2014年9月20日土曜日

感情予測におけるネガティブ経験の効果 : 経験は他者の感情予測に役立てられるか

後期の準備がぜんぜんおわってない。というか手を付けてなかったりもする。まずい。まずいけどやる気が起きないので論文でも読む。

桑山恵真, & 工藤恵理子. (2010). 感情予測におけるネガティブ経験の効果 : 経験は他者の感情予測に役立てられるか. 社会心理学研究, 26(2), 109-118.

人はネガティブやポジティブな出来事がおこった後の感情の予測をする時に、その感情の持続に対して過大評価する傾向があることがわかっている。この傾向はけっこう再現性がある。これはネガティブな出来事を実際に経験したときには正当化や自己高揚などの心理的な免疫システムが働くにもかかわらず、人がそのシステムに気付かない(免疫無視)が原因である。

例えば、もし失恋したらどれくら辛いだろうという予想と実際に失恋した後の辛さでは予想の方が辛かったりする。それだよ、と。(えー、そうだっけ・・・?)。まあいいや。

まあその理論に従いますと、これは経験したときにはネガティブな出来事が深刻であるほど強力に働くと考えられるから、経験したことのネガティブ程度が大きいほどこの効果は大きいだろう(これってポジティブ方向にはどういうエラーがおきるんだろう?)。今回はネガティブな経験を実際に体験した時と、ネガティブな体験をしたと想像したときに、それぞれどの程度ネガティブな度合いを感じるのかと言う実験をおこなう。

仮説1:実際にはネガティブな経験をしない人は、した人の実際の感情よりネガティブに予測する。またこのバイアスはネガティブ度合が強いほど大きい。
仮説2:予測する場合、自分に対しても他者に対しても同程度にネガティブに予測する。経験者は自分がそれほどネガティブな感情ではないはずだが、他者に対してはネガティブが持続していると予測する。

実験計画はこんな感じ。評価対象(自己の感情・他者の感情)と判定(B判定・D判定)と役割(予測者・経験者)の3要因。統制変数として、ベースライン感情、試験の結果をどう正当化したのかの尺度。経験者条件の被験者は、能力テストに解答する。彼らはB判定・D判定をランダムに受け取って、5分ほど待たされてからその時の自分の感情と他者の感情の予想を回答。予測者条件では、実際にはテストに解答せずに架空の成績をうけとり、5分後の自分の感情と他者の感情を予測して回答。

結果。まずは妥当なところで、B判定のほうがD判定よりポジティブ。予測者・経験者の役割の差も有意で、予測者の自己感情予測より、経験者の自己感情のほうがポジティブ。つまりは持続性バイアスが確認できる。また、持続性バイアスはD判定のほうが大きかった。つまりはよりネガティブな出来事のほうが持続性バイアスは大きい。仮説2に関しても分析してるけど略。とりあえず仮説は支持されてましたよ。

要するにネガティブな経験で生じるネガティブな感情に対して、実際よりも大きなマイナスで予測してしまう「持続性バイアス」が存在するということ。プロスペクト理論とあわせてやったら面白そう。

2014年9月16日火曜日

表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響

夏休みのゼミで学生が持ってきた、のだが、何を発表しようとしているのかまったくわからなかったので自分で読む。

大薗博記, 森本裕子, 中嶋智史, 小宮あすか, 渡部幹, & 吉川左紀子. (2010). 表情と言語的情報が他者の信頼性判断に及ぼす影響. 社会心理学研究, 26(1), 65–72.

信頼ゲームをする際に相手を信頼する基準として表情と言語情報のどちらをどの程度シグナルとして利用するのだろうか。

Scharlemann et.al.(2001)の研究では真顔と笑顔の写真を見せてそれぞれに提供額を決めさせると笑顔の方が提供している。笑顔表出には文化差があり、かつ性差もあるだろう(なんとメタ分析がある)。更には言語情報がどのような効果を持つのかも検討する必要がある。言語情報は簡単に偽装できるため、表情よりリライアビリティは低なるだろう。また、同時に提示された時には、信頼が強化されるのか、欺くための過剰な情報とみなされるのかわからない。仮説を立てるのではなく探索的に検討する。

表情の情報として男女の写真、言語情報としては写真の横に「カンニング可能な状態でカンニングするか」「友人に借りたものに小さな傷をつけたら正直に言うか」に対する回答を「高い」「やや高い」「中程度」になるように付けておく。

結果。笑顔のほうが真顔より信頼されるという結果は女性においてのみさいげんされた一方、言語情報の主効果は有意だった。などなど。ざっくりした結果をまとめると、表情より言語情報のほうが効果量が大きい。言語情報が高いという条件においてのみ「真顔」のほうが提供額が大きくなる。

表情の効果に関しては先行研究とは一致していない(先行研究では性差はでてない)。これは文化差などいろいろ検討する必要がある。

一方、言語情報に関しては偽ることが容易なために効果が小さいと予想してたけど、実は大きかった。嘘は事後的により大きな罰を受けることがわかっている。Brandts&Carness(Management Sci.,2001),Ohtsubo et.al.(Evolution and human behavior,in press)では、嘘をついて裏切るのと、ふつうに裏切るのでは嘘をついたほうがパニッシュ大きいことが示されている(2013年の社会心理学会でも嘘をつける時に裏切ったプレイヤーがALLDより信頼されないっていう実験があったような)。

今回は事後的な罰はないけれど、日常的にこのようなシグナルが有効であるなら、それが判断の手掛かりになった可能性も考えられる。

ふーむ、2次のジレンマが実システムで解決されてる仕組は予想のエラーとシステム1のデフォルト戦略、でモデル化できるのかなぁ。

2014年9月13日土曜日

原発依存の是非をめぐる世論の動向

原発問題を題材とした沈黙の螺旋の論文が刊行されました。

Twitterにおける意見の多数派認知とパーソナルネットワークの同質性が発言に与える影響:原子力発電を争点としたTwitter上での沈黙の螺旋理論の検証

ものすごくお世話になった宮田先生との共同研究。まだまだ教わりたいことは山積みだった。これから良い研究をすることで恩返しするしかない。

原発と沈黙の螺旋ということで研究対象がまさに一致してるので読む。

今井亮佑. (2013). 原発依存の是非をめぐる世論の動向. In 原発政策を考える3つの視点-震災復興の政治経済学を求めて(3) (pp. 65-98). 早稲田大学出版部.

