね、というのをコミュニティへの参加要因の論文などから引きつつ若干エクスキューズ気味に展開。ここまで丁寧にやらんとダメなのかぁ。まあ地域コミュニティは社会的ジレンマ、イエスオッケーというのはごく一部のジレンマオタクだけか。

さて、今回は評判「予測」に着目するのだが予測は実際の評判の獲得を正しく推測しているのだろうか。そんなことはなかろう。つまり例えば低流動性社会で実際に評判が低下すると大きな損失になるので、評判の低下を過剰に見積もるだろう。逆に高流動性社会で評判の獲得ができないと大きな機会損失となるので、評判の向上を過剰に見積もるだろう。(や、やばい自分のネタが古びるまえに出さなくては)

つーことで仮説まとめます。

  1. 高流動性社会ではポジティブ評判の効果を高く見積もるなら規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  2. 低流動ではネガティブを高く見積もると規範遵守(自身がDonorの時の評判予測)
  3. 高流動では規範遵守者を高く評価、低流動では規範逸脱を低く評価(Observerとしての評価戦略)
  4. Observerとしての評価の上昇・下降より、Donorとしての評判予測のほうが過剰

実験行きます。対象は墨田区。なぜなら今でも地域活動が盛んだから。まじか!でも確かに地域活動は盛んみたいだ。町会の活動が超しんどいという噂を聞いた。下町人情の闇・・・。選挙人名簿を使った二段階確率比例抽出で郵送でやります。有効回答は163で27.3%。ちなみに関係流動については主観的な評価を用いる(「地域の人たちは、人々と知り合いにな る機会がたくさんある)。個人特性は賞賛獲得欲求・否定的評価回避欲求を使う。あとは自身の行動による評判予測と、他者の行動への評価、そのたいくつかの統制変数。

メインの結果。地域活動への参加頻度を従属とする重回帰をやった結果、仮説1,2の評判の上昇(低下)予測×関係流動性の交互作用では、低下のほうだけ交互作用あり。低下予測と流動性の交互作用では、高流動群で低下予測と参加頻度に関係はないが、低流動群では低下予測が大きいほど参加頻度が高い。つまりは仮説2はOK!ただし仮説1(上昇予測と流動性)の交互作用はダメ。続いて、自身の評価戦略が評判予測と関係しているかを見ます。まずポジティブに評価するかどうかは、流動性やその他の変数とは関係なかった。逆に、ネガティブに評価するかどうかは低流動であるほど、居住期間が長いほど逸脱者への評価を下げる。仮説3は一部OK。更に続いて過剰評価について。(ドキドキするなあ)自身の逸脱で評価が下がる程度(評判予測)は他者の逸脱で評価を下げる程度(自身の評価戦略)より大きい。つまり過剰予測。逆に、自身の遵守で上がる評判予測は、自身の評価戦略より小さい。つまり過小予測。(おお一致する)

まとめると低流動におけるネガティブ評判は大きく評価されるが、高流動におけるポジティブ評判はそうでもなかった。


いやあなるほど。これは1次情報をどう扱うかを自身の評価に対する予測と他者への評価で分析しているけど、2次情報まで使う規範の実験アプローチはまだまだいけそうだ。そもそも2次情報の扱い方をちゃんと分析した実験アプローチはどの程度あるんだろう。

2015年11月21日土曜日

違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響

なんと入試監督の集合時間を2時間も勘違いしていた。いやー焦った。実害が(ほぼ)なくてほんと助かった。以前には学長選挙ぶっちして相当おこられたので、いよいよやばい気もしてきた。

著者たちは去年ゼミ生が追試した油尾(2012)の指導教員なのかな。それの出発点になってそうな論文をよむ。

追試は儚い結果になったけど。再現しない追試ばかりやってる人生でした。

北折充隆, & 吉田俊和. (2000). 違反抑止メッセージが社会規範からの逸脱行動に及ぼす影響 -大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験:大学構内の駐輪違反に関するフィールド実験. 実験社会心理学研究, 40(1), 28–37.

