2015年7月7日火曜日

Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback

ちょっと古いけど評判システムの話が積読フォルダに入っていたのを掘り出す。そういえば協力の進化を始めたのはそもそも評判システムをモデル化してる流れだったんだよな。なつかしい。ノスタルジックな気分半分と最近抽象的なモデルばっかりな反省を込めて読む。

Brown, J., & Morgan, J. (2006). Reputation in Online Markets : Some Negative Feedback. California Management Review, 49(1), 61-81.

Abst.
オンラインマーケットの発展ぶりといったらない。地理的な制約・様々な物理的コストの大幅な削減でバイヤー・セラーの両者に「デモクラシー」をもたらした。しかしその流動性ゆえに、匿名性、取引相手の信頼性という新しいチャレンジが生じている。信頼の問題はキーポイントであり、eBayなどは評判システムによってLock-inが生じてAmazonやYahooの挑戦を退けている。さて問題は、eBayにおいて“market for feedback”が発生することだ。それは評判を加工するためのフィードバックの売買である。問題の所在をケーススタディで明らかにして、eBayが将来のためになすべきことを提案しましょう。

イントロの前半ではインターネットの発展で参入退出容易なオンラインマーケットが発展して、とくにeBayは大成功。その要因として評判システムが超重要、というお話。散々講義で話したので個人的には飽きた。

そこで問題となるのは、悪いセラーは相対的に小さなコストで評判を蓄積できるので最後に一発でかいとりひきで詐欺を働けば十分儲かってしまう。これは評判システムのアキレス腱だ。これをeBayを対象としたケーススタディで明らかにしようではないか。

評判は本当に価値があるのか?古銭の取引ではポジティブな評判は効果を持っていなかったが、ネガティブな評判は価格を引き下げていた。エレキギターでも同様のパターンがあった。関係なし、という結果もある(この辺ぜんぶワーキングペーパーを引用してる)。その他いろいろ引用するに、まあ評判には経済価値があるのでしょう、と。

しかし問題はここですよ奥さん。50セントでゴールデンゲートブリッジのデジカメ写真が売られたら買うか?と。買うんです。なぜならポジティブフィードバックを得るために。評判を高めるために。ここでA氏というケースに着目。A氏はeBayでポジティブフィードバックを得る(安い意味のない商品を買ってもらい、最高評価を返す)ことを派手にやったユーザ。このあとA氏の悪行が連なるけど、面倒なのでスキップ。

さあ、データ収集して統計的に分析する(やっとだ)。feedback marketで良く使われるキーワードを精査して6526のリスト(526のユニークユーザ)を抽出した。そのうち5127は結果的に販売されていた。そして80%以上の商品は「Buy-it-nowオプション」使っている。つまりオークションせずに固定価格で売っている。しかも売買価格は驚くほど安くて誰も得していない。ポイントは、取引自体ではなくて評判ポイントをお互いに得られていることだ。利得のヒストグラムをプロットしてみても、多くの取引で手数料の方が高いくらいの安い価格が設定されるので売り手は損をしている。まとめると、eBayの評判システムにはこのような評判の結託の脆弱性があるぞ、と。これを克服するには、例えば取引価格で重みづけした評判ポイントを導入することなどが考えられるけど、既存顧客のロイヤリティをそこなうリスクもある。

んー、まあ、はい。そういえば評判インフレのモデルを作って発表したまま放置ってのがあったなぁ。この論文もそうだけど、そのときのつっこみは「そうはいってもほとんどの取引はうまく言ってるからシステムとしては頑健なんじゃないのか」というもの。評判システムの脆弱性は面白いけど若干重箱の隅をつついてる感がぬぐえない。

ただ評判システムのコストを無視した間接互恵モデルにも限界はあるだろうから、やれることは残ってるでしょう。いやそれにしても懐かしいネタだった。この論文も10年近く前のものだし、現時点では評判システム研究はどんな感じなんだろう。

2015年6月30日火曜日

Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence.