原発問題に関する沈黙の螺旋が調査方法の違いによって生じるかどうかを検証する。発言意図などを取るのではなく、ただシンプルに世論調査の回答自体にも沈黙の螺旋が生じるのではないかという発想。というのも、世論調査では「調査員が回答を入力する(CAPI)」と「自分で回答を入力する(CASI)」がある。CAPIでは回答そのものが公的な発言(にちかいもの)として捉えられる可能性があるので、社会的望ましさバイアスがかかるだろう。すると、それにひきずられて回答がずれるはず。つまりは、孤立への恐怖にかわって、社会的望ましさバイアスが沈黙の螺旋を引き起こす可能性がある。

そこで、原発反対が多数派という世論調査結果を示した群、原発維持が多数派という結果を示した群、コントロール群の3つでCASI/CAPIの世論調査をおこなう。CASI(自分で回答)では3群の間に差はないけれど、CAPIでは原発維持が多数派という結果を示した群において、原発維持という回答が有意に高い。また、高学歴ほど世論の動向を気にするという先行研究があるが、その通りに高学歴ほど現状維持が多数派と知らされたときに、現状維持を支持する率は高くなっている。

なるほど。調査員へ回答を伝えることは公的発言という捉えられ方なのか回答の匿名性が減少するのかどっちだろう。自分たちのデータでも匿名性を聞いておけばよかった。ヘタこいたー。それにしても、まだ分析してないデータも残ってるので早くやらないと。

2014年9月11日木曜日

社会的ジレンマにおける協力促進要因としての規範の過大視

2次のフリーライダー問題は実はそんなに存在しないんだということを実験で示す。メタ規範をおずおずと後ろ手に隠しながら読む。

小野田竜一, 松本良恵, & 神信人. (2009). 社会的ジレンマにおける協力促進要因としての規範の過大視. Center for Experimental Research in Social Science Working Paper Series, (92).

社会的ジレンマ状況にサンクションを入れるとうまくいくという話はあるけど、2次のフリーライダー問題があるから理論的にはサンクションでもうまくいかないはずだ。しかし現実には1次のサンクションがあればうまく機能していることが多いじゃないか。なぜだ?その謎を検証する。

想定するロジックは次の通り。公共財ゲームで協調する人には「サンクションがあってもなくても強調する(属性的協力)」と「サンクションがあるなら協調する(状況協力)」の2タイプがある。属性協力者は信念をもって協力しているのだから罰も行使するだろう。しかし状況協力者は罰を行使しないはずだ(なぜなら彼らは可能ならフリーライドしたいひとだから)。しかし状況的協力者の協調行動も属性的協力の協調行動も、行動としては協調なんだから外部的には区別できない。ということは、状況協力者にとっては罰してくる可能性を高く見積もってしまうのではないか。これが螺旋的にきいて協力が維持されるのではないか?

H1:状況協力者は実際の罰行使額よりもたかく罰行使額を見積もる
H2:状況協力者の予想する額は属性協力者に限った時の罰行使額に近い

実験します。授業中に報酬を払ってPGGをやる。サンクションなしのPGGとサンクションありのPGGをやって、それぞれC/Dとサンクションするかどうかを聞く。

結果、見事にH1,H2ともに支持されました。また、最後に「サンクションをする/される両方」「されるだけ」「するだけ」という立場に割り振ってみたところ「するだけ」の人たちが裏切りにスイッチする率が高い。これは内発的動機付け(サンクションがあると規範が取引に変わってしまう)で説明できるのではないか。

面白かった。確かに2次のサンクションは理論的には簡単に書けるけど現実でいうと(メタ規範をやってる身としてはつらいが)あまり見かけない。その理由が、サンクションの見積もりを誤るために予言の自己成就的に協調が成立するというのは美しいストーリーだ。

2014年9月8日月曜日

Social influence promotes cooperation in the public goods game

今年のESSAはまあまあ面白かった。そして英語論文がないとまったくもって話しにならないことを改めて実感。いやー。

Physicaが案外自由なんじゃないかと思って協調系の論文も読む。

Wu, T., Fu, F., Dou, P., & Wang, L. (2014). Social influence promotes cooperation in the public goods game. Physica A, 413, 86-93. doi:10.1016/j.physa.2014.06.040

公共財ゲームで個人の影響力を考える。モチベーションとしては、従来の公共財ゲームでは戦略のコピー相手はランダムに選ばれるけど、実際の社会では個々の影響力は異なるはずだ。ラティスでノイマン近傍でプレイする公共財ゲームを使う。

個人の影響力をθi(t)として、iがjをコピー相手として選ぶ確率Ai_j=θj(t)/Σθk(t)とする。
そんで選ばれた相手jの戦略に変化する確率がW=1/(1+exp[(Pi-Pj)/k])。kが淘汰圧。θj(t+1)=θj(t)+αで選ばれた相手の影響力は増加する。
α=0なら従来のモデルと同じだ。

これはこれで進化の方法だけどGAだったり模倣だったりとの本質的な差はどこなんだろう。モヤモヤ。自分の研究もきっとこういうモヤモヤを振りまいているんだろう。気を付けよう。振りまくほど読まれてないという可能性は無視。

正規化のためにη = r/G(rは公共財の増幅率、Gはプレイヤー数(ノイマン近傍なら5)を導入する。良く知られているように(知らんかったが)空間公共財ゲームではη>0.76で協調が生き残る(A. Szolnoki, M. Perc, G. Szabo, Phys. Rev. E 80 (2009) 056109.)。へえ。これも読まなくては。

横軸η、縦軸協調率にして、いくつかのαでグラフを書くとαが大きいほうがα=0より協調が促進されている。

で、影響力の効果を見るために、θを0.2刻みで区切ってC/Dの存在比を見てみる。αが大きい時を見てみるとθが大きいプレイヤーはCの比率が他に比べて高い。

αとηの平面で協調率のヒートマップを書いてみると、C=0になるところとC=1になるところに2つの閾値が見える。また、αを変えて進化のスピードを見ると、最終的な協調率と各αにおける協調の上限に達するまでの時間にはトレードオフがある。

最後にBAとSWネットワークでも検証する。やはりαが大きいほうが(すごく微妙なんだけど。。。)協調の進化が速い。BAモデルではかなり早くてη=0.5あたりで立ち上がっている。ちなみに二次元ラティスでは0.7-0.8くらい。しかしSWでは0.8ではまったく協調が進化してない。

というわけでSocial influenceを導入するのは協調の進化に有効です、と。すいません、メカニズムに関してノータッチなんですけど。。自由ばんざい。

2014年9月6日土曜日

Intracultural diversity in a model of social dynamics

見事に1か月の夏休み。ダウンロードして満足どころかチェックすらしてない日々。いかんいかん。

ESSA2014で自分たちの発表と似たことやっている人からコメントもらった。ついでに論文も送ってもらったので読む。

Parravano, A., Rivera-Ramirez, H., & Cosenza, M. G. (2007). Intracultural diversity in a model of social dynamics. Physica A, 379, 241?249. doi:10.1016/j.physa.2006.12.032