社会規範からの逸脱を抑止するメッセージについてメッセージの内容、実際の逸脱状態の2つをコントロールして実験する。某国立N大学をフィールドにするよ。

Cialdini et.al.(1990)は渡されたチラシのメッセージによってその後のポイ捨ての率が変わったことを示している。心理的リアクタンス(Brehm,1966)によると(うわ、そんなのがあるんだ)、違反抑止の文脈だと「○○禁止」よりも「○○厳禁、○○するな」のように強く命令的に禁止するほうが違反が多くなると考えられる。

えーと、どれが電圧でどれが電流に該当するんだ。電圧がメッセージの強さで電流が、ちょっとわからんや。こういう心理的○○とか社会的○○、みたいに○○に科学用語をいれて比喩的にアイデアを売り出すのってどうなんだろうね。社会的ワクチン、とか。

とにかく、メッセージの強さ(強い命令)は逆効果だろうと。更には制裁の提示が協力率を上げることは箕浦(1987)たちの研究でも知られている。一方で、Cialdini(1990)はあらかじめポイ捨てされているチラシの量が非協力(ポイ捨て)を促進すると言っている。メッセージ×状況で研究します。

(1)駐輪禁止(2)ここに自転車 ・バイクを止めるな。(3)指定の駐輪場を利用 して下さい。放置自転車は処分します。(4)授業の妨げとなるのでバイクの侵入禁止。(5)一人が止めると後も続きます。ここに 自転車 ・バイクを止めないで下さい。という5つのメッセージを用意する。それぞれ、普通、命令、制裁、理由、同調抑止を提示している。

【実験1】上記5つメッセージを取り換えながら何日も物陰から観察実験する。条件としては対象の空間を常に実験者が整理して違反自転車がない状態とする。結果は、ほとんど違反はなかった(トータルで1台だけ)。これは違反ゼロをつくったということが強くきいているだろう。

【実験2】同じメッセージを使うが、状況としてあらかじめ1,2台が置かれている状況を維持して実験する。結果は、制裁メッセージが他の4種類に対して違反率が低い(協力率が高い)となった。

【実験3】同じメッセージ。状況は常に5台が違反自転車となる(実験者が5台用意して、誰かが違反をするたびに実験者の自転車を一台撤去して常に5台にする)。実験者の自転車がなくなった段階で1セッション終了。結果は、メッセージ間の効果の差はなくなった。非協力率を実験2,3間で比較してないのかな。

結論として、制裁の提示が逸脱者が少数の時にのみ特別な効果を持った。制裁の提示は状況依存的であり多数の逸脱者がいる状況では効果が薄れる。

なるほどなぁ。この実験では1台のみの違反駐輪というのは制裁が実施されうることを示してるからうまくいってるのだろうか。ジレンマ実験でサンクションがあればパニッシュはちょっとで大丈夫というのがあるが、実はその結果から読み取るべきメッセージは、大事なのはサンクションが実施されるということを参加者が認識していることなんじゃないかと、この論文を読んでて思った。ということは、ジレンマにおける協調では「裏切りがあること」がばれても構わないけど「裏切りが罰せられないこと」がばれるのが一番まずいと。つまりは2次サンクション+社会的ワクチンが素晴らしいアイデアだと。。。「サンクションが実施されているかどうか」というシグナルが大事っていうアイデアどっかで使えないかな。

2015年11月20日金曜日

行為者の視点を含んだ社会的ジレンマの検討

日々に追われて早くも師走がすぐそこだ。書かなくちゃいけない論文も準備しなくちゃいけない資料も山盛りだけど現実逃避ぽく読む。

環境問題等を社会的ジレンマでフレームする研究は多いけど、行為者自身がジレンマとして認識してるのかどうかによって全然話が変わってくるだろうという主張。面白そう。

篠木幹子. (2014). 行為者の視点を含んだ社会的ジレンマの検討. 総合政策研究, 22, 45–56.

