2014年7月31日木曜日

Moral assessment in indirect reciprocity


なんと10日もサボっていた。Webに晒してなければこのまま忙しいってことにして逃げてたところだ。

評価戦略に着目した間接互恵のざっくりとしたレビュー。今やってるやつがガッツリやられてたらどうしよう。ずいぶん前にダウンロードしたのを今更ながら読む。

Sigmund, K. (2011). Moral assessment in indirect reciprocity. Journal of Theoretical Biology, 299, 25–30. doi:10.1016/j.jtbi.2011.03.024

ジグモンド先生が間接互恵性について語るよ。間接互恵性論文をざっとレビューする。とくに評価戦略に注目する。

Givingゲームの間接互恵性について説明しつつ、Ohtsuki(2004)のリーディング8までざっと説明。で、いままではAll-C,All-D+ある戦略、というセットだったけど、たとえば、MILDとSTERN(ISとSDISCのことか?)が同時にいたらどうなるかっていうのは問題だ。リーディング8は、他の行動戦略に侵略されないことを示しているけど、他の評価戦略に侵入されないとは言っていない。

ALL-C,All-D,STERN,MILDでRDをやるとbistableになる(Uchida,Sigmund,2010)。でもこれは、完全情報(全員が全員のスコアを知っている)だけど、非現実的だ。ということで、スコア(i -> j)をアップデートできる確率qを導入した Uchida(2010)。これは情報の状態の重要性をqでコントロールできる素晴らしいモデルだぞ。

ただこれらは直近の履歴しか見てないという弱点がある。 Berger (forthcoming)は2期の記憶を持つモデルで、直近に対しては寛容という戦略がいいことを示した。 Suzuki and Akiyama (2007a,b) は大規模な集団において検討して面白いことをやってる。

ディスカッションでもう一度概観しますよ。間接互恵の研究は直接互恵の延長でやられてきた。でも人は直接互恵と間接互恵で別の戦略モジュールを持ってるわけではなさそうだ。

実験もいろいろやられているけど、人はどうやらファーストオーダーの評価しか使ってないようだ。どうやらhigh-orderな評価は認知的に厳しいらしい。

より広くとらえると、handicap principleでも説明できる。ということで間接互恵性は深いね、と。

ほとんどギリギリまで似てることはやられてるぽい。それなのに出てこないのはチャンスだからか、罠か。あとBergerの論文は探してみよう。Uchidaもマストですか。宿題ばかりが増える。

2014年7月21日月曜日

Review: Computational Approaches to Studying the Co-Evolution of Networks and Behavior in Social Dilemmas

面白そうな本のレビューを見つけた。テーマ的にはビンゴだ。しかも理論・モデル・データ検証をつなぐといっている。手法の枠組みも魅力的。早速注文したのでざっくりレビューを読む。

Review: Computational Approaches to Studying the Co-Evolution of Networks and Behavior in Social Dilemmas (Wiley Series in Computational and Quantitative Social Science): Corten, Rense,WileyBlackwell: Hoboken, NJ, 2014,ISBN 9781118636879 (hb), J. of Artificial Societies and Social Simulation,Volume 17, Issue 3.

社会的ジレンマにおける社会ネットワークと個人の特徴の共進化を、実験やらシミュレーションやらを統合してまとめる。
こ、これは。

1章では、社会的ジレンマと社会ネットワークのアウトラインをグラノベッターの理論をベースに拡張していく。特に社会的文脈は固定でも外生的でもなく個体の行動と共進化するという拡張をいれている。

2章では、ダイナミックネットワーク上のコーディネーション問題の理論モデルを説明する。しかしなんと!オピニオンダイナミクスについてはレビューしないとな。行動や意見の社会における普及を扱ってるのに。。これは著者の狙いで、コーディネーションゲームのようなゲーム理論の枠組みと、リンクが利得やコストを持つという合理的なセッティングでいくのが売りです。そしてそのあと極化とネットワーク構造のダイナミクスについてインプリケーションを引き出す。