Axelrodのモデルにちょい足し。

Axelrodの発展はいろいろやられてる。統計物理系では、文化の多様性の非平衡相転移がおこる(ベクトルの長さと深さによって)ことが示されてきてる。あとはノイズの影響とかマスメディアの影響とか。トポロジーもやられている。でもこれまでの研究群はAxelrodモデルに忠実だから、かならずホモジニアスな文化が1つないしはいくつか残るという結果になる。ということで我々は、相互作用に制約を設ける。というのも個人は、隣人との間で少しは違うアイデンティティを持とうとする傾向があるからだ。

こ、この1行でモデルの妥当性というか意味を説明しちゃっていいのか、Physicaは。なるほどねぇ。ここを狙おう。このままさっくりとモデルとシミュレーションに入る。

特徴ベクトルの長さF,深さqとして、元のモデルではビットの一致率ω(i,j)/Fで相互作用するかどうかが決まるけど、Fdという相互作用の上限を設定する。0 < ω(i,j)/F < F - Fd この条件を満たした時だけ相互作用。Fd=0ならアクセルロッド、Fd=Fなら相互作用は全く生じない。

シミュレーションをやった。N=400,F=11,q=10,Fd=1。結果、当然に見えるんだけど1ビットずつずれた文化群が残存する。ですよねー。

ここから統計物理的な特徴をみていく。まず、qを増やして最大文化のサイズの推移をみると、Fd=0では1からスタートしてあるところで急激に減少。Fd=1では0.1からスタート、Fd=2なら0.01、Fd=3なら0.002あたりからスタートして、やはり減少する。その他、Fdを変化させて、最終段階のω(i,j)の分布を見たり。

結論。モデルの特徴をざっと説明してる。このモデルの良さは、文化的なグラデーションを表現するのに使えるだろう(方言とか料理の習慣とか)。

このモデルで本当に文化のグラデーションが説明できたかとか、その辺の検証は一切なくて、あとは観察指標(最大文化サイズ、ランクごとのサイズの分布とか)が何なのかも特に説明はない。Physicaはこういうのでも通るのかぁ。いまやってるやつはPhysica方面にいけるようにまとめよう。そうすると統計物理ぽい処理が必要なのかな。

2014年7月31日木曜日

Moral assessment in indirect reciprocity


なんと10日もサボっていた。Webに晒してなければこのまま忙しいってことにして逃げてたところだ。

評価戦略に着目した間接互恵のざっくりとしたレビュー。今やってるやつがガッツリやられてたらどうしよう。ずいぶん前にダウンロードしたのを今更ながら読む。

Sigmund, K. (2011). Moral assessment in indirect reciprocity. Journal of Theoretical Biology, 299, 25–30. doi:10.1016/j.jtbi.2011.03.024

ジグモンド先生が間接互恵性について語るよ。間接互恵性論文をざっとレビューする。とくに評価戦略に注目する。

Givingゲームの間接互恵性について説明しつつ、Ohtsuki(2004)のリーディング8までざっと説明。で、いままではAll-C,All-D+ある戦略、というセットだったけど、たとえば、MILDとSTERN(ISとSDISCのことか?)が同時にいたらどうなるかっていうのは問題だ。リーディング8は、他の行動戦略に侵略されないことを示しているけど、他の評価戦略に侵入されないとは言っていない。

ALL-C,All-D,STERN,MILDでRDをやるとbistableになる(Uchida,Sigmund,2010)。でもこれは、完全情報(全員が全員のスコアを知っている)だけど、非現実的だ。ということで、スコア(i -> j)をアップデートできる確率qを導入した Uchida(2010)。これは情報の状態の重要性をqでコントロールできる素晴らしいモデルだぞ。

ただこれらは直近の履歴しか見てないという弱点がある。 Berger (forthcoming)は2期の記憶を持つモデルで、直近に対しては寛容という戦略がいいことを示した。 Suzuki and Akiyama (2007a,b) は大規模な集団において検討して面白いことをやってる。

ディスカッションでもう一度概観しますよ。間接互恵の研究は直接互恵の延長でやられてきた。でも人は直接互恵と間接互恵で別の戦略モジュールを持ってるわけではなさそうだ。

実験もいろいろやられているけど、人はどうやらファーストオーダーの評価しか使ってないようだ。どうやらhigh-orderな評価は認知的に厳しいらしい。

より広くとらえると、handicap principleでも説明できる。ということで間接互恵性は深いね、と。

ほとんどギリギリまで似てることはやられてるぽい。それなのに出てこないのはチャンスだからか、罠か。あとBergerの論文は探してみよう。Uchidaもマストですか。宿題ばかりが増える。

2014年7月21日月曜日

Review: Computational Approaches to Studying the Co-Evolution of Networks and Behavior in Social Dilemmas

面白そうな本のレビューを見つけた。テーマ的にはビンゴだ。しかも理論・モデル・データ検証をつなぐといっている。手法の枠組みも魅力的。早速注文したのでざっくりレビューを読む。

Review: Computational Approaches to Studying the Co-Evolution of Networks and Behavior in Social Dilemmas (Wiley Series in Computational and Quantitative Social Science): Corten, Rense,WileyBlackwell: Hoboken, NJ, 2014,ISBN 9781118636879 (hb), J. of Artificial Societies and Social Simulation,Volume 17, Issue 3.

社会的ジレンマにおける社会ネットワークと個人の特徴の共進化を、実験やらシミュレーションやらを統合してまとめる。
こ、これは。

1章では、社会的ジレンマと社会ネットワークのアウトラインをグラノベッターの理論をベースに拡張していく。特に社会的文脈は固定でも外生的でもなく個体の行動と共進化するという拡張をいれている。

2章では、ダイナミックネットワーク上のコーディネーション問題の理論モデルを説明する。しかしなんと!オピニオンダイナミクスについてはレビューしないとな。行動や意見の社会における普及を扱ってるのに。。これは著者の狙いで、コーディネーションゲームのようなゲーム理論の枠組みと、リンクが利得やコストを持つという合理的なセッティングでいくのが売りです。そしてそのあと極化とネットワーク構造のダイナミクスについてインプリケーションを引き出す。

3章ではダイナミックネットワーク上の協調問題の理論的モデルを扱う。面白いのは評判の効果はネットワーク密度が低いほど強いという結論だ。しかし、全然データとの検証をやってないやんけ。theory-model-test cycleを売りにしてるのにそれはけしからん(とレビュワー先生はおっしゃる)。