環境問題は社会的ジレンマだとフレームして研究する論文はたくさんあるけどそれって研究者がそう理解しているだけで、行為者はそもそも問題をジレンマ状況と認識しているのかどうか怪しい。つまりは、実社会の(ジレンマ問題として定義できる)問題を行為者(当事者)は社会的ジレンマと認識しているのか、またそのうえで協力/非協力を取る人の特徴はなんだ。

山岸他(2002)では実験室環境で実験すると参加者はDCよりもCCを好むゲームとして認識していたと言っているし、Pellikaan(2002)でも面接調査で社会的ジレンマの状況を説明したうえで、TRPSのどの状態を好むか聞くと、R>S>T>PとかR>T>S>Pとかを参加者は好んでいた。これらの研究は山岸他(2002)ではジレンマ構造を備えた実験状況に対して参加者がどのように認知したかを問うており、Pellikaan(2002)はジレンマを了解したうえで協力/非協力のどれを好むかを問うている。海野(2006)は「コスト感」「危機感」「無効感」を対象者が持っているかどうかでごみ問題を社会的ジレンマととらえているかどうかを推定している。これは先駆的であるが、うちらは行為者が「環境問題が社会的ジレンマである」と了解しているのかどうかを問うたうえで、その了解によって行動が異なるのか、また了解の上で協力/非協力となる人たちをあぶりだす。

ごみ問題を対象としてごみの減量行動を問うよ。ごみ分別の制度の違い、都市規模の違いを考えて、仙台、釜石、名古屋、水俣で実施します。1都市1000人で4都市に質問紙調査を実施する(すげー)。郵送して回収は調査者が回収に行く(ひえー)。回答者は家事担当者にしたので85%以上が女性である。

さて、最大の山場である「行為者がごみ問題を社会的ジレンマとして「仮説的に」了解しているのかどうか」の検討である。「ごみ問題が生じるのは,地域社会全体への影響を考 えず自分の都合を優先してごみを捨てる人が多 い」と思うかどうかを聞いてその回答がイエスの人を社会的ジレンマと了解している人たちとする。4都市すべてで90%以上の人たちがイエスであり、多くの人たちにジレンマと了解されていると解釈できる。

いやー、難しいクエスチョンだとは思うんだけど、これは厳しくないかなぁ。今後の課題でもこの点には触れられているけど、この研究のコアだよなぁ。そして9:1のサンプルでこの後分析してくのか。うむ。

さて、協力行動の量については9項目の行動ではかる。すなわち「アルミ缶の分別」「トレー包装野菜の不買」などなど。これが6項目以上イエスだと行動多い群、5項目以下で少ない群にわける。

これも結構微妙かな。節約に関する項目や制度で決められてる分別なんかが一緒に入っている。まあごみ減量行動をどの程度実施しているのかという指標にはなっているのでいいのか。

ということで、社会的ジレンマの認知(Y/N)、行動の多少で4カテゴリになる。これらの人たちが「社会に対する価値観」「規範意識」をどのように持っているかを検討する。

「多くの人は自分のことしか考えていない」については、SD認知+非協力の人たちが高い。
「一人ひとりが社会全体に対する影響を 考慮して行動すべきだ」については、SD認知+協力が高い。
「手間がかかるとしても環境に配慮すべき」 「他者の行動にかかわらず環境に配慮すべき」についてはSD認知+協力が高い。

細かいことだけど、これ一元配置でやっちゃってるけど二要因でやらなくちゃいけないはずだよね。

結論として、社会的ジレンマを認知し協力する人たちは、社会的ジレンマ解決に向けた規範に強くコミットしているので、こうしたところにジレンマ解決の糸口があるのではないか。

リサーチクエスチョン面白いなあ。状況を社会的ジレンマとしてフレームしてるかどうかを含めて分析しなくちゃだめというのは強いメッセージだ。ソーシャルメディア(CGM)のモデル化でもこの視点あったほうがいいだろう。そもそも実験環境ですら山岸他(2002)みたいにジレンマじゃないと認識しているのだし、当事者が状況をどう認識しているかでサンクション制度だって変えていかないと意味ないよな。面白い課題設定で大規模調査やっててすげぇなぁ。勉強になった。

2015年7月7日火曜日

Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback

ちょっと古いけど評判システムの話が積読フォルダに入っていたのを掘り出す。そういえば協力の進化を始めたのはそもそも評判システムをモデル化してる流れだったんだよな。なつかしい。ノスタルジックな気分半分と最近抽象的なモデルばっかりな反省を込めて読む。

Brown, J., & Morgan, J. (2006). Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback. California Management Review, 49(1), 61-81.

