2015年1月8日木曜日

実名制SNSにおけるROM (Read Only Member)に関する考察 : 黙って読んでいる人達(ROM)はなぜ投稿しないのか

ブログ更新のやり方すら忘れてた。なんと3か月半ぶり。ほんと論文をダウンロードして満足する不治の病は死に至る病だ。

どうやら修士の学生さんの論文。目の付け所が面白い。2015年は地道に研究を進めようと思いながら読む。

大谷梨絵. (2013). 実名制SNSにおけるROM (Read Only Member)に関する考察 : 黙って読んでいる人達(ROM)はなぜ投稿しないのか. 立教ビジネスデザイン研究, 10, 21-31.

ソーシャルメディア研究ではとかく参加者のデータが分析されるけどROMの割合は9割にのぼると言われてる。彼らの動機や特性はよくわかっていないので特に仮説があるわけではないけど探索的に研究するよ。

Li and Bernoff(2008)曰くソーシャル・メディアへの参加動機は「つながりたい」「何かを作りたい」「連絡を絶やさずにいたい」「助け合いたい」である。また参加の理由(動機と違うのか?)は「友人づきあい」「友人づくり」「友人からの圧力」「先行投資」「利他心」「好奇心」「創造的衝動」「他者からの承認」「同好者との交流」だと。このあたり、ブログやQAに関する社会心理論文はひいておきたいところだなあ。

PreeceさんががLurker(ROMの米国風(?)呼び方)の研究では先行していて、Preece, Nonnecke and Andrews(2004)では参加するのに書き込まない理由(MSNネットワークを対象)を調査したところ、「投稿する必要性を感じない」「参加する前にコミュニティについてもっとよく知る必要がある」「自分の投稿が役に立つか疑問」「投稿するための ICT スキル等がない」「コミュニティが自分に合っていない」という項目があった。しかし、これらは因子分析などから抽出したものでなく、著者らが想定した類似度で集約してるそうだ。そりゃ駄目だろう。

一方で日本では授業中に発言するのをみな嫌がる傾向が強い。その理由を学校のクラスでの質問行動に関する研究で調査したのが、藤井・山口(2003)、無藤他(1980)で、どちらにも共通するのが「周囲の人々に自分がどう思われているのか人の目を気にする傾向」である。ということで、Preeceの5項目+人の目を気にする(計6つの要因)で質問項目を作ってFacebookユーザかつ投稿をしていない(3か月に3回以下の投稿)人たちになぜ書き込みしないのかを聞いた。

結果3因子が抽出される。第1因子が他人の目を気にする因子(「つまらない投稿をしていると思われたくないから」「投稿しても反応が返ってこないかもしれないから」など)。第2因子が制約因子(「投稿の仕方がわからないから」「会社や学校,所属団体から投稿を禁止されているから」など)。第3因子がクール因子(「投稿する必要がないから」「元々投稿する気はないから」など)。

その後はK-meansでクラスタリングして、デモグラとかいいねの頻度などの回答を比較する。

まあ、そういう流れになりますかなぁ。おしい。以前CGMの利用動機でおんなじ流れになって途中で挫折したことを思い出す。でもこちらは着地点を見失ってなかったことになったけど、ちゃんと論文にしていてえらいなぁ。

面白い論文だった。というかコロンブスの卵だよなぁ。ROMのことは誰だって思いつくし、参加動機研究もたくさんあるのにぜんぜん思いつかなかった。まいった。

2015年はなんとしても成仏させてない研究をどうにかしなくては。