4,5章ではコーディネーションモデルを実験室実験と、調査データ(青年期のアルコール摂取?)で検証する。

とりあえず届いたら読んでみよう。あたりだといいな。

2014年7月17日木曜日

Scale manipulation in dictator games

独裁者ゲームで他者の行動を予想させるのと、その際に額を小さい側にアンカリングするのと大きい側にアンカリングするので行動は変わるかな?変わるよ、という論文。行動経済ぽいことを言われるとすぐになびくので読む。

Ockenfels, A., & Werner, P. (2014). Scale manipulation in dictator games. Journal of Economic Behavior & Organization, 97, 138–142. doi:10.1016/j.jebo.2013.11.002

10ユーロ渡して独裁者ゲーム。他のDictatorが平均いくらくらい出すでしょう?というアンケート(DI)と、recipentはいくらを期待しているでしょう?というアンケート(RE)を事前にとる。そして、その際にHighコンディション(3ユーロ以下、4,5,5以上)と、Lowコンディション(0,1,2,3,4以上)という提示の仕方をする。

学生対象にやります。実験後に独裁者ゲーム知ってる人と知らない人でわけて、知らない人を対象にする。ふむ?

DIの人では、HIGHもLOWも差がないけれど、REの人たちでは、HIGHのほうが高い額を渡している。

受取者の額を高くアンカリングされたDictatorは罪を避けたのではなかろうか。

ずいぶんとシンプルな検証だなおい。しかも本文4ページ。サプリメンタリーも対して情報が増えてないし。

2014年7月16日水曜日

Evolution of fairness in the one-shot anonymous Ultimatum Game

ダウンロードして満足どころか、ダウロードすらしてない。これはまずいので、目についたものを簡単に読む。

Rand, D. G., Tarnita, C. E., Ohtsuki, H., & Nowak, M. a. (2013). Evolution of fairness in the one-shot anonymous Ultimatum Game. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 110(7), 2581–6. doi:10.1073/pnas.1214167110

Nowak先生とニッポンのエース、最後通牒ゲームでもシミュレーションするの巻。空き地がどんどんなくなる。

ワンショットの最後通牒ゲームをABMでやる。Agentの戦略は、提案額pと受諾の閾値qで表現。選択圧と突然変異をコントロールしながら、生き残る戦略の頻度を見ます。

選択圧が弱いと、p=0.5,q=0.5だけど選択圧を強くすると,p,qともに低くなっていく。突然変異が低いほど、p,qの低下は選択圧の増加に対して早く生じる。

更に、弱い選択圧の基で、Agent数NとミューテーションuをかけたNuによってmodal strategyに変化がみられる。Nu<1では、p=q=1/3だが、Nu>1でpが上昇、qが減少してp=0.5,q=0に収束。

しまいには被験者実験もやる。詳細はサプリメントを読まないといけないので飛ばしてしまった。ただ実験でも理論的な予測を支持している、と。

2014年7月11日金曜日

自己評価、自己受容、および自尊心が互恵的対人関係意識を介して対人関係満足に及ぼす影響

またもやゼミ生が論文を輪読で持ってくる。すばらしい。まあほかの学生は全て1ページの学会発表概要しか持って来ないわけだが。おぅ・・・ガチ心理学論文だ。援助行動とかそういうあたりを研究している人たちのようだ。忘れるといけないので今のうちに読む。

田中優, & 高木修. (2011). 自己評価、自己受容、および自尊心が互恵的対人関係意識を介して対人関係満足に及ぼす影響. 関西大学社会学部紀要, 42(2), 75–92.

フレームのところはざっと飛ばして、モデルだけメモ。

自分に対する評価として、自己評価(自己嫌悪、他者評価懸念)、自己受容、自尊心
互恵的対人関係意識として、損得、互恵、返礼

これらの因子が対人関係の満足度に与える「自己評価→互恵的対人関係意識→対人関係満足」というSEMを作るよ。

関係満足を規定したのは、互恵意識と自己嫌悪(マイナス)の直接効果のみ。返礼意識に対して、他者評価懸念からの直接効果、自己嫌悪→(-)自己受容→(+)自尊心→(-)返礼意識というパスがあった。返礼意識は、どちらかというと援助してもらったことへの借金的意識。

考察:女子大の学生94人でやったし、親しい友人を思い浮かべるという指示が影響したかも。もう少し遠い人間関係を想定するとかわるかも。

たぶん著者が期待したパスはうまくひけなかったんだろうな、とは思う。しかしさすがガチ心理。モデルの立て方の丁寧さは見習わないと。互恵的対人関係意識とPGGとかSVO的なのは結びつく、、、かも。

2014年7月10日木曜日

Would you mind if I get more? An experimental study of the envy game

ねたみは怖いよねという論文?最後通牒ゲームの変形をやって、受取側のパイの大きさが決まってる状況で提案者が選ぶ全体のパイの大きさによって行動が変わるか、と。え、えぐい。

ゲスい興味で読む。

Casal, S., Güth, W., Jia, M., & Ploner, M. (2012). Would you mind if I get more? An experimental study of the envy game. Journal of Economic Behavior & Organization, 84(3), 857–865. doi:10.1016/j.jebo.2012.10.008

最後通牒ゲームをいろいろなセッティングでやるというもの。xが提案者でyが受取側。元の資金がπで、分配額がk。

Vタイプ:yが拒否しても、xはπ-k、yはkを受け取る。(怒りだけを表明)
Iタイプ:yが拒否しても、xはπ-k、yはゼロ。
Pタイプ:yが拒否したらxはゼロ。yは拒否するかどうかにかかわらずk
Uタイプ:通常の最後通牒、受けとたら x=π-k、y=k。拒否したら両方ともゼロ。

128人の被験者をランダムでペアにして、2ラウンドおこなう。V→I、I→V、P→U、U→Pがそれぞれ32組。特徴的なのはここ、xはπを選べる(8~24ユーロ)。そしてkは固定=6ユーロ。情報を増やすために、実際の実験とは別にyはそれぞれのπの大きさの時にどうするかの答える(アンケート)。

要するに、yとしては受け取れる額は6ユーロ固定だが、xがたくさん取ろうとしたらどうするか、と。

1.PとU(つまりは相手を罰せるとき)ではxの選ぶπが大きくなるほど拒否率が上がる。
2.でも実際にはXはほとんど最大値(=24)のπを選んでる。
3.結局Pタイプではxの利得は低くなっている。

妬みは競争下でペイオフのトレードオフでおこると言われている(ケーキをたくさん取られたとか)。しかし部分的には競争環境になっていない状況でもおこっているよ。

似た様なセッティング(kは固定じゃなかった記憶だけど)を山岸先生達がやってたような気がするけど、比較されてないから違いがよくわからなかった。SVOも似た様なものを測っているのかな。でもそれにも触れてなかった。