Abst.
オンラインマーケットの発展ぶりといったらない。地理的な制約・様々な物理的コストの大幅な削減でバイヤー・セラーの両者に「デモクラシー」をもたらした。しかしその流動性ゆえに、匿名性、取引相手の信頼性という新しいチャレンジが生じている。信頼の問題はキーポイントであり、eBayなどは評判システムによってLock-inが生じてAmazonやYahooの挑戦を退けている。さて問題は、eBayにおいて“market for feedback”が発生することだ。それは評判を加工するためのフィードバックの売買である。問題の所在をケーススタディで明らかにして、eBayが将来のためになすべきことを提案しましょう。

イントロの前半ではインターネットの発展で参入退出容易なオンラインマーケットが発展して、とくにeBayは大成功。その要因として評判システムが超重要、というお話。散々講義で話したので個人的には飽きた。

そこで問題となるのは、悪いセラーは相対的に小さなコストで評判を蓄積できるので最後に一発でかいとりひきで詐欺を働けば十分儲かってしまう。これは評判システムのアキレス腱だ。これをeBayを対象としたケーススタディで明らかにしようではないか。

評判は本当に価値があるのか?古銭の取引ではポジティブな評判は効果を持っていなかったが、ネガティブな評判は価格を引き下げていた。エレキギターでも同様のパターンがあった。関係なし、という結果もある(この辺ぜんぶワーキングペーパーを引用してる)。その他いろいろ引用するに、まあ評判には経済価値があるのでしょう、と。

しかし問題はここですよ奥さん。50セントでゴールデンゲートブリッジのデジカメ写真が売られたら買うか?と。買うんです。なぜならポジティブフィードバックを得るために。評判を高めるために。ここでA氏というケースに着目。A氏はeBayでポジティブフィードバックを得る(安い意味のない商品を買ってもらい、最高評価を返す)ことを派手にやったユーザ。このあとA氏の悪行が連なるけど、面倒なのでスキップ。

さあ、データ収集して統計的に分析する(やっとだ)。feedback marketで良く使われるキーワードを精査して6526のリスト(526のユニークユーザ)を抽出した。そのうち5127は結果的に販売されていた。そして80%以上の商品は「Buy-it-nowオプション」使っている。つまりオークションせずに固定価格で売っている。しかも売買価格は驚くほど安くて誰も得していない。ポイントは、取引自体ではなくて評判ポイントをお互いに得られていることだ。利得のヒストグラムをプロットしてみても、多くの取引で手数料の方が高いくらいの安い価格が設定されるので売り手は損をしている。まとめると、eBayの評判システムにはこのような評判の結託の脆弱性があるぞ、と。これを克服するには、例えば取引価格で重みづけした評判ポイントを導入することなどが考えられるけど、既存顧客のロイヤリティをそこなうリスクもある。

んー、まあ、はい。そういえば評判インフレのモデルを作って発表したまま放置ってのがあったなぁ。この論文もそうだけど、そのときのつっこみは「そうはいってもほとんどの取引はうまく言ってるからシステムとしては頑健なんじゃないのか」というもの。評判システムの脆弱性は面白いけど若干重箱の隅をつついてる感がぬぐえない。

ただ評判システムのコストを無視した間接互恵モデルにも限界はあるだろうから、やれることは残ってるでしょう。いやそれにしても懐かしいネタだった。この論文も10年近く前のものだし、現時点では評判システム研究はどんな感じなんだろう。

2015年6月30日火曜日

Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence.

