2014年9月16日火曜日

表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響

夏休みのゼミで学生が持ってきた、のだが、何を発表しようとしているのかまったくわからなかったので自分で読む。

大薗博記, 森本裕子, 中嶋智史, 小宮あすか, 渡部幹, & 吉川左紀子. (2010). 表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響. 社会心理学研究, 26(1), 65–72.

信頼ゲームをする際に相手を信頼する基準として表情と言語情報のどちらをどの程度シグナルとして利用するのだろうか。

Scharlemann et.al.(2001)の研究では真顔と笑顔の写真を見せてそれぞれに提供額を決めさせると笑顔の方が提供している。笑顔表出には文化差があり、かつ性差もあるだろう(なんとメタ分析がある)。更には言語情報がどのような効果を持つのかも検討する必要がある。言語情報は簡単に偽装できるため、表情よりリライアビリティは低なるだろう。また、同時に提示された時には、信頼が強化されるのか、欺くための過剰な情報とみなされるのかわからない。仮説を立てるのではなく探索的に検討する。

表情の情報として男女の写真、言語情報としては写真の横に「カンニング可能な状態でカンニングするか」「友人に借りたものに小さな傷をつけたら正直に言うか」に対する回答を「高い」「やや高い」「中程度」になるように付けておく。

結果。笑顔のほうが真顔より信頼されるという結果は女性においてのみさいげんされた一方、言語情報の主効果は有意だった。などなど。ざっくりした結果をまとめると、表情より言語情報のほうが効果量が大きい。言語情報が高いという条件においてのみ「真顔」のほうが提供額が大きくなる。

表情の効果に関しては先行研究とは一致していない(先行研究では性差はでてない)。これは文化差などいろいろ検討する必要がある。

一方、言語情報に関しては偽ることが容易なために効果が小さいと予想してたけど、実は大きかった。嘘は事後的により大きな罰を受けることがわかっている。Brandts&Carness(Management Sci.,2001),Ohtsubo et.al.(Evolution and human behavior,in press)では、嘘をついて裏切るのと、ふつうに裏切るのでは嘘をついたほうがパニッシュ大きいことが示されている(2013年の社会心理学会でも嘘をつける時に裏切ったプレイヤーがALLDより信頼されないっていう実験があったような)。

今回は事後的な罰はないけれど、日常的にこのようなシグナルが有効であるなら、それが判断の手掛かりになった可能性も考えられる。

ふーむ、2次のジレンマが実システムで解決されてる仕組は予想のエラーとシステム1のデフォルト戦略、でモデル化できるのかなぁ。

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