3章ではダイナミックネットワーク上の協調問題の理論的モデルを扱う。面白いのは評判の効果はネットワーク密度が低いほど強いという結論だ。しかし、全然データとの検証をやってないやんけ。theory-model-test cycleを売りにしてるのにそれはけしからん(とレビュワー先生はおっしゃる)。

4,5章ではコーディネーションモデルを実験室実験と、調査データ(青年期のアルコール摂取?)で検証する。

とりあえず届いたら読んでみよう。あたりだといいな。

2014年7月17日木曜日

Scale manipulation in dictator games

独裁者ゲームで他者の行動を予想させるのと、その際に額を小さい側にアンカリングするのと大きい側にアンカリングするので行動は変わるかな?変わるよ、という論文。行動経済ぽいことを言われるとすぐになびくので読む。

Ockenfels, A., & Werner, P. (2014). Scale manipulation in dictator games. Journal of Economic Behavior & Organization, 97, 138–142. doi:10.1016/j.jebo.2013.11.002

10ユーロ渡して独裁者ゲーム。他のDictatorが平均いくらくらい出すでしょう?というアンケート(DI)と、recipentはいくらを期待しているでしょう?というアンケート(RE)を事前にとる。そして、その際にHighコンディション(3ユーロ以下、4,5,5以上)と、Lowコンディション(0,1,2,3,4以上)という提示の仕方をする。

学生対象にやります。実験後に独裁者ゲーム知ってる人と知らない人でわけて、知らない人を対象にする。ふむ?

DIの人では、HIGHもLOWも差がないけれど、REの人たちでは、HIGHのほうが高い額を渡している。

受取者の額を高くアンカリングされたDictatorは罪を避けたのではなかろうか。

ずいぶんとシンプルな検証だなおい。しかも本文4ページ。サプリメンタリーも対して情報が増えてないし。

2014年7月16日水曜日

Evolution of fairness in the one-shot anonymous Ultimatum Game

ダウンロードして満足どころか、ダウロードすらしてない。これはまずいので、目についたものを簡単に読む。

Rand, D. G., Tarnita, C. E., Ohtsuki, H., & Nowak, M. a. (2013). Evolution of fairness in the one-shot anonymous Ultimatum Game. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 110(7), 2581–6. doi:10.1073/pnas.1214167110

Nowak先生とニッポンのエース、最後通牒ゲームでもシミュレーションするの巻。空き地がどんどんなくなる。

ワンショットの最後通牒ゲームをABMでやる。Agentの戦略は、提案額pと受諾の閾値qで表現。選択圧と突然変異をコントロールしながら、生き残る戦略の頻度を見ます。

選択圧が弱いと、p=0.5,q=0.5だけど選択圧を強くすると,p,qともに低くなっていく。突然変異が低いほど、p,qの低下は選択圧の増加に対して早く生じる。

更に、弱い選択圧の基で、Agent数NとミューテーションuをかけたNuによってmodal strategyに変化がみられる。Nu<1では、p=q=1/3だが、Nu>1でpが上昇、qが減少してp=0.5,q=0に収束。

しまいには被験者実験もやる。詳細はサプリメントを読まないといけないので飛ばしてしまった。ただ実験でも理論的な予測を支持している、と。

2014年7月11日金曜日

自己評価、自己受容、および自尊心が互恵的対人関係意識を介して対人関係満足に及ぼす影響

またもやゼミ生が論文を輪読で持ってくる。すばらしい。まあほかの学生は全て1ページの学会発表概要しか持って来ないわけだが。おぅ・・・ガチ心理学論文だ。援助行動とかそういうあたりを研究している人たちのようだ。忘れるといけないので今のうちに読む。

田中優, & 高木修. (2011). 自己評価、自己受容、および自尊心が互恵的対人関係意識を介して対人関係満足に及ぼす影響. 関西大学社会学部紀要, 42(2), 75–92.