気付いたら今年が半分終わるという恐怖。

持ってるデータを早く論文化しなくてはいけないので積んである関連論文を読む。

Matthes, J. (2015). Observing the “Spiral” in the Spiral of Silence. International Journal of Public Opinion Research, 27(2), 155–176. doi:10.1093/ijpor/edu032

Abst.
SoSTでもっとも大事なのは時間の概念だろう。多数派がますます多数派になるというダイナミクスが肝なんだから。しかしほとんどの研究はダイナミクスを扱ってない。自分たちが3波のパネル調査でこれを明らかにしましょう。

SoSTはむっちゃたくさん研究されている。しかし、ほとんどがcross-sectionalではないか。一部パネルを使った研究もあるが、ダイナミクスをモデル化しているとは言えない。これは理論の言うところから考えると驚きの大事な部分の無視っぷりと言えよう。意見風土と意見表明の関係については、二つの予測が存在している。一つは、意見風土と意見発信の関係で、これは多数派と認知したら話すし、少数派と認知したら話さないというもの。二つ目は、意見風土の「変化」が発言意図の「変化」を生むというものだ。

cross-sectionalな調査がメジャーなことが大問題だけど、パネル調査もないわけではない。本家ノエルノイマンもやっているけど、絶対的な意見のシェアの認知と発言意図を聞いていて、個人の変化を議論できない。Shamir(1997)もパネルでシェアと発言意図を比較しているけどやはり個人の変化については何も言えない。また、パネルに対して別個のレグレッションをするという研究もある(McDonald et al.2001)。しかしこれも理論の整合性は検証できるけど、個人の変化は議論できない(徹底的に個人の変化推しだ。。。)。いくつかは、各時点での従属変数(発言意図)の変化を取り扱っている(Shamir,1997)。しかし、独立変数の変化までは取り扱えていない。

ということで自分たちはLGMを使ってモデルを構築するよ。サンプルはイタリアのオンラインサーベイのパネル。争点は失業問題。失業対策は一般的に重要な話題だし、調査時点では失業問題が深刻だったので争点としてはふさわしい。従属変数としては「失業問題について以下の人たち(家族、友人・同僚)とどの程度話しますか?」という5ポイントスケール。多数派認知に関する独立変数は「失業対策に関する私の意見は私が周りで聞く意見と似ている」「私の住むところでは人々はほとんど私と同じ失業対策案を持っている」「イタリア国内のほとんどの人は失業対策の戦略を私と共有している」。これは他の研究でもつかう聞き方だ。(へー)。

主要な仮説

1.初期レベルで、集団内の個人に関心の差異がなければ螺旋はスタートしない(初期状態で関心にはばらつきがある)。
2.個人内に期間を通じた変化がなければ螺旋はおこらない
3.個人によって変化の程度は異なる
4.初期の意見分布認知と意見表明の強さは、変化の程度とネガティブな関係があるだろう(意見が強ければ変化しない)
5.初期の意見風土認知と意見表明は相関する

で、仮説はだいたい支持されている、と。要するに、意見風土認知が変化して(自分が多数派だと思って)どんどん発言するスパイラルがあるってことかな。ただ、このモデルだと周囲は自分と近いか、しか聞いてないように見えるので、世論がどっちに流れたのか(例えば公共政策v.s.自由競争みたいな)がわからないので、「沈黙」が螺旋したのか、「みんな大声でしゃべる」が螺旋したのかわからないような。

パネル調査でSoSTやってる論文集めないと。

2015年2月27日金曜日

沈黙の螺旋理論(SoST)のエージェントシミュレーションレビュー(2)


残り3つ。

Malarz, K., & Kulakowski, K. Indifferents as an interface between Contra and Pro, Acta Phys. Pol. A 117 (2010) 695. arXiv:0908.3387.

多くの世論に関する社会物理シミュレーションは2つの意見を扱ってきた。しかし実際の投票で多くの人は投票しない。ということで無関心な投票者を導入する。

Sznajdモデルはスピンのモデル。隣接したスピンS(i),S(i+1)を考える
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1), S(i+2)=S(i)(逆転)(これが基本。逆のパターンも提唱されている)

で、これにニュートラルを加える。
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1)=0(ニュートラルになる)
どちらかがIなら変更なし

初期状態δ<1/2にPro,Consを与え、1-2δをニュートラルとする。

SoSを表現するために、シミュレーションの初期でPを隣にもつCをすべてIに変更する。#P>#CならC→Iというルールも導入。横軸としてδをとって縦軸に最終的なCの比率を出力。

δが大きいとマジョリティ一色になりやすい。ニュートラルを入れたことで社会学がいう極化現象に近いモデルができた。

イジングモデルを使ったものは他にも沢山ありそう、というかLatane→Axelrodの拡張の方がリッチなことが言えそう。でも単純なオートマトンだと何を言いたいモデルかわかりにくいなぁ。


Shiyu Du, Jiayin Qi, 2014, Journal of Networks, Vol 9, No 8, pp.2003-2012,, Multi-agent Modeling and Simulation on Group Polarization Behavior in Web 2.0

これもイントロから関連研究までが丁寧なので細かく読んでみる。

Abst.