気付いたら今年が半分終わるという恐怖。

持ってるデータを早く論文化しなくてはいけないので積んである関連論文を読む。

Matthes, J. (2015). Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence. International Journal of Public Opinion Research, 27(2), 155–176. doi:10.1093/ijpor/edu032

Abst.
SoSTでもっとも大事なのは時間の概念だろう。多数派がますます多数派になるというダイナミクスが肝なんだから。しかしほとんどの研究はダイナミクスを扱ってない。自分たちが3波のパネル調査でこれを明らかにしましょう。

SoSTはむっちゃたくさん研究されている。しかし、ほとんどがcross-sectionalではないか。一部パネルを使った研究もあるが、ダイナミクスをモデル化しているとは言えない。これは理論の言うところから考えると驚きの大事な部分の無視っぷりと言えよう。意見風土と意見表明の関係については、二つの予測が存在している。一つは、意見風土と意見発信の関係で、これは多数派と認知したら話すし、少数派と認知したら話さないというもの。二つ目は、意見風土の「変化」が発言意図の「変化」を生むというものだ。

cross-sectionalな調査がメジャーなことが大問題だけど、パネル調査もないわけではない。本家ノエルノイマンもやっているけど、絶対的な意見のシェアの認知と発言意図を聞いていて、個人の変化を議論できない。Shamir(1997)もパネルでシェアと発言意図を比較しているけどやはり個人の変化については何も言えない。また、パネルに対して別個のレグレッションをするという研究もある(McDonald et al.2001)。しかしこれも理論の整合性は検証できるけど、個人の変化は議論できない(徹底的に個人の変化推しだ。。。)。いくつかは、各時点での従属変数(発言意図)の変化を取り扱っている(Shamir,1997)。しかし、独立変数の変化までは取り扱えていない。

ということで自分たちはLGMを使ってモデルを構築するよ。サンプルはイタリアのオンラインサーベイのパネル。争点は失業問題。失業対策は一般的に重要な話題だし、調査時点では失業問題が深刻だったので争点としてはふさわしい。従属変数としては「失業問題について以下の人たち(家族、友人・同僚)とどの程度話しますか?」という5ポイントスケール。多数派認知に関する独立変数は「失業対策に関する私の意見は私が周りで聞く意見と似ている」「私の住むところでは人々はほとんど私と同じ失業対策案を持っている」「イタリア国内のほとんどの人は失業対策の戦略を私と共有している」。これは他の研究でもつかう聞き方だ。(へー)。

主要な仮説

1.初期レベルで、集団内の個人に関心の差異がなければ螺旋はスタートしない(初期状態で関心にはばらつきがある)。
2.個人内に期間を通じた変化がなければ螺旋はおこらない
3.個人によって変化の程度は異なる
4.初期の意見分布認知と意見表明の強さは、変化の程度とネガティブな関係があるだろう(意見が強ければ変化しない)
5.初期の意見風土認知と意見表明は相関する

で、仮説はだいたい支持されている、と。要するに、意見風土認知が変化して(自分が多数派だと思って)どんどん発言するスパイラルがあるってことかな。ただ、このモデルだと周囲は自分と近いか、しか聞いてないように見えるので、世論がどっちに流れたのか(例えば公共政策v.s.自由競争みたいな)がわからないので、「沈黙」が螺旋したのか、「みんな大声でしゃべる」が螺旋したのかわからないような。

パネル調査でSoSTやってる論文集めないと。

2015年2月27日金曜日

沈黙の螺旋理論(SoST)のエージェントシミュレーションレビュー(2)


残り3つ。

Malarz, K., & Kulakowski, K. Indifferents as an interface between Contra and Pro, Acta Phys. Pol. A 117 (2010) 695. arXiv:0908.3387.

多くの世論に関する社会物理シミュレーションは2つの意見を扱ってきた。しかし実際の投票で多くの人は投票しない。ということで無関心な投票者を導入する。

Sznajdモデルはスピンのモデル。隣接したスピンS(i),S(i+1)を考える
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1), S(i+2)=S(i)(逆転)(これが基本。逆のパターンも提唱されている)

で、これにニュートラルを加える。
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1)=0(ニュートラルになる)
どちらかがIなら変更なし

初期状態δ<1/2にPro,Consを与え、1-2δをニュートラルとする。

SoSを表現するために、シミュレーションの初期でPを隣にもつCをすべてIに変更する。#P>#CならC→Iというルールも導入。横軸としてδをとって縦軸に最終的なCの比率を出力。

δが大きいとマジョリティ一色になりやすい。ニュートラルを入れたことで社会学がいう極化現象に近いモデルができた。

イジングモデルを使ったものは他にも沢山ありそう、というかLatane→Axelrodの拡張の方がリッチなことが言えそう。でも単純なオートマトンだと何を言いたいモデルかわかりにくいなぁ。


Shiyu Du, Jiayin Qi, 2014, Journal of Networks, Vol 9, No 8, pp.2003-2012,, Multi-agent Modeling and Simulation on Group Polarization Behavior in Web 2.0

これもイントロから関連研究までが丁寧なので細かく読んでみる。

Abst.