成功した人を叩くのは人間の性。ゲスい興味は満たされた。

2014年7月8日火曜日

Making sense of information in noisy networks: human communication, gossip, and distortion

JTBで情報拡散とABMが載ってる。しかも情報の多数派採用の効用とかを調べるのか。これは面白そうなので読む。

Laidre, M. E., Lamb, A., Shultz, S., & Olsen, M. (2013). Making sense of information in noisy networks: human communication, gossip, and distortion. Journal of Theoretical Biology, 317, 152–60. doi:10.1016/j.jtbi.2012.09.009

ノイジーな噂がネットワーク上に流れているとして、どんなシンプルな意思決定ルールが成功するかABMでやるよ。「Bit-wise mode」戦略が一番好成績で、それは、情報の各ビットのマジョリティを選ぶ戦略です。

モデル:エージェントは150、ネットワークはランダム、スモールワールド、スケールフリー。150というのは人間のコミュニケーションサイズとしては妥当な近似なのだよ。

エージェントはメッセージを発信してそれが伝播する。受け取ったメッセージを送り手に返すということはしない。ちなみにメッセージは、0/1のビット列(長さ20)でやる。なぜかっつーと長さ色々かえたけど結果はかわらなかったから。ランダムに選んだいくつかのエージェントが起点となって情報の伝播開始。繋がってるエージェントに連続して伝播していき、拡散する相手がいなくなった時点で終了。大体5.5stepで拡散完了している。

Distorterは情報を流す時にビットを反転させる。反転させるビット数、Distorterの数はシミュレーションによっていろいろ考える。後述するので待て。

AgentがNoisyな環境でどのようにメッセージを信用するかには3つの戦略を考える。
Standard:メッセージ全体のマジョリティを信じる
Bit-wise:各ビットの最頻値を採用する
Random:どれか一つのメッセージをランダムに信じる

Memoryに関して。モデルでは異なるタイプステップにメッセージが発信される。だから何度もメッセージを受け取ることになるんだが、完全記憶(受け取ったものをすべて覚えておく)、限定記憶(前回受け取ったものだけを覚えていられる)の2パターン用意する。

Fitnessは、エージェントが信じたメッセージと真実メッセージの一致度。100回のreplicationをやってネットワークやDistorterの位置などは全部異なる。論文と関係ないけど、シミュレーションの乱数変えた繰り返しはreplicationが一番よく使われてるような。JTB系なのか、これが世界の流れなのか。

1)Small-Worldで(Deg=7,β=0.5(張り替え率?書いてない))、Start Observer=5で、Distorterの数を0-150で動かす。エージェントの戦略は均一(Rndom/Standard/Bit-wiseのどれか)。Distorterが増えればFitnessは下がるけど、Bit-Wiseモデルが一番優秀。ちなみにDistorterのビットの乱し方はいろいろやったけど結果はほとんど一緒。

2)Bit-wise + (Standard or Random)で人口比率を変えてみても、やっぱりBit-Wiseが優秀。しかもStandard+RandomだとDistorterの数によらず変化なしかつ両者のFitnessが等しい。

3)Observerの数が多いほど、次数が高いほど、Bit-wise戦略のFitnessは向上する。

Bit-wiseの勝利は、利用可能な情報源の数が多くなるからだ、とか色々と言葉で説明。

戦略のコントロール(2者の存在比を変えて3つの組み合わせでやるとか)が結構雑な気がする。あと戦略ごとのFitnessを計算してるのに進化シミュレーションにもしていないし。結果を導くメカニズムもあまり詳細に検討されてないような。

とはいえ、情報伝播をABMでやったよというのがJTBに載るのを知れてよかった。あと結構使えそうな材料は詰まった感じの論文だったのであたりだ。

2014年7月6日日曜日

Spontaneous giving and calculated greed

Nowak先生、人間は「先天的」に協調的だという実験をする、の巻。Natureに連載持ってんじゃないかというくらいよく出てる。PGGで決断までの時間が短いと(直観的だと)協調的という実験。

さすが世界のトップランナーは違うなぁとしみじみしながら読む。

Rand, D. G., Greene, J. D., & Nowak, M. a. (2012). Spontaneous giving and calculated greed. Nature, 489(7416), 427–430. doi:10.1038/nature11467

人々はもともと利己的で、自身をコントロールすることで協調的にふるまうのか、もともと協調的なんだけど、合理的に考えることで利己的になるのか。

ということで実験をする。AmazonのAMTという労働市場を使うよ。普通に大学生使うより多様だし。

結果としては速く決断するとより協調的、また速い決断を強制するときのほうが遅く決断させるより協調的。

1.PGGをやる。決断時間を横軸に、協調率を縦軸にとると見事に右肩下がりになるよ。10秒で区切って検定しても有意。

2.今度は10秒以内に決めさせるグループと、10秒必ず待ってからのグループで比較する。ワンショットPD,繰り返しPD,繰り返しPGG、どれでも時間が短いほうが協調的。また、大学生相手にやってみても一貫している。また、被験者に相手の貢献度を予想させると急がせた群のほうが低く見積もっている。

3.続いてプライミングを使う。被験者は「直感でうまく行ったことか、よく考えて失敗したことを書く」グループと「直感で失敗したことか、よく考えて成功したことを書く」グループに分かれる。これがプライム。そしてワンショットPGG。これまた直感が良いことをプライムした組が協調的。

なぜか?著者曰く、人々は日常生活のコンテキストで直観を構築している。そして我々の日常生活では多くの関係が繰り返しだから、協調的な戦略が優位なことが多い。だから直観では協調的にふるまっている。しかしよく考えることで協調が有利でないことに気付けると選好がかわる。

このように人間は一貫した一つの社会的選好を持っていないことを考えると、より認知的に複雑な経済モデル、協調の進化モデルが必要でしょう。

またこれらの結果を基に考えると、協調は文化伝播やsocial learningの結果ではなくて「先天的」であり遺伝的なものに結びついていると言えるだろう。
そしてこの結果は子供を対象とした研究の結果とも一貫する。

組み合わせてみたいアイデアがあるけど、実験一緒にやってくれる人いないかな。

2014年7月5日土曜日

Going green to be seen: status, reputation, and conspicuous conservation

reputationとcostly signalingとは面白そう。エコ製品買うのは見られるためだって。えーと、要するにエコもロハスもモテるため、っていうことでよろしかったでしょうか。

よろしくないだろうから読む。

Griskevicius, V., Tybur, J. M., & Van den Bergh, B. (2010). Going green to be seen: status, reputation, and conspicuous conservation. Journal of Personality and Social Psychology, 98(3), 392–404. doi:10.1037/a0017346