Web2.0大事だけど、だれも集団極化現象の重要なファクターを説明していない。本研究は3つの次元を統合する(個人・グループ・トピック)。続いて、MASでシミュレートするよ。

Introduction

昔から人は流されるよね(通りで何人の人間が空を見たら周りの人がつられて空を見るか(ミルグラム,1968))。パニック購買もよくある現象だ。ノエルノイマンのSoSから見てもインターネット上で極化は起きやすいのではないか。インターネット上では意味のない模倣が簡単に起きてしまうかもしれないが、一方で重要な情報を伝えるためのツールになるかもしれない。しかしどのような条件で集団極化を引き起こすのかは深く研究しなくてはいけない。

極化はいろいろやられている(1990,1986の)。最初の極化の発見は、集団のリスキーシフトだ(1961,Moscovici and Zavalloni)。このメカニズムを明らかにするためにシミュレーションはいろいろやられている。(2003,2011)

もちろんいろんな方面からのアプローチがある。

1.心理学的アプローチ:集団圧力などなど
2.システムサイエンス:ネットワーク構造(文献16,17)
3.その他としてBHWモデル(18)

が、どいつもこいつも一個の要因しかやっとらん。全部載せモデルを作ったるわい。しかも、要因のランキングもつくったる。

Theoretical Bases

3つの理論的ベースを使う。

A:Social Comparison Theory(Festinger,1954)

人は他人と比較することで自身を理解したい絶対的な基準がない場合、他者との比較になる。大きく違う・多様性がある、ときにはその欲求は小さいが似ていると大きい。能力において大きく、意見において小さい(以上Webからまとめ)

そこからTajfel,1979がSocial Identity Theoryを開発。それがIn-group/Out-groupです。イングループと理解すると似る、これが極化の原理

B:Informational Influence Theory

Stoner,1961曰く、人々は議論すると、よりリスキーな意思決定をする。Myers1972曰く、リスキーになるというより、初期の状態を強化する。

また、人は個々の情報処理をすることなく説得力のある意見についていく。またHinsz1984は多様な論点があるほうが集団極化は起きやすいことを実験で示した。(消費者行動?)

C:Influence Factors Of Group Polarization

近年の極化研究は、個人・グループ、トピックの点から研究している。

個人
Xieは個人の独立思考能力が高ければ極化は起きにくいと言っている。著者もこれを採用

グループ
Hayes(2010)は、集団の類似性と密度、また最初の印象を与えるオピニオンリーダーの影響を強く受けると言っている。

トピック
センシティブな話題は極化しやすい(政府、法律、戦争。。。)

まとめるとFig2

Model

A:仮定
1.メディアは考えない
2.個人が意見を受け入れることで得られると認知した利得が閾値を上回ったら、個人はその意見を受け入れる。その際、個人で情報処理は行わない。

極化の指標:スピード:80%の個人が極化したら、極化のパーセンテージ

B:プロセス

モデルはいろいろ複雑そうだけど、要するに周りが変えてたら変える、自分の自信が強ければ変えにくい、みたいなかんじ。

結論としてはあたりまえ「個人の態度が強ければ極化は起きない」「集団が似ていると極化」

んー、モデルの細かいところがわからないけど、丁寧なような、意味がないような。ただAxelrodモデルの丁寧な拡張でだいぶ良くなる可能性もあるか?