Web2.0大事だけど、だれも集団極化現象の重要なファクターを説明していない。本研究は3つの次元を統合する(個人・グループ・トピック)。続いて、MASでシミュレートするよ。

Introduction

昔から人は流されるよね(通りで何人の人間が空を見たら周りの人がつられて空を見るか(ミルグラム,1968))。パニック購買もよくある現象だ。ノエルノイマンのSoSから見てもインターネット上で極化は起きやすいのではないか。インターネット上では意味のない模倣が簡単に起きてしまうかもしれないが、一方で重要な情報を伝えるためのツールになるかもしれない。しかしどのような条件で集団極化を引き起こすのかは深く研究しなくてはいけない。

極化はいろいろやられている(1990,1986の)。最初の極化の発見は、集団のリスキーシフトだ(1961,Moscovici and Zavalloni)。このメカニズムを明らかにするためにシミュレーションはいろいろやられている。(2003,2011)

もちろんいろんな方面からのアプローチがある。

1.心理学的アプローチ:集団圧力などなど
2.システムサイエンス:ネットワーク構造(文献16,17)
3.その他としてBHWモデル(18)

が、どいつもこいつも一個の要因しかやっとらん。全部載せモデルを作ったるわい。しかも、要因のランキングもつくったる。

Theoretical Bases

3つの理論的ベースを使う。

A:Social Comparison Theory(Festinger,1954)

人は他人と比較することで自身を理解したい絶対的な基準がない場合、他者との比較になる。大きく違う・多様性がある、ときにはその欲求は小さいが似ていると大きい。能力において大きく、意見において小さい(以上Webからまとめ)

そこからTajfel,1979がSocial Identity Theoryを開発。それがIn-group/Out-groupです。イングループと理解すると似る、これが極化の原理

B:Informational Influence Theory

Stoner,1961曰く、人々は議論すると、よりリスキーな意思決定をする。Myers1972曰く、リスキーになるというより、初期の状態を強化する。

また、人は個々の情報処理をすることなく説得力のある意見についていく。またHinsz1984は多様な論点があるほうが集団極化は起きやすいことを実験で示した。(消費者行動?)

C:Influence Factors Of Group Polarization

近年の極化研究は、個人・グループ、トピックの点から研究している。

個人
Xieは個人の独立思考能力が高ければ極化は起きにくいと言っている。著者もこれを採用

グループ
Hayes(2010)は、集団の類似性と密度、また最初の印象を与えるオピニオンリーダーの影響を強く受けると言っている。

トピック
センシティブな話題は極化しやすい(政府、法律、戦争。。。)

まとめるとFig2

Model

A:仮定
1.メディアは考えない
2.個人が意見を受け入れることで得られると認知した利得が閾値を上回ったら、個人はその意見を受け入れる。その際、個人で情報処理は行わない。

極化の指標:スピード:80%の個人が極化したら、極化のパーセンテージ

B:プロセス

モデルはいろいろ複雑そうだけど、要するに周りが変えてたら変える、自分の自信が強ければ変えにくい、みたいなかんじ。

結論としてはあたりまえ「個人の態度が強ければ極化は起きない」「集団が似ていると極化」

んー、モデルの細かいところがわからないけど、丁寧なような、意味がないような。ただAxelrodモデルの丁寧な拡張でだいぶ良くなる可能性もあるか?

