2014年9月11日木曜日

社会的ジレンマにおける協力促進要因としての規範の過大視

2次のフリーライダー問題は実はそんなに存在しないんだということを実験で示す。メタ規範をおずおずと後ろ手に隠しながら読む。

小野田竜一, 松本良恵, & 神信人. (2009). 社会的ジレンマにおける協力促進要因としての規範の過大視. Center for Experimental Research in Social Science Working Paper Series, (92).

社会的ジレンマ状況にサンクションを入れるとうまくいくという話はあるけど、2次のフリーライダー問題があるから理論的にはサンクションでもうまくいかないはずだ。しかし現実には1次のサンクションがあればうまく機能していることが多いじゃないか。なぜだ?その謎を検証する。

想定するロジックは次の通り。公共財ゲームで協調する人には「サンクションがあってもなくても強調する(属性的協力)」と「サンクションがあるなら協調する(状況協力)」の2タイプがある。属性協力者は信念をもって協力しているのだから罰も行使するだろう。しかし状況協力者は罰を行使しないはずだ(なぜなら彼らは可能ならフリーライドしたいひとだから)。しかし状況的協力者の協調行動も属性的協力の協調行動も、行動としては協調なんだから外部的には区別できない。ということは、状況協力者にとっては罰してくる可能性を高く見積もってしまうのではないか。これが螺旋的にきいて協力が維持されるのではないか?

H1:状況協力者は実際の罰行使額よりもたかく罰行使額を見積もる
H2:状況協力者の予想する額は属性協力者に限った時の罰行使額に近い

実験します。授業中に報酬を払ってPGGをやる。サンクションなしのPGGとサンクションありのPGGをやって、それぞれC/Dとサンクションするかどうかを聞く。

結果、見事にH1,H2ともに支持されました。また、最後に「サンクションをする/される両方」「されるだけ」「するだけ」という立場に割り振ってみたところ「するだけ」の人たちが裏切りにスイッチする率が高い。これは内発的動機付け(サンクションがあると規範が取引に変わってしまう)で説明できるのではないか。

面白かった。確かに2次のサンクションは理論的には簡単に書けるけど現実でいうと(メタ規範をやってる身としてはつらいが)あまり見かけない。その理由が、サンクションの見積もりを誤るために予言の自己成就的に協調が成立するというのは美しいストーリーだ。

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