P. Gawronski, M. Nawojczyk, K. Kulakowski, 2014, eprint arXiv:1407.2742, Opinion formation in an open system and the spiral of silence

SoSを扱うよ。そして集団に流入出があるモデルを考える。エージェントはオピニオンS_i,カリスマC_iを持って、これらは固定。オピニオンはN(0,1)に従う。カリスマは平均3のポワソン分布。エージェントはキューに入っていて、FIFOで流入出する。

カリスマ値の大きなリーダーがシステムから消えてからどの程度影響が残るか見ているようだけど、グラフの説明が足りなかったりで何言いたいのかわからない。あと飽きた。

【感想】
総じて、理論背景まではかっちり書いているけどモデルになると急にヘロヘロになるのが多いような。あとは「こういう条件でSoSが生じました」だけだと、そうでしょうねぇで終わってしまう。投票までモデル化して社会的選択理論とくっつけるか(しんどそう)、なんとかジレンマを持ち込むか(無理がありそう)、とにかく一工夫がないとインパクトのあるものにならないだろう。

ざっと見た感じでは、イジングモデルやLataneのような周囲の状態で態度(発言)を変えるもの、意見分布の総和をとって閾値で発言・沈黙を決めるもの、利得と戦略をもったジレンマゲーム系がある感じ。さて、自分はどうやるか。。。




沈黙の螺旋理論(SoST)のエージェントシミュレーションレビュー(1)

沈黙の螺旋調査のパネル論文を書くという宿題がありつつもシミュレーションでもやってみたいのでざっとレビュー。

Yunhwan Kim, 2013, CSSSA Papers, Dynamics of the Silence of Majority from the Perspective of Social Dilemma

100×100の格子にAgentを配置。戦略は「ALL発言」「多数派なら発言」「少数派なら発言」「沈黙」。初期状態ではランダムに発言か沈黙を選択。周囲8エージェントの発言数を聞いて多数派・少数派を判断。

で、αが多数派で発言したときの利得、βが少数派で発言したときの利得(はっきり書いてない)。γ、δに至っては定義がない。たぶん多数派沈黙と少数派発言。

シミュレーションする。α>β,γ,δのときは発言が戦略の存在比に従ってのこる。なぜならローカル多数派があり得るから。δ>α,β,γなら沈黙。そりゃそうだ。α=δ>β=γでは途中で発言がなくなり全員沈黙。そりゃそうだ。ローカル少数派で発言するよりも沈黙が最高値だから。

なんだこりゃ。ひどい。次。


Iván Blanco,2013, MPRA Paper 45452, University Library of Munich, Germany.,The silence that precedes hypocrisy: a formal model of the spiral of silence theory

SoSをゲーム理論に基づいて定式化する。

状況としてプレイヤーは意見A,~Aを持つ。戦略は喋る(S)か黙るか(~S)で、両方喋ってAgreeならbを受け取り、両方喋ってDisagreeなら-cの利得(b,c>0)。つまりランダムで選択された2者の意見が一致しているときと一致してないときで利得表が異なる。更にそれをプレイヤーは知ることができない。

2人ゲームならナッシュ均衡は喋る確率Sp=c/(b+c)。さて、これが多数になると解けないからシミュレーションする。

qが相手と意見が一致すると思う確率、pが相手が喋ってくると思う確率。qのアップデートはベイズルールでおこなう。詳細な数式の展開は端折ったけど、相手が喋ると相手の意見がわかってAgreeだと多数派認知(q)が高まる。そうでないと減る。

人々の初期の多数派認知の値(q)が高いと均衡に達するのが速い。多数派割合が高いと多数派のみが喋るが、閾値以下だと全員が喋る。


ゲーム構造の設定は面白い。たしかに公共の場での意見表明をシンプルにモデル化できている。
もうワンステップ伸ばせば面白い応用がありそうだけど、当然ノーアイデア。うーむ。

Chengjun Wang, 2011, WAPOR2011, The Emergence of Spiral of Silence from Individual Behaviors:Agent-based Modeling of Spiral of Silence

イントロが丁寧そうなので細かく読んでみる。

Abst.
目的
1.SoSが生じる境界条件を見つける
2.SoSに社会的相互作用が与える影響を正確に測定する
3.時間・サイズの不均質性の面から動的な特徴を分析する
結果
1.マスメディアの影響力が準拠集団のそれを上回るときSoSが安定的に生じる
2.マスメディアと準拠集団に対するローカルな視点を伴った異質な個人のボトムアップな相互作用はSoSを引き起こすもととなる。特異的にはSoSの成長速度を経時的に減少させる。なんじゃらほい。

Introduction
世論形成過程は世論研究の重要なトピックだ。SoSは個人のマスメディアと準拠集団(reference groups)との相互作用のダイナミクスを説明している。