P. Gawronski, M. Nawojczyk, K. Kulakowski, 2014, eprint arXiv:1407.2742, Opinion formation in an open system and the spiral of silence

SoSを扱うよ。そして集団に流入出があるモデルを考える。エージェントはオピニオンS_i,カリスマC_iを持って、これらは固定。オピニオンはN(0,1)に従う。カリスマは平均3のポワソン分布。エージェントはキューに入っていて、FIFOで流入出する。

カリスマ値の大きなリーダーがシステムから消えてからどの程度影響が残るか見ているようだけど、グラフの説明が足りなかったりで何言いたいのかわからない。あと飽きた。

【感想】
総じて、理論背景まではかっちり書いているけどモデルになると急にヘロヘロになるのが多いような。あとは「こういう条件でSoSが生じました」だけだと、そうでしょうねぇで終わってしまう。投票までモデル化して社会的選択理論とくっつけるか(しんどそう)、なんとかジレンマを持ち込むか(無理がありそう)、とにかく一工夫がないとインパクトのあるものにならないだろう。

ざっと見た感じでは、イジングモデルやLataneのような周囲の状態で態度(発言)を変えるもの、意見分布の総和をとって閾値で発言・沈黙を決めるもの、利得と戦略をもったジレンマゲーム系がある感じ。さて、自分はどうやるか。。。




沈黙の螺旋理論(SoST)のエージェントシミュレーションレビュー(1)

沈黙の螺旋調査のパネル論文を書くという宿題がありつつもシミュレーションでもやってみたいのでざっとレビュー。

Yunhwan Kim, 2013, CSSSA Papers, Dynamics of the Silence of Majority from the Perspective of Social Dilemma

100×100の格子にAgentを配置。戦略は「ALL発言」「多数派なら発言」「少数派なら発言」「沈黙」。初期状態ではランダムに発言か沈黙を選択。周囲8エージェントの発言数を聞いて多数派・少数派を判断。

で、αが多数派で発言したときの利得、βが少数派で発言したときの利得(はっきり書いてない)。γ、δに至っては定義がない。たぶん多数派沈黙と少数派発言。

シミュレーションする。α>β,γ,δのときは発言が戦略の存在比に従ってのこる。なぜならローカル多数派があり得るから。δ>α,β,γなら沈黙。そりゃそうだ。α=δ>β=γでは途中で発言がなくなり全員沈黙。そりゃそうだ。ローカル少数派で発言するよりも沈黙が最高値だから。

なんだこりゃ。ひどい。次。


Iván Blanco,2013, MPRA Paper 45452, University Library of Munich, Germany.,The silence that precedes hypocrisy: a formal model of the spiral of silence theory

SoSをゲーム理論に基づいて定式化する。

状況としてプレイヤーは意見A,~Aを持つ。戦略は喋る(S)か黙るか(~S)で、両方喋ってAgreeならbを受け取り、両方喋ってDisagreeなら-cの利得(b,c>0)。つまりランダムで選択された2者の意見が一致しているときと一致してないときで利得表が異なる。更にそれをプレイヤーは知ることができない。

2人ゲームならナッシュ均衡は喋る確率Sp=c/(b+c)。さて、これが多数になると解けないからシミュレーションする。

qが相手と意見が一致すると思う確率、pが相手が喋ってくると思う確率。qのアップデートはベイズルールでおこなう。詳細な数式の展開は端折ったけど、相手が喋ると相手の意見がわかってAgreeだと多数派認知(q)が高まる。そうでないと減る。

人々の初期の多数派認知の値(q)が高いと均衡に達するのが速い。多数派割合が高いと多数派のみが喋るが、閾値以下だと全員が喋る。


ゲーム構造の設定は面白い。たしかに公共の場での意見表明をシンプルにモデル化できている。
もうワンステップ伸ばせば面白い応用がありそうだけど、当然ノーアイデア。うーむ。

Chengjun Wang, 2011, WAPOR2011, The Emergence of Spiral of Silence from Individual Behaviors:Agent-based Modeling of Spiral of Silence

イントロが丁寧そうなので細かく読んでみる。

Abst.
目的
1.SoSが生じる境界条件を見つける
2.SoSに社会的相互作用が与える影響を正確に測定する
3.時間・サイズの不均質性の面から動的な特徴を分析する
結果
1.マスメディアの影響力が準拠集団のそれを上回るときSoSが安定的に生じる
2.マスメディアと準拠集団に対するローカルな視点を伴った異質な個人のボトムアップな相互作用はSoSを引き起こすもととなる。特異的にはSoSの成長速度を経時的に減少させる。なんじゃらほい。