フレームのところはざっと飛ばして、モデルだけメモ。

自分に対する評価として、自己評価(自己嫌悪、他者評価懸念)、自己受容、自尊心
互恵的対人関係意識として、損得、互恵、返礼

これらの因子が対人関係の満足度に与える「自己評価→互恵的対人関係意識→対人関係満足」というSEMを作るよ。

関係満足を規定したのは、互恵意識と自己嫌悪(マイナス)の直接効果のみ。返礼意識に対して、他者評価懸念からの直接効果、自己嫌悪→(-)自己受容→(+)自尊心→(-)返礼意識というパスがあった。返礼意識は、どちらかというと援助してもらったことへの借金的意識。

考察:女子大の学生94人でやったし、親しい友人を思い浮かべるという指示が影響したかも。もう少し遠い人間関係を想定するとかわるかも。

たぶん著者が期待したパスはうまくひけなかったんだろうな、とは思う。しかしさすがガチ心理。モデルの立て方の丁寧さは見習わないと。互恵的対人関係意識とPGGとかSVO的なのは結びつく、、、かも。

2014年7月10日木曜日

Would you mind if I get more? An experimental study of the envy game

ねたみは怖いよねという論文?最後通牒ゲームの変形をやって、受取側のパイの大きさが決まってる状況で提案者が選ぶ全体のパイの大きさによって行動が変わるか、と。え、えぐい。

ゲスい興味で読む。

Casal, S., Güth, W., Jia, M., & Ploner, M. (2012). Would you mind if I get more? An experimental study of the envy game. Journal of Economic Behavior & Organization, 84(3), 857–865. doi:10.1016/j.jebo.2012.10.008

最後通牒ゲームをいろいろなセッティングでやるというもの。xが提案者でyが受取側。元の資金がπで、分配額がk。

Vタイプ:yが拒否しても、xはπ-k、yはkを受け取る。(怒りだけを表明)
Iタイプ:yが拒否しても、xはπ-k、yはゼロ。
Pタイプ:yが拒否したらxはゼロ。yは拒否するかどうかにかかわらずk
Uタイプ:通常の最後通牒、受けとたら x=π-k、y=k。拒否したら両方ともゼロ。

128人の被験者をランダムでペアにして、2ラウンドおこなう。V→I、I→V、P→U、U→Pがそれぞれ32組。特徴的なのはここ、xはπを選べる(8~24ユーロ)。そしてkは固定=6ユーロ。情報を増やすために、実際の実験とは別にyはそれぞれのπの大きさの時にどうするかの答える(アンケート)。

要するに、yとしては受け取れる額は6ユーロ固定だが、xがたくさん取ろうとしたらどうするか、と。

1.PとU(つまりは相手を罰せるとき)ではxの選ぶπが大きくなるほど拒否率が上がる。
2.でも実際にはXはほとんど最大値(=24)のπを選んでる。
3.結局Pタイプではxの利得は低くなっている。

妬みは競争下でペイオフのトレードオフでおこると言われている(ケーキをたくさん取られたとか)。しかし部分的には競争環境になっていない状況でもおこっているよ。

似た様なセッティング(kは固定じゃなかった記憶だけど)を山岸先生達がやってたような気がするけど、比較されてないから違いがよくわからなかった。SVOも似た様なものを測っているのかな。でもそれにも触れてなかった。

成功した人を叩くのは人間の性。ゲスい興味は満たされた。

2014年7月8日火曜日

Making sense of information in noisy networks: human communication, gossip, and distortion

JTBで情報拡散とABMが載ってる。しかも情報の多数派採用の効用とかを調べるのか。これは面白そうなので読む。

Laidre, M. E., Lamb, A., Shultz, S., & Olsen, M. (2013). Making sense of information in noisy networks: human communication, gossip, and distortion. Journal of Theoretical Biology, 317, 152–60. doi:10.1016/j.jtbi.2012.09.009

ノイジーな噂がネットワーク上に流れているとして、どんなシンプルな意思決定ルールが成功するかABMでやるよ。「Bit-wise mode」戦略が一番好成績で、それは、情報の各ビットのマジョリティを選ぶ戦略です。

モデル:エージェントは150、ネットワークはランダム、スモールワールド、スケールフリー。150というのは人間のコミュニケーションサイズとしては妥当な近似なのだよ。