なんでひとは「グリーン」な商品を買うのか。それは利他的な行動ではないか。コストもかかるし品質だって劣る(なんというぶっちゃけ)。

これはコストをかけたシグナリングとして理解できるのではないか。

3種類の実験をやったところ、activating statusがグリーンな商品の購買をもたらす。要するに、ステータスに関する競争環境だと、それを高めるためにグリーンな商品を買うような環境志向の行動を促すと。

競争的な利他主義とシグナリングは昔から言われてる。たとえば、ネイティブアメリカンにおいても、他者に資源をたくさん与えられる人がグループ内で高い地位を得る。とはいえ、利他主義はコストがかかるのだから、理論的には利他主義がサバイブするというパズルは難しい。

Kin Selectionとか互恵主義とかいろいろあるけど、注目すべきはシグナリングセオリーですよ奥さん。ザハビ先生からこっち、動物界、人間の行動でずっと研究されてきてる。

というわけで、車を選ぶシーンです。ディーラーで贅沢な車、エコな車、などなどから選ぶときに、人が人の目を気にしたらどうなる?従来の知見では、富の象徴として高い車を選ぶでしょう。しかし、高い車を選ぶという予測では、その人が社会的な効用より自分の効用を選ぶセルフィッシュな人だとみなされるということを考慮してない。

実験1:
同じ価格のグリーン商品と贅沢商品から選ぶ。168人の大学生を使うよ。少人数グループにわかれてパーティションで区切られたPCの前にすわる。

Status群は実験の前に自分をイメージしやすい大学生のサクセスストーリーを読む(卒業して大企業に入ってバリバリエリートになったぜ、みたいな)。そうするとControl群とくらべて圧倒的に、社会的地位や名声への欲求が高くなる。例えば:(6.63 vs. 1.97 on a 1–9 scale, p < .001, d = 2.4)。ほんまかいな。

ポイントは、サクセスストーリーの中では、どうしたら成功するのはプライムしてない。例えば自己犠牲やProcosialな行動が有利とは一言もいってない。

その後、車、空気清浄器、食器洗浄機を選ばせる。これらは同じ価格で、贅沢な機能なほうと、Greenなほうに分かれている。で、別の112名の大学生に、これらの商品を持っている人がどれくらいイケてるか(素敵で、優しくて、利他的)を評価。当然、Greenのほうがいけてると評価された。

見事に、Status群はGreenな商品を選んでました。

実験2:
シグナリングセオリーによれば、シグナリングは自分の行為が相手に見られるかどうかがキーとなる。ということで、購買行動がパブリック(店で買う)なのかプライベート(ネットで買う)なのかで行動が変わるかを検証する。

93名の被験者で実験1と同様のセッティング。今回は、Status×Control、Public×Privateの4通りです。Statusのコントロールは実験1と同様で、Publicでは「店で買っていることを想像して」、プライベートは「家でネットショッピングしてると想像して」。ば、場面想定。しかも近だけシンプルで。本当に影響でるのかね。さすがに車とかはネットショッピングしないので、バックパック、バッテリー、テーブルランプでやった。

なんとなんと、パブリックではステータス群のほうがグリーン商品を選ぶんだけど、プライベートではステータス群はぜいたく品を選んだ。つまり、costly signalingの観点から見ると、誰かに見られていて自分の評判に影響を与えるときにだけ、人はエコ商品を選ぶ。エコ商品を選ぶということがシグナリングになってるのだ。

実験3:
色々やったけど、先行研究では逆の結果も出てたりする。価格の問題が大きいのだろう。自分たちの研究では、両者の価格は等しいということにしている。しかしたとえばGreenのほうが安かったら、シグナリングとしてはジレンマに陥る。

ということで実験。156人の学生つかってこれまでと同様なセッティング。Status×コントロール、Greenが高い×安いの4パターンでいく。

結果どーん。お見事にControl群では、安いGreenが好まれるけど、Status群では安いGreenは好まれず、逆に高いGreenが好まれる。主効果も交互作用もでてる。

限界やらいろいろあるけど、costly signalingで評判を高めて集団の中での優位を築くってのはありでしょう。

エコもロハスもモテるため。

しかし、単純なカバーストーリーと場面想定でこんなにもきれいに出るもんなんだ。

2014年7月4日金曜日

Exploring the links between personality traits and motivations to play online games


オンラインゲームのプレイ動機と心理特性の関連を探る、とな。
卒論生のテーマとまるかぶり、というかやっぱりやられてますよねそりゃ。

隙があるといいなぁという邪な心をぐっとこらえて読む。

Park, J., Song, Y., & Teng, C.-I. (2011). Exploring the links between personality traits and motivations to play online games. Cyberpsychology, Behavior and Social Networking, 14(12), 747–51. doi:10.1089/cyber.2010.0502

人の心理特性とオンラインゲームをプレイする動機の関係を探る。
心理特性でゲーム特性が規定できるか、あとはゲーム上の行動(プレイ時間とか)も回帰で予測する。
因子分析したら5個の因子が出てきた(relationships, adventure,escapism, relaxation, and achievement)。
extraversionとagreeableness(外向性と感じの良さ(?))が色々な動機を予測するが、プレイ時間やスコアなんかとは関係しなかった。

韓国の5大学500人ちょいの学生を対象にした。
デモグラ等々はいろいろとして、68%がオンラインゲームを5-10年やったことがある。
また52%は日に30分以上プレイする。
ていうかオンラインゲームをやったことのある割合はいくつだ。書いてない。まさか100%じゃないだろうね。

パーソナリティはbig5を聞くTIPIという10アイテムの質問項目群を使った。
オンラインゲームプレイ動機は、いろんな参考文献に加えて独自に学生にインタビューもして決めたよ。
81個の項目を作ったけど、インタビューやらいろいろやって減らしていった。

で、19項目で5因子を抽出。それがrelationships, adventure,escapism, relaxation, and achievementだ。

そんでもってTIPIの項目と、Gender/Ageで、これらの因子を予測する重回帰をやる。
独立変数は、外向性(extraversion)、快適さ(agreeableness)、誠実性、情緒的安定性、経験の開放性 、性別 、年齢

女性のほうが関係性動機が強い。これはそうだろうね。
あと年齢が現実逃避にプラス。悲しいこった。

それにしても外向性がゲーム動機にプラスとはなんでだろう。
あまりそこには踏み込んでない。

なんかの動機を因子分析で抽出して他の変数も聞いといて重回帰でよっこらしょ、というのは一体どういうk、あれ、自分の首が絞まってきたぞ。


2014年7月3日木曜日

集団中心主義というパズル


小野田(2013)の元論文。

埼玉大の紀要なんてこんなことがなければ目を通す可能性は無かったろう。

一期一会、とは違うけど読む。

高木英至. (1995). 集団中心主義というパズル. 埼玉大学紀要, 31(1), 17–40.