Introduction
世論形成過程は世論研究の重要なトピックだ。SoSは個人のマスメディアと準拠集団(reference groups)との相互作用のダイナミクスを説明している。

しかしempirical studiesでは一貫した結果が得られておらず侃々諤々の議論が続いてる(Donsbach& Traugott, 2007; Glynn, Hayes, & Shanahan, 1997; Scheufle & Moy, 2000)。加えて、集合的な変数と個人的な変数の相互作用の分析もかけている。と言うわけでABMを用いて、SoSが生じるの境界条件、時系列的な成長過程を分析しよう。

Literature Review

ノエルノイマンのレビューをしたうえで(Last-minute swingに着目してるけど言ってることはふつうのSoS)、SoSには3つのレベルがあると。個人レベル、準拠集団レベル、社会レベル。

個人レベル:発言の意図、孤立の恐怖、デモグラ変数
準拠集団レベル:グループサイズ、集団の雰囲気、集団の社会資本
社会レベル:文化の性質、メディアのパターン

事実、文化の影響は近年のSoS研究の実り多い分野だ。しかし、個人のメディア利用行動とメディアの特徴は分別されるべきだ。

このあとメディア効果理論が照会されて、メディアに対抗するものとして準拠集団理論が紹介される。またSoSが生じる要因として良く使われるのが多元的無知だ。多元的無知では個人は自分の意見を誤ってマイノリティと認知してしまう。あとはハードコア・アバンギャルドがマスメディアと対抗する。

人の行動が情報流通に依存しているなら準拠集団は重要となる。でもこれらのダイナミクスはやられてないはずだから自分たちがやる。

Rsearch Framework

閾値モデルが良く使われる。シェリングの分居モデルを起点にいろんなことがやられてますね。

この研究では個人とマスメディア・準拠集団との相互作用を扱うのがポイント。マスメディアはメインストリームの意見を個人にダイレクトに伝える。準拠集団は、個人がマイノリティならパニッシュするし、そうでないなら行動を補強する。マスメディアと同じ意見を持つ人にとっては準拠集団はマスメディアの影響を強化する。逆にマスメディアと反対の意見であれば、準拠集団に頼るためマスメディアの影響は弱くなる。

RQ1:SoSが安定的に生じる巨魁条件はなにか?
RQ2-1:人口の大きさの影響はSoSを生じさせるか?
RQ2-2:準拠集団のサイズはSoSを生じさせるか?
RQ3:どのように人々は時系列的に沈黙していくか?

Method

ずっとABM礼賛、と。

Measure

Axelrod大先生もKISS原理を言ってるのだから乗っかるよ。SoSに影響を与えるものはたくさんあろうが「意見表明意図、ソーシャルネットワークの影響、マスメディアの影響」に限るぞ。

意見表明意図

平均0分散1の正規分布で発言意図を与える。また彼らの意見はメインストリームのものと一致してる。発言意図は意見の情勢によって変わる、情勢が自分と逆だと認識すると沈黙する。

準拠集団の影響

エージェントはネットワークに埋め込まれて、自身から見える半径内のエージェントの発言意図を足し算する

マスメディアの影響

初期のメディアの影響として(0,1,2,3,4,5)の大きさをランダムに持たせた(エージェントごとに異なる)

モデルの挙動

W_(n,t):エージェントnのt期における発言意図
M_(n,t):エージェントnのt期におけるメディアの影響力
R_(n,t):エージェントnのt期における準拠集団の情勢

W_(n,t)=W_(n,t-1)+αM_(n,t-1)+βR_(n,t-1)

Rは周囲の足し算、M_(n,t)の決め方は書かれていない。

時系列で沈黙になる人の数をプロット(沈黙はW<0かな、わからん)。このモデルは一体なんだ。。。

結果としてはマスメディアの影響が大きいと(α>β)、必ず全員が沈黙。準拠集団のほうが影響が大きいといろんな結果になる。メカニズムが全然書かれていない。

何と言うか超大げさな仕掛けを作って当たり前のことを言った感が満載。

つづく