エージェントはメッセージを発信してそれが伝播する。受け取ったメッセージを送り手に返すということはしない。ちなみにメッセージは、0/1のビット列(長さ20)でやる。なぜかっつーと長さ色々かえたけど結果はかわらなかったから。ランダムに選んだいくつかのエージェントが起点となって情報の伝播開始。繋がってるエージェントに連続して伝播していき、拡散する相手がいなくなった時点で終了。大体5.5stepで拡散完了している。

Distorterは情報を流す時にビットを反転させる。反転させるビット数、Distorterの数はシミュレーションによっていろいろ考える。後述するので待て。

AgentがNoisyな環境でどのようにメッセージを信用するかには3つの戦略を考える。
Standard:メッセージ全体のマジョリティを信じる
Bit-wise:各ビットの最頻値を採用する
Random:どれか一つのメッセージをランダムに信じる

Memoryに関して。モデルでは異なるタイプステップにメッセージが発信される。だから何度もメッセージを受け取ることになるんだが、完全記憶(受け取ったものをすべて覚えておく)、限定記憶(前回受け取ったものだけを覚えていられる)の2パターン用意する。

Fitnessは、エージェントが信じたメッセージと真実メッセージの一致度。100回のreplicationをやってネットワークやDistorterの位置などは全部異なる。論文と関係ないけど、シミュレーションの乱数変えた繰り返しはreplicationが一番よく使われてるような。JTB系なのか、これが世界の流れなのか。

1)Small-Worldで(Deg=7,β=0.5(張り替え率?書いてない))、Start Observer=5で、Distorterの数を0-150で動かす。エージェントの戦略は均一(Rndom/Standard/Bit-wiseのどれか)。Distorterが増えればFitnessは下がるけど、Bit-Wiseモデルが一番優秀。ちなみにDistorterのビットの乱し方はいろいろやったけど結果はほとんど一緒。

2)Bit-wise + (Standard or Random)で人口比率を変えてみても、やっぱりBit-Wiseが優秀。しかもStandard+RandomだとDistorterの数によらず変化なしかつ両者のFitnessが等しい。

3)Observerの数が多いほど、次数が高いほど、Bit-wise戦略のFitnessは向上する。

Bit-wiseの勝利は、利用可能な情報源の数が多くなるからだ、とか色々と言葉で説明。

戦略のコントロール(2者の存在比を変えて3つの組み合わせでやるとか)が結構雑な気がする。あと戦略ごとのFitnessを計算してるのに進化シミュレーションにもしていないし。結果を導くメカニズムもあまり詳細に検討されてないような。

とはいえ、情報伝播をABMでやったよというのがJTBに載るのを知れてよかった。あと結構使えそうな材料は詰まった感じの論文だったのであたりだ。

2014年7月6日日曜日

Spontaneous giving and calculated greed

Nowak先生、人間は「先天的」に協調的だという実験をする、の巻。Natureに連載持ってんじゃないかというくらいよく出てる。PGGで決断までの時間が短いと(直観的だと)協調的という実験。

さすが世界のトップランナーは違うなぁとしみじみしながら読む。

Rand, D. G., Greene, J. D., & Nowak, M. a. (2012). Spontaneous giving and calculated greed. Nature, 489(7416), 427–430. doi:10.1038/nature11467

人々はもともと利己的で、自身をコントロールすることで協調的にふるまうのか、もともと協調的なんだけど、合理的に考えることで利己的になるのか。

ということで実験をする。AmazonのAMTという労働市場を使うよ。普通に大学生使うより多様だし。

結果としては速く決断するとより協調的、また速い決断を強制するときのほうが遅く決断させるより協調的。

1.PGGをやる。決断時間を横軸に、協調率を縦軸にとると見事に右肩下がりになるよ。10秒で区切って検定しても有意。

2.今度は10秒以内に決めさせるグループと、10秒必ず待ってからのグループで比較する。ワンショットPD,繰り返しPD,繰り返しPGG、どれでも時間が短いほうが協調的。また、大学生相手にやってみても一貫している。また、被験者に相手の貢献度を予想させると急がせた群のほうが低く見積もっている。