しかしempirical studiesでは一貫した結果が得られておらず侃々諤々の議論が続いてる(Donsbach& Traugott, 2007; Glynn, Hayes, & Shanahan, 1997; Scheufle & Moy, 2000)。加えて、集合的な変数と個人的な変数の相互作用の分析もかけている。と言うわけでABMを用いて、SoSが生じるの境界条件、時系列的な成長過程を分析しよう。

Literature Review

ノエルノイマンのレビューをしたうえで(Last-minute swingに着目してるけど言ってることはふつうのSoS)、SoSには3つのレベルがあると。個人レベル、準拠集団レベル、社会レベル。

個人レベル:発言の意図、孤立の恐怖、デモグラ変数
準拠集団レベル:グループサイズ、集団の雰囲気、集団の社会資本
社会レベル:文化の性質、メディアのパターン

事実、文化の影響は近年のSoS研究の実り多い分野だ。しかし、個人のメディア利用行動とメディアの特徴は分別されるべきだ。

このあとメディア効果理論が照会されて、メディアに対抗するものとして準拠集団理論が紹介される。またSoSが生じる要因として良く使われるのが多元的無知だ。多元的無知では個人は自分の意見を誤ってマイノリティと認知してしまう。あとはハードコア・アバンギャルドがマスメディアと対抗する。

人の行動が情報流通に依存しているなら準拠集団は重要となる。でもこれらのダイナミクスはやられてないはずだから自分たちがやる。

Rsearch Framework

閾値モデルが良く使われる。シェリングの分居モデルを起点にいろんなことがやられてますね。

この研究では個人とマスメディア・準拠集団との相互作用を扱うのがポイント。マスメディアはメインストリームの意見を個人にダイレクトに伝える。準拠集団は、個人がマイノリティならパニッシュするし、そうでないなら行動を補強する。マスメディアと同じ意見を持つ人にとっては準拠集団はマスメディアの影響を強化する。逆にマスメディアと反対の意見であれば、準拠集団に頼るためマスメディアの影響は弱くなる。

RQ1:SoSが安定的に生じる巨魁条件はなにか?
RQ2-1:人口の大きさの影響はSoSを生じさせるか?
RQ2-2:準拠集団のサイズはSoSを生じさせるか?
RQ3:どのように人々は時系列的に沈黙していくか?

Method

ずっとABM礼賛、と。

Measure

Axelrod大先生もKISS原理を言ってるのだから乗っかるよ。SoSに影響を与えるものはたくさんあろうが「意見表明意図、ソーシャルネットワークの影響、マスメディアの影響」に限るぞ。

意見表明意図

平均0分散1の正規分布で発言意図を与える。また彼らの意見はメインストリームのものと一致してる。発言意図は意見の情勢によって変わる、情勢が自分と逆だと認識すると沈黙する。

準拠集団の影響

エージェントはネットワークに埋め込まれて、自身から見える半径内のエージェントの発言意図を足し算する

マスメディアの影響

初期のメディアの影響として(0,1,2,3,4,5)の大きさをランダムに持たせた(エージェントごとに異なる)

モデルの挙動

W_(n,t):エージェントnのt期における発言意図
M_(n,t):エージェントnのt期におけるメディアの影響力
R_(n,t):エージェントnのt期における準拠集団の情勢

W_(n,t)=W_(n,t-1)+αM_(n,t-1)+βR_(n,t-1)

Rは周囲の足し算、M_(n,t)の決め方は書かれていない。

時系列で沈黙になる人の数をプロット(沈黙はW<0かな、わからん)。このモデルは一体なんだ。。。

結果としてはマスメディアの影響が大きいと(α>β)、必ず全員が沈黙。準拠集団のほうが影響が大きいといろんな結果になる。メカニズムが全然書かれていない。

何と言うか超大げさな仕掛けを作って当たり前のことを言った感が満載。

つづく

2015年1月8日木曜日

実名制SNSにおけるROM (Read Only Member)に関する考察 : 黙って読んでいる人達(ROM)はなぜ投稿しないのか

ブログ更新のやり方すら忘れてた。なんと3か月半ぶり。ほんと論文をダウンロードして満足する不治の病は死に至る病だ。

どうやら修士の学生さんの論文。目の付け所が面白い。2015年は地道に研究を進めようと思いながら読む。

大谷梨絵. (2013). 実名制SNSにおけるROM (Read Only Member)に関する考察 : 黙って読んでいる人達(ROM)はなぜ投稿しないのか. 立教ビジネスデザイン研究, 10, 21-31.