「引用:ではなぜ、集団中心主義はかくも頑健に社会の中で生き続けるのか?癒るあてのない水虫のように、時期が来ればわれわれの目の前に現れるのはなぜか?」

論文の中でこの表現。かっこよすぎる。

集団中心利他主義を説明できそうな理論は「社会的アイデンティティ」「類似性-魅力原則」「血縁選択・遺伝的類似性理論」などがあるけど、筆者は「Allisonの文化的進化論(文化的標識)」だ。

社会的アイデンティティ:自尊感情を満足させるためには、所属集団を外集団より優位に(好意的に)扱う必要がある。でも、態度レベルならまだしも利他行動まで説明できるのか?また適応的にこういう戦略が有利なことを説明できない。

類似性:類似性が対人魅力を高めるというByrn,1971の理論も、同様に適応的に有利かどうか言えない。

血縁選択:適応有利性としては説明力があるけど、社会の集団中心主義には遺伝的類似性では説明できないだろう。ただ、血縁的な利他性が「汎化」できるなら説明としてはいけるかも。

ということで、Allison(1992)の文化的進化論がいいと思う。

(a)ある標識を認識する
(b)同じ標識を持つ他者に利他的になる

しかし、(1)文化的標識を表示しながら義務を履行しない(フリーライダー)に無防備、(2)標識を必要としない利他戦略より有利と言えるのか?(3)相互に違う標識に寄付する(結託みたいな)規範も同等の利得を挙げるはず。けどそういう規範はほぼ見当たらない。

ということで、シミュレーションをやります。Givingゲームで記述できるでしょう。

気になってたマッチングはやはり、選別基準を満たす相手を抽出してからn人を選択して寄付している。やっぱり、この点ですな。ランダムマッチで、C/Dを選択しないと、結構当たり前の結果じゃないだろうか。ちがうのかな。

シミュレーションはほぼ小野田(2013)と同様。
内集団ループを持つ戦略が優位となる。
ただ、古い論文なので計算パワーの問題からか、設定はかなりミニマム。
というかそれを改善したのが小野田論文か。

紀要だからなのか、表現の豊かさ(自由っぷり)が印象的。
追加で検討しているモデルのセッティング名が「放蕩息子の勝利」「孝行息子の逆襲」だ。素敵すぎる。しかしそこに注目してどうする、自分。

マッチングが独特なのは気になるけど、対戦相手の選択可能性(選べるかどうか)をパラメータにした研究を2014春の数理社会で聞いたので、このあたりの組み合わせで新しいことできるかも。

2014年7月2日水曜日

Motivations for play in online games


卒論生がソーシャルゲームの研究するっていうのでバートルテストの関連論文探してたら出てきた。著者はオンラインゲームとかの研究をかなりやってるらしい。


バートルテストなんてファッキンだぜという論文。ふむふむ。
卒論生のテーマとジャストミートだから読む。

Yee, N. (2006). Motivations for play in online games. Cyberpsychology & Behavior, 9(6), 772–775. doi:10.1089/cpb.2006.9.772

ソーシャルゲームの参加動機を整理するよ。

バートルモデル(Bartle's Player Types)はMUDのモデルとしてよく知られているけど、全然経験的に検証されてない。
だいたい、どれか一個(achieve だったら exploring, socializingじゃないとか)にしてるのはだめだ。
それぞれの要因が独立かどうかもテストされてない。

というわけでオンラインゲームの動機モデルを因子分析で抽出します。

Bartleモデルと、MMORPGに関するサーベイから40個の項目を聞く。
ゲームサイトから3000人ぶんのデータを集めた。
10因子抽出した。分散説明率は60%。
更に additional PCAというのをやって、10個の因子を分析したら3つの上位概念がでてきた。

【Achievement component】
Advancement ゲーム内の力への欲求、素早くクリアでき、高いステータスや富がほしい。
Mechanics キャラクターのパフォーマンスを最適にするためにゲームのルールやシステムを分析することへの興味
Competition 他者と競争し挑戦する欲求

【Social component】
Socializing 他のプレイヤーとチャットしたり助けたりすること対する興味
Relationship 他者と長期間の意味のある関係を築きたいという欲求
Teamwork グループの一員としての努力から満足を得る

【Immersion component】
Discovery 多くのほかのプレイヤーが知らない物事について発見・知る
Role-Playing ストーリーの上でペルソナを作ったり他のプレイヤーと即興の物語を作る
Customization 自分のキャラクターの概観をカスタマイズする
Escapism 現実逃避。オンライン環境に浸ることで現実世界での問題を考えなくて済む

バートルのいうように、どこかのタイプにユニークに所属ってことはないよ。
その証拠に3つのコンポーネントの相関は低い(r<.10)。

さて、メインの仕事はここまで。

ついでにデモグラフィックで分析もする。

男はすべてのコンポーネントで女より高い。
でも、relationshipだけは女のほうが高い。

問題利用を従属変数にして重回帰もやってみた。
escapismが最も強い予測力(そりゃそうだ)。ほかには、ゲームプレイ時間、advancementが有意。

この論文をベースにしてパーソナリティとの関連を見た論文があるらしい。読まねば。
というか卒論とまるかぶりだ・・・。あぅ。


2014年7月1日火曜日

内集団ひいき行動の適応的基盤 : 進化シミュレーションを用いた検討

あっという間に3日坊主の危機。

この論文、2月に読んで、触発されて発展モデルまで組んだのに、結果が芳しくなくて放置中。
モデルを一般化して結構きれいにしたんだけどな。でも派生して思いついたのが進行中。

芳しくない結果を復活させるためにもう一度読む。

小野田竜一, & 高橋伸幸. (2013). 内集団ひいき行動の適応的基盤 : 進化シミュレーションを用いた検討. 社会心理学研究, 29(2), 65–74.