3.続いてプライミングを使う。被験者は「直感でうまく行ったことか、よく考えて失敗したことを書く」グループと「直感で失敗したことか、よく考えて成功したことを書く」グループに分かれる。これがプライム。そしてワンショットPGG。これまた直感が良いことをプライムした組が協調的。

なぜか?著者曰く、人々は日常生活のコンテキストで直観を構築している。そして我々の日常生活では多くの関係が繰り返しだから、協調的な戦略が優位なことが多い。だから直観では協調的にふるまっている。しかしよく考えることで協調が有利でないことに気付けると選好がかわる。

このように人間は一貫した一つの社会的選好を持っていないことを考えると、より認知的に複雑な経済モデル、協調の進化モデルが必要でしょう。

またこれらの結果を基に考えると、協調は文化伝播やsocial learningの結果ではなくて「先天的」であり遺伝的なものに結びついていると言えるだろう。
そしてこの結果は子供を対象とした研究の結果とも一貫する。

組み合わせてみたいアイデアがあるけど、実験一緒にやってくれる人いないかな。

2014年7月5日土曜日

Going green to be seen: status, reputation, and conspicuous conservation

reputationとcostly signalingとは面白そう。エコ製品買うのは見られるためだって。えーと、要するにエコもロハスもモテるため、っていうことでよろしかったでしょうか。

よろしくないだろうから読む。

Griskevicius, V., Tybur, J. M., & Van den Bergh, B. (2010). Going green to be seen: status, reputation, and conspicuous conservation. Journal of Personality and Social Psychology, 98(3), 392–404. doi:10.1037/a0017346

なんでひとは「グリーン」な商品を買うのか。それは利他的な行動ではないか。コストもかかるし品質だって劣る(なんというぶっちゃけ)。

これはコストをかけたシグナリングとして理解できるのではないか。

3種類の実験をやったところ、activating statusがグリーンな商品の購買をもたらす。要するに、ステータスに関する競争環境だと、それを高めるためにグリーンな商品を買うような環境志向の行動を促すと。

競争的な利他主義とシグナリングは昔から言われてる。たとえば、ネイティブアメリカンにおいても、他者に資源をたくさん与えられる人がグループ内で高い地位を得る。とはいえ、利他主義はコストがかかるのだから、理論的には利他主義がサバイブするというパズルは難しい。

Kin Selectionとか互恵主義とかいろいろあるけど、注目すべきはシグナリングセオリーですよ奥さん。ザハビ先生からこっち、動物界、人間の行動でずっと研究されてきてる。

というわけで、車を選ぶシーンです。ディーラーで贅沢な車、エコな車、などなどから選ぶときに、人が人の目を気にしたらどうなる?従来の知見では、富の象徴として高い車を選ぶでしょう。しかし、高い車を選ぶという予測では、その人が社会的な効用より自分の効用を選ぶセルフィッシュな人だとみなされるということを考慮してない。

実験1:
同じ価格のグリーン商品と贅沢商品から選ぶ。168人の大学生を使うよ。少人数グループにわかれてパーティションで区切られたPCの前にすわる。

Status群は実験の前に自分をイメージしやすい大学生のサクセスストーリーを読む(卒業して大企業に入ってバリバリエリートになったぜ、みたいな)。そうするとControl群とくらべて圧倒的に、社会的地位や名声への欲求が高くなる。例えば:(6.63 vs. 1.97 on a 1–9 scale, p < .001, d = 2.4)。ほんまかいな。

ポイントは、サクセスストーリーの中では、どうしたら成功するのはプライムしてない。例えば自己犠牲やProcosialな行動が有利とは一言もいってない。

その後、車、空気清浄器、食器洗浄機を選ばせる。これらは同じ価格で、贅沢な機能なほうと、Greenなほうに分かれている。で、別の112名の大学生に、これらの商品を持っている人がどれくらいイケてるか(素敵で、優しくて、利他的)を評価。当然、Greenのほうがいけてると評価された。