ソーシャルメディア研究ではとかく参加者のデータが分析されるけどROMの割合は9割にのぼると言われてる。彼らの動機や特性はよくわかっていないので特に仮説があるわけではないけど探索的に研究するよ。

Li and Bernoff(2008)曰くソーシャル・メディアへの参加動機は「つながりたい」「何かを作りたい」「連絡を絶やさずにいたい」「助け合いたい」である。また参加の理由(動機と違うのか?)は「友人づきあい」「友人づくり」「友人からの圧力」「先行投資」「利他心」「好奇心」「創造的衝動」「他者からの承認」「同好者との交流」だと。このあたり、ブログやQAに関する社会心理論文はひいておきたいところだなあ。

PreeceさんががLurker(ROMの米国風(?)呼び方)の研究では先行していて、Preece, Nonnecke and Andrews(2004)では参加するのに書き込まない理由(MSNネットワークを対象)を調査したところ、「投稿する必要性を感じない」「参加する前にコミュニティについてもっとよく知る必要がある」「自分の投稿が役に立つか疑問」「投稿するための ICT スキル等がない」「コミュニティが自分に合っていない」という項目があった。しかし、これらは因子分析などから抽出したものでなく、著者らが想定した類似度で集約してるそうだ。そりゃ駄目だろう。

一方で日本では授業中に発言するのをみな嫌がる傾向が強い。その理由を学校のクラスでの質問行動に関する研究で調査したのが、藤井・山口(2003)、無藤他(1980)で、どちらにも共通するのが「周囲の人々に自分がどう思われているのか人の目を気にする傾向」である。ということで、Preeceの5項目+人の目を気にする(計6つの要因)で質問項目を作ってFacebookユーザかつ投稿をしていない(3か月に3回以下の投稿)人たちになぜ書き込みしないのかを聞いた。

結果3因子が抽出される。第1因子が他人の目を気にする因子(「つまらない投稿をしていると思われたくないから」「投稿しても反応が返ってこないかもしれないから」など)。第2因子が制約因子(「投稿の仕方がわからないから」「会社や学校,所属団体から投稿を禁止されているから」など)。第3因子がクール因子(「投稿する必要がないから」「元々投稿する気はないから」など)。

その後はK-meansでクラスタリングして、デモグラとかいいねの頻度などの回答を比較する。

まあ、そういう流れになりますかなぁ。おしい。以前CGMの利用動機でおんなじ流れになって途中で挫折したことを思い出す。でもこちらは着地点を見失ってなかったことになったけど、ちゃんと論文にしていてえらいなぁ。

面白い論文だった。というかコロンブスの卵だよなぁ。ROMのことは誰だって思いつくし、参加動機研究もたくさんあるのにぜんぜん思いつかなかった。まいった。

2015年はなんとしても成仏させてない研究をどうにかしなくては。

2014年9月20日土曜日

感情予測におけるネガティブ経験の効果 : 経験は他者の感情予測に役立てられるか

後期の準備がぜんぜんおわってない。というか手を付けてなかったりもする。まずい。まずいけどやる気が起きないので論文でも読む。

桑山恵真, & 工藤恵理子. (2010). 感情予測におけるネガティブ経験の効果 : 経験は他者の感情予測に役立てられるか. 社会心理学研究, 26(2), 109-118.

人はネガティブやポジティブな出来事がおこった後の感情の予測をする時に、その感情の持続に対して過大評価する傾向があることがわかっている。この傾向はけっこう再現性がある。これはネガティブな出来事を実際に経験したときには正当化や自己高揚などの心理的な免疫システムが働くにもかかわらず、人がそのシステムに気付かない(免疫無視)が原因である。

例えば、もし失恋したらどれくら辛いだろうという予想と実際に失恋した後の辛さでは予想の方が辛かったりする。それだよ、と。(えー、そうだっけ・・・?)。まあいいや。

まあその理論に従いますと、これは経験したときにはネガティブな出来事が深刻であるほど強力に働くと考えられるから、経験したことのネガティブ程度が大きいほどこの効果は大きいだろう(これってポジティブ方向にはどういうエラーがおきるんだろう?)。今回はネガティブな経験を実際に体験した時と、ネガティブな体験をしたと想像したときに、それぞれどの程度ネガティブな度合いを感じるのかと言う実験をおこなう。