公共財ゲームで、個人を2種類にラベリングする。
単純にラベリングがあるだけで、内集団ひいきが加速してしまうのではないのか?それが集団主義を招くのでは?というクエスチョンに答える。

個人は誰に資源を提供するかを2つの基準で選ぶ。
1)集団の選択:内集団、外集団、全集団
2)行動の選択(t-1のスコア・行動による選択):誰でも、寄付した、内集団に寄付した、外集団に寄付した、Goodに寄付した、内集団のGoodに寄付した、外集団のGoodに寄付した
その他に例外として、ALLD戦略がある。

ゲームの構造が独特。
資源Bをm人に分割して寄付する。その際のmの選別が上記の基準に従う。というか上記の基準を満たす人のうちm人を選んで分割配布する。
なんでこんな設定なんだろう。
というか、マッチングがランダムじゃなくて、N人集団から自身の選択基準でGoodとなるメンバーを抽出して、その中からm人を選んでいる。
「引用:第1試行において 外集団の成員にすべての資源を提供していた個体をGoodとみなし、その中からm人の外集団成員に資源を 提供する。」

ホワイ?これが結果を導くキモでは。最初に読んだときはスルーしてしまいランダムマッチかと思ってた。

結果:
「内集団のGoodにだけ提供する個体をGoodとみなし、内集団のメンバにだけ寄付する(I,I*)」という内集団ひいき戦略が適応的。
また、内外の両方に必ず提供する、という戦略を導入すると、内外提供するGoodのみをGoodとする(I&O,I&O*)、戦略と(I,I*)が共存(両方強い)。

理由:
それぞれ、自分と同じ戦略にだけ寄付するから。
他の戦略は自分以外にも寄付してしまうため、適応的なのは厳しい同じ戦略のみを評価する戦略だ。

それにしてもこのリサーチクエスチョンは面白い。
まだまだ鉱脈が眠っていそうな感覚。

2014年6月28日土曜日

Sanctions as honest signals - The evolution of pool punishment by public sanctioning institutions

「すぐ読む論文」フォルダの古いファイルがずいぶん前の日付だ。
シグナリングとプールパニッシュとな。面白そうなので読む。

Schoenmakers, S., Hilbe, C., Blasius, B., & Traulsen, A. (2014). Sanctions as honest signals - The evolution of pool punishment by public sanctioning institutions. Journal of Theoretical Biology, 356C, 36–46. doi:10.1016/j.jtbi.2014.04.019

プールパニッシュありのPGG。Lonerもあり。

[戦略]
L:参加しない
D:taxもPGも貢献しない
C:PGのみ貢献(taxは払わない)
P:両方払う
O:tax払わない。もし誰かがtaxを払ってたらPGには払う

[モデル]
1.ゲームへの参加(Lかそれ以外にわかれる)
2.tax(懲罰のための原資)を払うかどうか
3.公共財に投資するかどうか(O戦略はこの段階でtaxがゼロなら投資しない)

各戦略の期待利得をガッと数式で記述してESSを求めてる。
純粋戦略にESSは存在しなくて、サイクルするよ。

そのあとシミュレーションをやってる。進化モデルはGAじゃない。
ランダムに選択されたiとjでi→jに戦略が移る確率をP_ij=1/(1+exp[-s(πj-πi)] であらわす。
s=0でPij=1/2, s->∞で利得が高いほうに確実に変化。
そっか、こういうやり方もあるのか。

結果:S=0.01ではサイクリック、S=100ではO戦略が支配。

Sを10^(-4) -> 10^2 まで動かして人口比率を見ると、S=1のあたりでO=0.7,P=0.2,D=0.1くらいの共存状態に収斂する。

モデルを拡張する。

1.taxを払うコストをいじる。ここまでのモデルはボランティアジレンマの構造(誰かひとりがtax払えばよい)だけど、これをtax払った人の頭割りにしよう。
2.2次の懲罰をいれよう
3.taxで作られた懲罰システムの存在が全員に確実にわかる前提をくずして不完全情報にしよう。

[結論]
taxをシグナルする仕組みがなければ、2次懲罰&L戦略じゃないとPool Punishは機能しない。
でもシグナルがあれば、Pool Punishはうまくいく(パラメータ次第だけど)。

「ESS→シミュレーション→拡張」の流れがなるほどJTB論文。
あと、進化のやり方はうまいね。取り入れてみようか。結果にどの程度影響するんだろう。

2014年6月27日金曜日

An agent based model for studying optimal tax collection policy using experimental data: The cases of Chile and Italy

エージェントシミュレーションで税制度を検討とは面白そう。
だけど今一つぽい。でも読む。

Garrido, N., & Mittone, L. (2013). An agent based model for studying optimal tax collection policy using experimental data: The cases of Chile and Italy. The Journal of Socio-Economics, 42, 24–30. doi:10.1016/j.socec.2012.11.002

チリとイタリアをケースとして税の最適な聴取戦略をみつけるよ。
実際には、政府エージェント(1つ)が期間中にN人のエージェントを監査するとして、最適な監査戦略(どの程度監査するか)を見る。
結果、収入の偏りが大きくなるほど、金持ちと過去のBCE(脱税者?)に注力するとよい。
チリとイタリアのケースがどうなってるんだろう。具体的なデータが出てない。

よくわからなかった。ただあまり面白くない。

2014年6月25日水曜日

抑制、表出、反芻傾向と感情プライミング効果の関係

ゼミで学生が持ってきた。原著論文を持ってくるとは感心。ざっと読む。


及川昌典, & 及川晴. (2013). 抑制、表出、反芻傾向と感情プライミング効果の関係. 社会心理学研究, 29(1), 40–46.

感情プライム、感情表出による感情プライムの消失、個人の反芻傾向による感情プライム効果の持続の研究。

1.ポジ/ネガな印象の画像を見せて、そのあとに意味のない図形(実際には文字)を見せて印象を評価させる。絵の印象は無視しろと伝える。
2.ポジ/ネガな印象の画像を見せて、その印象を評価した後に、無意味図形の評価をさせる
3.質問紙で、反芻傾向(過去の経験をくよくよ思い出す指標)の高/低でグループを2分して、1,2の実験結果を比較
1.両群とも、事前に見せた絵の印象を無視しろと言われても、プライム効果がでてしまう。
2.でも、絵の評価を下した後では(感情を表出したあとでは)反芻傾向が低い群ではプライム効果が消える。
3.ただし、高い群ではネガティブなのプライムに関して、プライム効果が残る

過去のことをクヨクヨと思い出しやすい(反芻傾向が高い)人はネガティブな印象を払しょくできない。
ただし、過去を反省するタイプ(省察傾向の高い人)は測ってないから今後の課題。

2014年6月24日火曜日

Evolution of direct and indirect reciprocity


有名な論文なのにずっと放置してた。簡単に読む。

Roberts, G. (2008). Evolution of direct and indirect reciprocity. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 275(1631), 173–179. doi:10.1098/rspb.2007.1134

Givingゲーム。
スコア(間接互恵)を使う戦略と経験(直接互恵)を使う戦略を用意。
相手のスコア(-1,0,1)を閾値として IR[x]で表現(xが閾値)。要するにイメージスコアリング。
DR[x]は過去に直接対戦した相手に対するスコア。TFTなどを表現。

モデルはIlandで構築するよ。
10%のphenotypic defectorを導入。

結論:一回しか会わない環境ではIRのほうが有意だけど、再会するならDRのほうがいい。