2017年8月10日木曜日

We Can’t Return Evil for Good: The Comparison between Direct and Indirect Reciprocity

あれ、今年は7月は省略されたんだっけ。勝手に1年を11か月にしないでほしいものだ。

直接互恵と間接互恵を混在させてみると結局のところ直接互恵が強いよっていう論文。

Shiraki, Y. & Igarashi, T. We Can’t Return Evil for Good: The Comparison between Direct and Indirect Reciprocity. Lett. Evol. Behav. Sci. 8, 4–7 (2017).

直接互恵と間接互恵は良く知られてそして研究されている。集団内の観察が完全であれば、評判の矛盾は起きないけれど不完全観察ならば当然矛盾はおこる。評判の悪い人から協力された後に協力を求められたら、直接互恵的に協力を返すのか、評判を活用して拒否するのか。シナリオを用いてやります。

会社の同僚に最近部署が一緒になったBさんがいます。部署の人たちとランチを食べてたらBさんがやってきて夜勤を代わってくれと言ってきました。あなたは代わってあげますか。シナリオは2×2。互恵条件は「以前にBさんに助けてもらったことがある/ない」、評判条件は「Bさんは協力的で人気/非協力的で不人気」。

実験はほとんど同じ条件で3つ。学生を対象にするのと、日本のクラウドソーシング、世界45か国のクラウドソーシング(CrowdFlower)。最後だけ病院の夜勤に変更(一般的にするため)。

3実験とも美しく同じ結果を得ています。まず、それぞれの主効果は有意になる。評判Good>評判Badだし、互恵あり>互恵なしとなる。しかし面白いことに互恵条件では評判Goodと評判Badの間に差はなくなる。つまり評判の良否に関わらず高い協力意図を示す。しかも互恵なしの評判Goodよりも互恵あり評判Badのほうが協力意図は高い。当然、互恵なしなら評判Good>評判Bad。間接互恵的な評判によって協力するかどうかを判断するけれど、直接互恵的な関係は評判より優先される。

ちなみに今回は、Bの非協力が正当化されうるかどうかはコントロールしていない。つまりはBが非協力した相手がどうだったかは明示してない(2次情報は明確じゃない)。これは今後の課題とな。

言われてみれば当然だけど(自分自身への協力を観察した時点で評判をGoodに更新したといえるので)、結果がきれいに出ていて素晴らしい。