見事に、Status群はGreenな商品を選んでました。

実験2:
シグナリングセオリーによれば、シグナリングは自分の行為が相手に見られるかどうかがキーとなる。ということで、購買行動がパブリック(店で買う)なのかプライベート(ネットで買う)なのかで行動が変わるかを検証する。

93名の被験者で実験1と同様のセッティング。今回は、Status×Control、Public×Privateの4通りです。Statusのコントロールは実験1と同様で、Publicでは「店で買っていることを想像して」、プライベートは「家でネットショッピングしてると想像して」。ば、場面想定。しかも近だけシンプルで。本当に影響でるのかね。さすがに車とかはネットショッピングしないので、バックパック、バッテリー、テーブルランプでやった。

なんとなんと、パブリックではステータス群のほうがグリーン商品を選ぶんだけど、プライベートではステータス群はぜいたく品を選んだ。つまり、costly signalingの観点から見ると、誰かに見られていて自分の評判に影響を与えるときにだけ、人はエコ商品を選ぶ。エコ商品を選ぶということがシグナリングになってるのだ。

実験3:
色々やったけど、先行研究では逆の結果も出てたりする。価格の問題が大きいのだろう。自分たちの研究では、両者の価格は等しいということにしている。しかしたとえばGreenのほうが安かったら、シグナリングとしてはジレンマに陥る。

ということで実験。156人の学生つかってこれまでと同様なセッティング。Status×コントロール、Greenが高い×安いの4パターンでいく。

結果どーん。お見事にControl群では、安いGreenが好まれるけど、Status群では安いGreenは好まれず、逆に高いGreenが好まれる。主効果も交互作用もでてる。

限界やらいろいろあるけど、costly signalingで評判を高めて集団の中での優位を築くってのはありでしょう。

エコもロハスもモテるため。

しかし、単純なカバーストーリーと場面想定でこんなにもきれいに出るもんなんだ。

2014年7月4日金曜日

Exploring the links between personality traits and motivations to play online games


オンラインゲームのプレイ動機と心理特性の関連を探る、とな。
卒論生のテーマとまるかぶり、というかやっぱりやられてますよねそりゃ。

隙があるといいなぁという邪な心をぐっとこらえて読む。

Park, J., Song, Y., & Teng, C.-I. (2011). Exploring the links between personality traits and motivations to play online games. Cyberpsychology, Behavior and Social Networking, 14(12), 747–51. doi:10.1089/cyber.2010.0502

人の心理特性とオンラインゲームをプレイする動機の関係を探る。
心理特性でゲーム特性が規定できるか、あとはゲーム上の行動(プレイ時間とか)も回帰で予測する。
因子分析したら5個の因子が出てきた(relationships, adventure,escapism, relaxation, and achievement)。
extraversionとagreeableness(外向性と感じの良さ(?))が色々な動機を予測するが、プレイ時間やスコアなんかとは関係しなかった。

韓国の5大学500人ちょいの学生を対象にした。
デモグラ等々はいろいろとして、68%がオンラインゲームを5-10年やったことがある。
また52%は日に30分以上プレイする。
ていうかオンラインゲームをやったことのある割合はいくつだ。書いてない。まさか100%じゃないだろうね。

パーソナリティはbig5を聞くTIPIという10アイテムの質問項目群を使った。
オンラインゲームプレイ動機は、いろんな参考文献に加えて独自に学生にインタビューもして決めたよ。
81個の項目を作ったけど、インタビューやらいろいろやって減らしていった。

で、19項目で5因子を抽出。それがrelationships, adventure,escapism, relaxation, and achievementだ。

そんでもってTIPIの項目と、Gender/Ageで、これらの因子を予測する重回帰をやる。
独立変数は、外向性(extraversion)、快適さ(agreeableness)、誠実性、情緒的安定性、経験の開放性 、性別 、年齢

女性のほうが関係性動機が強い。これはそうだろうね。
あと年齢が現実逃避にプラス。悲しいこった。

それにしても外向性がゲーム動機にプラスとはなんでだろう。
あまりそこには踏み込んでない。

なんかの動機を因子分析で抽出して他の変数も聞いといて重回帰でよっこらしょ、というのは一体どういうk、あれ、自分の首が絞まってきたぞ。


2014年7月3日木曜日

集団中心主義というパズル


小野田(2013)の元論文。

埼玉大の紀要なんてこんなことがなければ目を通す可能性は無かったろう。

一期一会、とは違うけど読む。

高木英至. (1995). 集団中心主義というパズル. 埼玉大学紀要, 31(1), 17–40.