仮説1:実際にはネガティブな経験をしない人は、した人の実際の感情よりネガティブに予測する。またこのバイアスはネガティブ度合が強いほど大きい。
仮説2:予測する場合、自分に対しても他者に対しても同程度にネガティブに予測する。経験者は自分がそれほどネガティブな感情ではないはずだが、他者に対してはネガティブが持続していると予測する。

実験計画はこんな感じ。評価対象(自己の感情・他者の感情)と判定(B判定・D判定)と役割(予測者・経験者)の3要因。統制変数として、ベースライン感情、試験の結果をどう正当化したのかの尺度。経験者条件の被験者は、能力テストに解答する。彼らはB判定・D判定をランダムに受け取って、5分ほど待たされてからその時の自分の感情と他者の感情の予想を回答。予測者条件では、実際にはテストに解答せずに架空の成績をうけとり、5分後の自分の感情と他者の感情を予測して回答。

結果。まずは妥当なところで、B判定のほうがD判定よりポジティブ。予測者・経験者の役割の差も有意で、予測者の自己感情予測より、経験者の自己感情のほうがポジティブ。つまりは持続性バイアスが確認できる。また、持続性バイアスはD判定のほうが大きかった。つまりはよりネガティブな出来事のほうが持続性バイアスは大きい。仮説2に関しても分析してるけど略。とりあえず仮説は支持されてましたよ。

要するにネガティブな経験で生じるネガティブな感情に対して、実際よりも大きなマイナスで予測してしまう「持続性バイアス」が存在するということ。プロスペクト理論とあわせてやったら面白そう。

2014年9月16日火曜日

表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響

夏休みのゼミで学生が持ってきた、のだが、何を発表しようとしているのかまったくわからなかったので自分で読む。

大薗博記, 森本裕子, 中嶋智史, 小宮あすか, 渡部幹, & 吉川左紀子. (2010). 表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響. 社会心理学研究, 26(1), 65–72.

信頼ゲームをする際に相手を信頼する基準として表情と言語情報のどちらをどの程度シグナルとして利用するのだろうか。

Scharlemann et.al.(2001)の研究では真顔と笑顔の写真を見せてそれぞれに提供額を決めさせると笑顔の方が提供している。笑顔表出には文化差があり、かつ性差もあるだろう(なんとメタ分析がある)。更には言語情報がどのような効果を持つのかも検討する必要がある。言語情報は簡単に偽装できるため、表情よりリライアビリティは低なるだろう。また、同時に提示された時には、信頼が強化されるのか、欺くための過剰な情報とみなされるのかわからない。仮説を立てるのではなく探索的に検討する。

表情の情報として男女の写真、言語情報としては写真の横に「カンニング可能な状態でカンニングするか」「友人に借りたものに小さな傷をつけたら正直に言うか」に対する回答を「高い」「やや高い」「中程度」になるように付けておく。

結果。笑顔のほうが真顔より信頼されるという結果は女性においてのみさいげんされた一方、言語情報の主効果は有意だった。などなど。ざっくりした結果をまとめると、表情より言語情報のほうが効果量が大きい。言語情報が高いという条件においてのみ「真顔」のほうが提供額が大きくなる。

表情の効果に関しては先行研究とは一致していない(先行研究では性差はでてない)。これは文化差などいろいろ検討する必要がある。

一方、言語情報に関しては偽ることが容易なために効果が小さいと予想してたけど、実は大きかった。嘘は事後的により大きな罰を受けることがわかっている。Brandts&Carness(Management Sci.,2001),Ohtsubo et.al.(Evolution and human behavior,in press)では、嘘をついて裏切るのと、ふつうに裏切るのでは嘘をついたほうがパニッシュ大きいことが示されている(2013年の社会心理学会でも嘘をつける時に裏切ったプレイヤーがALLDより信頼されないっていう実験があったような)。

今回は事後的な罰はないけれど、日常的にこのようなシグナルが有効であるなら、それが判断の手掛かりになった可能性も考えられる。

ふーむ、2次のジレンマが実システムで解決されてる仕組は予想のエラーとシステム1のデフォルト戦略、でモデル化できるのかなぁ。