「引用:ではなぜ、集団中心主義はかくも頑健に社会の中で生き続けるのか?癒るあてのない水虫のように、時期が来ればわれわれの目の前に現れるのはなぜか?」

論文の中でこの表現。かっこよすぎる。

集団中心利他主義を説明できそうな理論は「社会的アイデンティティ」「類似性-魅力原則」「血縁選択・遺伝的類似性理論」などがあるけど、筆者は「Allisonの文化的進化論(文化的標識)」だ。

社会的アイデンティティ:自尊感情を満足させるためには、所属集団を外集団より優位に(好意的に)扱う必要がある。でも、態度レベルならまだしも利他行動まで説明できるのか?また適応的にこういう戦略が有利なことを説明できない。

類似性:類似性が対人魅力を高めるというByrn,1971の理論も、同様に適応的に有利かどうか言えない。

血縁選択:適応有利性としては説明力があるけど、社会の集団中心主義には遺伝的類似性では説明できないだろう。ただ、血縁的な利他性が「汎化」できるなら説明としてはいけるかも。

ということで、Allison(1992)の文化的進化論がいいと思う。

(a)ある標識を認識する
(b)同じ標識を持つ他者に利他的になる

しかし、(1)文化的標識を表示しながら義務を履行しない(フリーライダー)に無防備、(2)標識を必要としない利他戦略より有利と言えるのか?(3)相互に違う標識に寄付する(結託みたいな)規範も同等の利得を挙げるはず。けどそういう規範はほぼ見当たらない。

ということで、シミュレーションをやります。Givingゲームで記述できるでしょう。

気になってたマッチングはやはり、選別基準を満たす相手を抽出してからn人を選択して寄付している。やっぱり、この点ですな。ランダムマッチで、C/Dを選択しないと、結構当たり前の結果じゃないだろうか。ちがうのかな。

シミュレーションはほぼ小野田(2013)と同様。
内集団ループを持つ戦略が優位となる。
ただ、古い論文なので計算パワーの問題からか、設定はかなりミニマム。
というかそれを改善したのが小野田論文か。

紀要だからなのか、表現の豊かさ(自由っぷり)が印象的。
追加で検討しているモデルのセッティング名が「放蕩息子の勝利」「孝行息子の逆襲」だ。素敵すぎる。しかしそこに注目してどうする、自分。

マッチングが独特なのは気になるけど、対戦相手の選択可能性(選べるかどうか)をパラメータにした研究を2014春の数理社会で聞いたので、このあたりの組み合わせで新しいことできるかも。

2014年7月2日水曜日

Motivations for play in online games


卒論生がソーシャルゲームの研究するっていうのでバートルテストの関連論文探してたら出てきた。著者はオンラインゲームとかの研究をかなりやってるらしい。


バートルテストなんてファッキンだぜという論文。ふむふむ。
卒論生のテーマとジャストミートだから読む。

Yee, N. (2006). Motivations for play in online games. Cyberpsychology & Behavior, 9(6), 772–775. doi:10.1089/cpb.2006.9.772

ソーシャルゲームの参加動機を整理するよ。

バートルモデル(Bartle's Player Types)はMUDのモデルとしてよく知られているけど、全然経験的に検証されてない。
だいたい、どれか一個(achieve だったら exploring, socializingじゃないとか)にしてるのはだめだ。
それぞれの要因が独立かどうかもテストされてない。

というわけでオンラインゲームの動機モデルを因子分析で抽出します。

Bartleモデルと、MMORPGに関するサーベイから40個の項目を聞く。
ゲームサイトから3000人ぶんのデータを集めた。
10因子抽出した。分散説明率は60%。
更に additional PCAというのをやって、10個の因子を分析したら3つの上位概念がでてきた。

【Achievement component】
Advancement ゲーム内の力への欲求、素早くクリアでき、高いステータスや富がほしい。
Mechanics キャラクターのパフォーマンスを最適にするためにゲームのルールやシステムを分析することへの興味
Competition 他者と競争し挑戦する欲求

【Social component】
Socializing 他のプレイヤーとチャットしたり助けたりすること対する興味
Relationship 他者と長期間の意味のある関係を築きたいという欲求
Teamwork グループの一員としての努力から満足を得る

【Immersion component】
Discovery 多くのほかのプレイヤーが知らない物事について発見・知る
Role-Playing ストーリーの上でペルソナを作ったり他のプレイヤーと即興の物語を作る
Customization 自分のキャラクターの概観をカスタマイズする
Escapism 現実逃避。オンライン環境に浸ることで現実世界での問題を考えなくて済む

バートルのいうように、どこかのタイプにユニークに所属ってことはないよ。
その証拠に3つのコンポーネントの相関は低い(r<.10)。

さて、メインの仕事はここまで。

ついでにデモグラフィックで分析もする。

男はすべてのコンポーネントで女より高い。
でも、relationshipだけは女のほうが高い。

問題利用を従属変数にして重回帰もやってみた。
escapismが最も強い予測力(そりゃそうだ)。ほかには、ゲームプレイ時間、advancementが有意。

この論文をベースにしてパーソナリティとの関連を見た論文があるらしい。読まねば。
というか卒論とまるかぶりだ・・・。あぅ。


2014年7月1日火曜日

内集団ひいき行動の適応的基盤 : 進化シミュレーションを用いた検討

あっという間に3日坊主の危機。

この論文、2月に読んで、触発されて発展モデルまで組んだのに、結果が芳しくなくて放置中。
モデルを一般化して結構きれいにしたんだけどな。でも派生して思いついたのが進行中。

芳しくない結果を復活させるためにもう一度読む。

小野田竜一, & 高橋伸幸. (2013). 内集団ひいき行動の適応的基盤 : 進化シミュレーションを用いた検討. 社会心理学研究, 29(2), 65–74.

公共財ゲームで、個人を2種類にラベリングする。
単純にラベリングがあるだけで、内集団ひいきが加速してしまうのではないのか?それが集団主義を招くのでは?というクエスチョンに答える。

個人は誰に資源を提供するかを2つの基準で選ぶ。
1)集団の選択:内集団、外集団、全集団
2)行動の選択(t-1のスコア・行動による選択):誰でも、寄付した、内集団に寄付した、外集団に寄付した、Goodに寄付した、内集団のGoodに寄付した、外集団のGoodに寄付した
その他に例外として、ALLD戦略がある。

ゲームの構造が独特。
資源Bをm人に分割して寄付する。その際のmの選別が上記の基準に従う。というか上記の基準を満たす人のうちm人を選んで分割配布する。
なんでこんな設定なんだろう。
というか、マッチングがランダムじゃなくて、N人集団から自身の選択基準でGoodとなるメンバーを抽出して、その中からm人を選んでいる。
「引用:第1試行において 外集団の成員にすべての資源を提供していた個体をGoodとみなし、その中からm人の外集団成員に資源を 提供する。」

ホワイ?これが結果を導くキモでは。最初に読んだときはスルーしてしまいランダムマッチかと思ってた。

結果:
「内集団のGoodにだけ提供する個体をGoodとみなし、内集団のメンバにだけ寄付する(I,I*)」という内集団ひいき戦略が適応的。
また、内外の両方に必ず提供する、という戦略を導入すると、内外提供するGoodのみをGoodとする(I&O,I&O*)、戦略と(I,I*)が共存(両方強い)。

理由:
それぞれ、自分と同じ戦略にだけ寄付するから。
他の戦略は自分以外にも寄付してしまうため、適応的なのは厳しい同じ戦略のみを評価する戦略だ。

それにしてもこのリサーチクエスチョンは面白い。
まだまだ鉱脈が眠っていそうな感覚。